ファクタリングにはさまざまな種類がありますが、保証型ファクタリングもその一種です。
保証型ファクタリングは、信用取引のリスクヘッジに活用されるファクタリングです。取引先の売掛金が回収できないときに、ファクタリング会社が保証限度額内で売掛金を保証してくれるサービスです。
今回の記事では、保証型ファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、買取型ファクタリングとの違いについて解説します。くわえて、おすすめの保証型ファクタリング会社を3つ紹介します。
保証型ファクタリングとは
ファクタリングにはさまざまな種類があります。その中でも、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングが代表的です。
一般的にファクタリングと言った場合、買取型ファクタリングを指すことがほとんどです。
ファクタリングの種類や概要について紹介した後に、保証型ファクタリングの仕組みについて解説します。
そもそもファクタリングとは
ファクタリングには以下のような種類があります。
- 買取型ファクタリング
- 保証型ファクタリング
- 一括ファクタリング
- 国際ファクタリング
- 医療ファクタリング
一般的にファクタリングと言う場合、買取型ファクタリングを指すことが多いです。買取型ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料が差し引かれた代金を受け取って資金調達できる方法のことです。
一般的なファクタリングは「入金サイクルが短くなり資金繰りを改善できる」「融資や借り入れではないため負債が増えない」ことが特徴ですが、保証型ファクタリングはほかのファクタリングとは特徴が異なります。
保証型ファクタリングの仕組み
保証型ファクタリングは、買取型ファクタリングとは仕組みや目的が異なります。
保証型ファクタリングを利用すると、売掛金が回収不能になるリスクを軽減できます。
保証型ファクタリングでは、利用者が売掛金の保証をファクタリング会社に依頼します。ファクタリング会社は独自の与信調査を行い、保証金や保証料を利用者に提示します。利用者は保証金や保証料が妥当かどうか検討しましょう。提示された条件で問題ない場合、利用者は保証料を支払って保証契約を締結します。
取引先の倒産などで売掛金が回収できない場合、ファクタリング会社から利用者に保証金が支払われます。利用者にとっては、貸倒損失を軽減することが可能です。
保証型ファクタリングは資金繰りのためではなく、リスクのある取引先の売掛金を保証するための仕組みです。
保証型ファクタリングのメリット・デメリット
保証型ファクタリングのメリット・デメリットについて解説します。
保証型ファクタリングのメリットは以下の通りです。
- 貸倒れリスクの回避
- 与信管理の省略可
- 売掛先に知られず保証が受けられる
- 国の助成が受けられる
- 信頼性の高い業者と契約できる
- 複数の企業をまとめて依頼可能
一方、デメリットは以下のようになります。
- 保証料が必要
- 売掛先の信用力に左右される
- 利用できる売掛金に下限がある
メリット①貸倒れリスクの回避
保証型ファクタリングの大きな特徴は、売掛金が何らかの事情で回収できなかったときの保証になることです。
保証型ファクタリングでは、ファクタリング会社に保証料を支払う代わりに売掛金を保証してもらえます。ファクタリング会社は売掛先の与信調査を行い、保証金額と保証料を決定します。利用者が納得したら契約を締結し、利用者は保証料をファクタリング会社に支払います。
この契約によって、売掛金の貸倒れリスクが回避できます。リスクの大きな取引先がある場合、保証型ファクタリングは万が一の保証として役立ちます。
メリット②与信管理の省略化
与信管理とは、売掛金の回収にどれくらいのリスクが伴うかを管理することです。倒産する可能性が低く安全な会社とは取引を拡大し、倒産しそうな会社に対しては取引を縮小していくのが一般的です。
保証型ファクタリングを利用することで、与信管理の審査を事業者は省力化することが可能です。なぜなら、ファクタリング会社が代わりに審査を行ってくれるからです。
また、取引先が倒産した後の債権管理の事務負担も軽減できます。債権管理はファクタリング会社が行い、利用者はファクタリング会社から保証金を受け取る仕組みだからです。
メリット③売掛先に知られず保証が受けられる
保証型ファクタリングでは、売掛先に通知されずに保証を受けることができます。
継続的に取引をしている売掛先に保証型ファクタリングを利用していることが知られると、その後の取引に支障が出る恐れがあります。しかし、保証型ファクタリングでは、売掛先に保証型ファクタリングの利用を知られることはありません。
