ファクタリングの会計処理方法は、大きく「買取型ファクタリング」「保証型ファクタリング」のどちらを利用するかによって異なります。会計処理が発生するタイミングや具体的な勘定項目が変わってくるため、ファクタリングを実施する際は注意しましょう。
今回はファクタリングの種類ごとに、会計処理が必要なタイミングや具体的な勘定項目について解説します。
会計処理の方法はファクタリングの種類によって異なる
ファクタリングにおける会計処理の方法は種類によって異なります。そのため、まずは具体的なファクタリングの種類を押さえておきましょう。
ファクタリングは大きく以下の2つに分かれます。
- 買取型ファクタリング
- 保証型ファクタリング
買取型ファクタリング
「買取型ファクタリング」とは、自社の売掛債権をファクタリング会社に譲渡して、現金を受け取る形式のことです。買取型ファクタリングでは、売掛先(取引先)からの入金よりも早く現金を手に入れられるため、「緊急で資金調達したい」などのケースで役立ちます。
ただし、ファクタリング会社から入金される際に手数料を差し引かれるため、手取りは若干減少する点に注意しましょう。
買取型ファクタリングは、さらに以下の2種類に分けられます。
【2社間ファクタリング】
「自社・ファクタリング会社」の2社間で実施するファクタリングです。売掛先を挟まないため、「取引先に資金繰りの状態を知られたくない」という場合に活用できます。
【3社間ファクタリング】
「自社・ファクタリング会社・売掛先」の3社間で実施するファクタリングです。売掛先からファクタリング会社へ直接入金するため、事前の承認が必要になります。
保証型ファクタリング
「保証型ファクタリング」とは、売掛先から売掛金を回収できなくなった際、限度額内で保証金が支払われるファクタリングです。売掛金が無事に入金された場合でも、ファクタリング会社に対して手数料の支払いが必要になります。
保証型ファクタリングは、「自社・ファクタリング会社」の2社間で取引します。売掛先を挟まないため、「先方が予定通りに支払いできるか不安」という場合でも、知られることなく保証を設定可能です。
ファクタリングの種類別で解説!会計処理すべきタイミングと具体的な勘定項目
ファクタリングの会計処理方法は、買取型・保証型、それぞれをより細かく4パターンに分けて考えられます。
- 買取型の2社間ファクタリング
- 買取型の2社間ファクタリング(即日入金された場合)
- 買取型の3社間ファクタリング
- 保証型のファクタリング
各パターンに応じて、会計処理のタイミングや具体的な勘定項目は異なります。経理の手続きを間違えないよう、正しく把握しておきましょう。
①買取型の2社間ファクタリング
買取型の2社間ファクタリングでは、以下のタイミングで会計処理が必要です。
- 売掛金が発生したとき
- ファクタリング会社と契約を締結したとき
- ファクタリング会社から譲渡代金が支払われたとき
- 売掛先(取引先)から売掛金が支払われたとき
- ファクタリング会社に売掛債権を支払ったとき
売掛金が発生したとき
売掛金が発生した場合は、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 500万円 | 売上 | 500万円 |
売掛金の発生時については、通常の会計処理と変わりはありません。
ファクタリング会社と契約を締結したとき
ファクタリング会社と契約した段階では、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収入金 | 500万円 | 売掛金 | 500万円 |
契約段階で、売掛債権はファクタリング会社側へ譲渡されます。しかし、まだ自社には売却代金が支払われていないため、「未収入金」として処理しましょう。
ファクタリング会社から譲渡代金が支払われたとき
ファクタリング会社から実際に譲渡代金が支払われたら、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 490万円 | 未収入金 | 500万円 |
売掛債権売却損 | 10万円 | – | – |
ファクタリング会社から売掛金が入金された際、一部を手数料として支払うケースが多いです。支払った手数料は「売掛債権売却損」という勘定項目で会計処理をしましょう。
例えば手数料が10万円の場合は、上記のように分けて記載します。
売掛先(取引先)から売掛金が支払われたとき
売掛先から自社に売掛金が支払われたら、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 500万円 | 預り金 | 500万円 |
2社間では、売掛先に対して「ファクタリングをしている」という旨が通知されません。自社の口座に入金された金額は「ファクタリング会社へ支払う前に自社で預かっている」という認識になります。そのため、売掛先から入金があった段階で「預り金」として処理しましょう。
ファクタリング会社に売掛債権を支払ったとき
ファクタリング会社に売掛債権を支払った際は、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預り金 | 500万円 | 普通預金 | 500万円 |
自社の現金をファクタリング会社への預り金として移動させる、というイメージを持つとよいでしょう。
②買取型の2社間ファクタリング(即日入金された場合)
買取型の2社間ファクタリングでは、契約したタイミングでファクタリング会社から即日入金されるケースもあります。即日入金される場合は、以下のような会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 490万円 | 売掛金 | 500万円 |