メリット④国の助成が受けられる
建設業の下請け企業は、保証型ファクタリングを利用することで国の助成金をうけられる可能性があります。
2010年から国土交通省は、下請債権保全支援事業を開始しました。
元請建設企業に対する売掛金などをファクタリング会社が保証する制度で、国からの助成金が受けられることが特徴です。助成金は保証料の1/3で、保証料を軽減することができます。
国の助成金を受けるための条件は以下の通りです。
- 資本金が20億円以下、または常時雇用する従業員数が1500人以下
- 元請建設企業から建設工事を請け負っている下請建設企業、または資材を供給している資材業者
- 申し込み時点で行政処分期間中ではない
建設業は債権保全を支援する下請債権保全支援事業を上手に活用し、経営に役立てましょう。
メリット⑤信頼性の高い企業と契約できる
保証型ファクタリングを提供しているのは、銀行系や信販系などの大手ファクタリング会社です。そのため、信頼性の高い企業と契約できることが特徴です。
メリット⑥複数の企業をまとめて依頼可能
保証型ファクタリングは、いくつもの企業をまとめて依頼することができます。ファクタリング会社はまとめて提出されたリストを審査し、それぞれの売掛先に対して保証金額と保証料を設定します。
デメリット①保証料が必要
保証型ファクタリングでは、保証料が発生します。
保証料は保険の掛け金と同じようなものです。万が一の事態に保証金を受け取るために支払います。売掛金が問題なく回収できても保証料は返ってきません。
売掛先のリスクに備えるために、どれくらいの保証料なら許容できるか検討しておきましょう。一般的に保証型ファクタリングの保証料は1~8%ほどです。
デメリット②売掛先の信用力に左右される
極めてリスクの高い売掛先だった場合、保証型ファクタリングを受けられない可能性があります。
ファクタリング会社はビジネスで保証型ファクタリングを提供しています。そのため、あまりにリスクの高い売掛先の場合、引き受けが困難と判断されることもあります。
ファクタリング会社が引き受けない売掛先は、極めて信用力が低いと判断できます。ですので、取引について見直しを検討しましょう。
もし、保証が開始された後で売掛先の信用力が大幅に低下した場合、保証廃止が通知されることもありますので注意しましょう。
デメリット③利用できる売掛金に下限がある
ファクタリング会社によりますが、利用できる売掛金に下限が設定されている場合がほとんどです。
ファクタリング会社は、金額に関係なく与信調査をする必要があります。与信調査にかかる経費以下の売掛金の業務を受けてしまうと赤字が発生します。
そのため、利用できる売掛金に下限が設定されていることがほとんどです。事前に売掛金の下限をしっかりと確認しておきましょう。
保証型ファクタリングの保証料の相場
保証型ファクタリングを利用すると保証料が発生します。
保証料は一般的に、売掛金の1~8%の間で設定されます。保証料は最初から決まっているわけではなく、売掛先の信用度によって左右されます。
なお、建設業界の場合は下請債権保全支援事業により保証料の1/3まで助成金がうけられる可能性がありますので、制度の利用を検討しましょう。
保証型ファクタリングの利用がおすすめな企業
保証型ファクタリングの利用に向いている企業は以下の通りです。
- 取引先が多く与信管理が追いつかない
- リスクのある売掛先がある
- 初めて取引する企業の与信が不安な場合
保証型ファクタリングが向いている企業は、どのような企業なのかについて解説します。
取引先が多く与信管理が追いつかない
与信管理には、相手先の経営内容を調査し信用取引の可否を判断する「信用調査」と、売掛金の最大額を設定する「与信限度の設定」があります。企業によっては専門部署を設けて与信管理を行っています。
しかし、取引先が多く与信管理が追いつかない場合、保証型ファクタリングを利用することで与信管理をアウトソーシング化できます。
「与信管理に労力をかけたくない」「取引先が多すぎて与信管理が追いつかない」といった場合、保証型ファクタリングの利用を検討しましょう。
リスクのある売掛先がある
リスクの高い売掛先と継続的に取引をするなら、保証型ファクタリングの利用がおすすめです。
売掛金の回収に懸念のあると、経営にも大きな影響を及ぼします。また、売掛金が貸し倒れになると経営基盤が揺らぐこともあります。
保証型ファクタリングはこれらのリスクを低減し、経営基盤を強固にします。
初めて取引する企業の与信が不安な場合
取引が初めての企業の与信が不安な場合にも、保証型ファクタリングは有効です。
ファクタリング会社には、与信管理の専門的なノウハウがあります。自社の与信管理に不安がある場合、保証型ファクタリングを利用することでリスクを大きく軽減することが可能です。
取引先の拡大などに伴う与信管理のリスクを、保証型ファクタリングで軽減しましょう。
保証型ファクタリングを利用する流れ
ここでは、保証型ファクタリングを利用する流れについて解説します。
①ファクタリング会社に保証を依頼
利用者は保証型ファクタリングを取り扱っているファクタリング会社に、保証してほしい売掛債権を提示して保証を依頼します。
②ファクタリング会社が与信調査
保証を希望する売掛先の与信調査をファクタリング会社が行います。
与信調査によって保証の引き受けが可能な場合、保証料と保証限度額が利用者に通知されます。与信調査が行われた事実は、売掛先には通知されません。
保証料と保証限度額に利用者が納得すれば、個別保証契約を締結することになります。契約に基づいて保証が開始され、事前に設定した銀行から保証料が支払われます。
③売掛金が回収できないときは保証
保証型ファクタリング開始後、売掛金が売掛先から問題なく支払われると契約は終了します。
もし売掛先が倒産したり、売掛金が回収できなかったりした場合、ファクタリング会社から利用者に保証限度額に基づく保証金が支払われます。保証金が支払われるケースはおおよそ、以下の2つのパターンです。
- 売掛先の事業が倒産、または精算手続きに入った場合
- 小切手などが不渡りとなり、支払い不能状態に陥った場合
保証金が支払われた後、売掛債権の権利はファクタリング会社に移ります。そのため、売掛債権の回収もファクタリング会社が行います。
おすすめの保証型ファクタリング会社3選
信頼性の高いおすすめの保証型ファクタリング会社を3つ紹介します。
りそな決済サービス
りそな決済サービスはりそなグループの一員であり、とても信頼性の高いファクタリング会社です。1978年に設立されて以来、長年の経験と実績を積み上げてきました。
保証型ファクタリングのほかに、国際ファクタリングや医療ファクタリングも行っています。少額からでも相談を受け付けており、審査を行ったときの与信管理情報も提供しています。
「売掛先にリスクがある」「売掛先が多くて管理が行き届かない」「信用度がわからず新規開拓に踏み切れない」といった悩みを持つ事業者におすすめのファクタリング会社です。
SMBCファイナンスサービス
SMBCファイナンスサービスは三井住友フィナンシャルグループの一員で、総合的な決済を取り扱う企業です。ファクタリングや口座自動振替代行、電子商取引における決済代行などの事業を幅広く手がけています。
国内だけでなく国外の売掛債権も取り扱うことができ、多様なニーズに対応しています。保証業務は三井住友銀行から業務委託を受けて行っており、高い信頼性を誇ります。
ただし、保証期間は1年であり長期的な売掛金回収には向きません。
売掛金の管理強化や取引拡大時のリスクヘッジ、社内での与信管理の省力化をしたい企業におすすめの保証型ファクタリングです。
三菱UFJファクター
三菱UFJファクターは三菱UFJフィナンシャルグループの一員で、ファクタリングのほかに代金回収サービスや電子債権サービスを手がけている企業です。
国内最大級の銀行系ファクタリング企業で、高い信頼性と実績を誇ります。
保証限度額以内で売掛金100%を保証してくれる保証型ファクタリングを提供しており、多種多様な業種に対応しています。また、売掛先を審査した信用情報に変化があった場合、報告してくれるのも特徴の1つ。
売掛金の保証のみにとどまらず、与信管理もサポートしてくれます。
買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの違い
買取型ファクタリングの特徴は、売掛債権をファクタリング会社が買い取ってくれることです。ファクタリング会社に買い取ってもらうことで、入金サイクルを短くして資金繰りをサポートします。
一方、保証型ファクタリングは売掛債権が回収できなかった場合、ファクタリング会社が保証をしてくれるサービスです。利用者は保証をしてもらう代わりに、保証料をファクタリング会社に支払います。
買取型ファクタリングと保証型ファクタリングは、目的や仕組みがまったく異なります。
保証型ファクタリングを上手に活用しよう!
保証型ファクタリングを活用すると、売掛金が回収できなかったときにファクタリング会社が保証限度額内で保証してくれます。そのため、リスクのある売掛先や販路の新規拡大、社内の与信管理業務の省力化などに役立ちます。
保証型ファクタリングの保証料の相場は、売掛金の1~8%です。事前に料金が決まっているわけではなく、売掛先の信用度によって保証料は変動します。
保証型ファクタリングを活用することで、信用取引のリスクヘッジが可能です。上手に活用して、経営基盤の強化につなげましょう。