売掛債権売却損 | 10万円 | – | – |
ファクタリング会社から即日入金される場合は、契約段階で発生した「未収入金」に関する処理が不要です。
③買取型の3社間ファクタリング
買取型の3社間ファクタリングでは、以下のタイミングで会計処理が必要です。
- 売掛金が発生したとき
- ファクタリング会社と契約を締結したとき
- ファクタリング会社から譲渡代金が支払われたとき
3社間のファクタリングでは、売掛先(取引先)が直接ファクタリング会社へ売掛金を支払うため、2社間と異なり以下のタイミングにおける会計処理をカットできます。
- 売掛先(取引先)から売掛金が支払われたとき
- ファクタリング会社に売掛債権を支払ったとき
売掛金が発生したとき
売掛金が発生した場合は、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 500万円 | 売上 | 500万円 |
売掛金の発生時の会計処理は、2社間と同じです。
ファクタリング会社と契約を締結したとき
ファクタリング会社と契約した際は、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収入金 | 500万円 | 売掛金 | 500万円 |
2社間と同じように、契約段階でファクタリング会社側へ売掛債権は譲渡されていますが、まだ自社には売却代金が支払われていません。そのため「未収入金」として処理しましょう。
ファクタリング会社から譲渡代金が支払われたとき
ファクタリング会社から実際に譲渡代金が支払われたら、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 490万円 | 未収入金 | 500万円 |
売掛債権売却損 | 10万円 | – | – |
ファクタリング会社から売掛金が入金されたら、2社間と同じように一部を手数料として支払うケースが多いです。支払った手数料は「売掛債権売却損」という勘定項目で会計処理をしましょう。
例えば手数料が10万円の場合は、上記のように分けて記載します。
④保証型のファクタリング
保証型のファクタリングでは、以下のタイミングで会計処理が必要です。
- 売掛金が発生したとき
- 売掛先(取引先)から売掛金を回収できたとき
- 売掛先(取引先)からの売掛金が回収不能であるとき
売掛金が発生したとき
売掛金が発生した場合は、以下の会計処理が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 500万円 | 売上 | 500万円 |
売掛金の発生時については、買取型のファクタリングと変わりありません。
売掛先(取引先)から売掛金を回収できたとき
売掛先から売掛金を回収できた際は、手数料のみを支払い、以下の会計処理を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 500万円 | 普通預金 | 500万円 |
売掛先(取引先)からの売掛金が回収不能であるとき
売掛先からの売掛金が回収不能の場合は、以下の会計処理が必要です。
まず「貸倒損失」として、回収不能になったことによる会計処理を実施します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒損失 | 500万円 | 売掛債権 | 500万円 |
その後、ファクタリング会社から保証金が支払われたら、保証金を「雑収入」として扱いましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 500万円 | 雑収入 | 500万円 |
ファクタリングの会計処理における注意点
上記で解説したように、ファクタリングの会計処理には取引形態ごとで違いがあります。会計処理を行う際は、取引実態に合わせて正確に処理することが大切です。
実際に会計処理を行う際は以下の点に注意しましょう。
- ファクタリングの手数料は「売掛債権売却損」で会計処理する
- 契約〜入金まで決算期末をまたぐ場合は「未入金額」の税金も発生する
- ファクタリング金額は「非課税」で処理する
ファクタリングの手数料は「売掛債権売却損」で会計処理する
ファクタリング会社に支払う手数料は「売掛債権売却損」で会計処理をしましょう。
ファクタリング会社へ支払った手数料分は「資金調達のために必要なコスト」と考えて費用計上します。支払った手数料分だけ費用が大きくなり、収益を圧迫する点に注意しましょう。
契約〜入金まで決算期末をまたぐ場合は「未入金額」の税金も発生する
「ファクタリング契約〜売掛先からの入金」の間に決算期末をまたぐ場合、未収入金の扱いに注意しましょう。
ファクタリング会社と契約した段階で「売上分が入金された」として扱うため、未入金分に対しても課税されます。実際に売上が入金されるよりも先に税金を支払うため、会計処理の際に間違えないようにしましょう。
ファクタリング金額は「非課税」で処理する
ファクタリング会社へ支払う手数料や売掛債権など、ファクタリングで発生した料金はすべて「非課税」です。そのため、ファクタリング会社から消費税分を請求することはできません。ごくまれに悪意を持って消費税分も請求するファクタリング業者が存在するため、取引しないよう注意しましょう。
まとめ
ファクタリングにおける会計処理の方法は「買取型ファクタリング」「保証型ファクタリング」のどちらを選ぶかによって変わります。適切な勘定項目で会計処理できるよう、実施前にチェックしておきましょう。
ただし、ファクタリングの手数料は費用計上する必要があるため、収益を圧迫します。そのため、ファクタリング自体は便利な仕組みですが、無計画に利用しすぎないよう注意しましょう。