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ファクタリングと債権譲渡の違い、および債権譲渡登記について解説

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ファクタリングと債権譲渡は違いが分かりにくい部分があるので、相違点と共通点、両者の関係性を理解することが大切です。また、ファクタリングの際に求められることがある「債権譲渡登記」についても、正しく理解しておく必要があります。

そこでこの記事では、ファクタリングと債権譲渡の違いや両者の関係性を解説し、さらに債権譲渡登記とは何か、そのメリットや注意点を解説します。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、売掛債権を支払期日前にファクタリング業者に買い取ってもらうことです。売掛金から手数料を引いた額が利用者に振り込まれ、実際の売掛金はファクタリング業者が受け取ります。

実際の事業における取引では、納品物などに対する代金を納品後すぐに支払うのではなく、数週間後や数か月後に支払うことが少なくありません。このまだ支払われていない代金のことを売掛金といい、売掛金を受け取る権利のことを売掛債権といいます。

売掛金は資産ではありますがまだ現金化されていないため、支払期日が来るまでに現金が足りなくなってしまうこともあるでしょう。

このような時にファクタリングを利用すれば、支払期日前に現金を入手し資金繰りを改善できます。

ファクタリングは民法で定められた債権の譲渡性を根拠にしておこなわれる取引です。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索|民法

売掛債権という代金を受け取る権利をファクタリング会社へ譲渡することで、売掛金の期日前に早期に資金化します。

そのため、売掛債権を譲渡して早期資金化する買取ファクタリングは債権譲渡の1つです。

なお、一口にファクタリングといっても次のような種類があります。

これらのファクタリングには債権譲渡を伴うものと全く無関係なものがあるので、それぞれの特徴について解説していきます。

2社間ファクタリングとは?

2社間ファクタリングとは、請求書や注文書などの売掛債権を売却して早期に資金化する資金調達方法の1つです。

2社間ファクタリングはその名の通り、ファクタリング利用者とファクタリング会社の2社だけで契約をおこないます。

事前に売掛先企業の同意が必要ないので、売掛先企業に秘密で契約できます

また、売掛先企業の同意を得たり、売掛先企業と契約する手間がかからないので、最短即日で入金を受けることも可能です。

ただし、あらかじめ売掛先企業の同意を得ずに契約する2社間ファクタリングには、代金流用・請求書偽造・二重譲渡などのリスクがあります。

ファクタリング会社にとってはリスクが高い取引なので、手数料が高額になる点がデメリットです。

3社間ファクタリングとは?

3社間ファクタリングも売掛債権をファクタリング会社へ売却して早期に資金化する方法です。

3社間ファクタリングは、ファクタリング利用者・売掛先企業・ファクタリング会社の3社で契約します。

あらかじめ売掛先企業の同意を得て契約し、売掛債権の期日には売掛先企業がファクタリング会社へ直接代金を支払います。

2社間ファクタリングと異なり、あらかじめ売掛先企業の同意を得て、売掛先企業が直接ファクタリング会社へ代金を支払うので、代金流用・請求書偽造・二重譲渡などのリスクがありません。

そのため、3社間ファクタリングは2社間ファクタリングよりも手数料が低くなります。

一方、契約時には売掛先企業から同意を得るなどの手間がかかるので、3社間ファクタリングで即日入金を受けることは不可能です。

3社間ファクタリングでは申込から入金までに1週間前後の日数がかかってしまう点に注意しましょう。

保証ファクタリングとは?

保証ファクタリングとは、ファクタリング会社が売掛債権を保証するものです。

もしも売掛債権が期日通りに支払われなかったり、貸し倒れたりした場合、保証ファクタリングを契約しておけば、未回収になった売掛債権代金の全部または一部をファクタリング会社が支払ってくれます。

売掛債権に対する保険だと考えればわかりやすいでしょう。

そのため、保証ファクタリングは2社間ファクタリングや3社間ファクタリングとは異なり、資金調達方法ではありません。

保証ファクタリングは、単に売掛債権をファクタリング会社が保証するものですので、債権の譲渡は発生しません。

保証ファクタリングは支払い能力が不明の初めての取引先や、取引継続を悩んでいる取引先に対する与信管理の方法として活用するとよいでしょう。

国際ファクタリングとは

国際ファクタリングとは、海外の企業との取引をおこなう際に発生する売掛債権をファクタリング会社が支払を保証するものです。

利用者が国内のファクタリング会社へ申し込みをおこなうと、国内のファクタリング会社は海外の提携ファクタリング業者に信用調査を依頼します。

信用調査に問題がなければ、輸出業者・輸入業者・海外のファクタリング会社・国内のファクタリング会社の4社で契約を締結します。

取引終了後に輸入業者が海外ファクタリング業者に代金を支払い、海外のファクタリング業者→国内のファクタリング業者→輸出業者という順番で代金が送金され、輸出業者は代金を回収できる仕組みです。

支払能力が非常に不透明な海外業者との取引ですが、国際ファクタリングを利用すれば確実に代金回収ができます。

そして、従来の信用状による取引よりも手間がかからず、スピーディーに取引できる点が大きなメリットです。

国際ファクタリングも支払いを保証するための取引ですので資金調達方法ではなく、債権の譲渡も発生しません。

その他のファクタリング

そのほかにも次のようなファクタリングがあります。

  • 商品在庫ファクタリング
  • 家賃収入ファクタリング

商品在庫ファクタリングとは、企業がかからず商品などの在庫を業者が買い取って資金化する方法です。

これはファクタリングとはいうものの、単に商品を売却しているだけの行為です。

売却しているのは商品在庫なので、債権とは全く無関係な取引になります。

一方、家賃収入ファクタリングとは、家賃収入を早期に資金化する方法で、債権譲渡をともないます。

将来的に受け取る予定の家賃をファクタリング会社へ売却することで、早期に家賃相当額を受け取ることが可能です。

そのため、家賃収入ファクタリングは債権譲渡を伴う取引です。

債権譲渡とは

債権譲渡とは、広義には他者に債権を譲渡すること全般を意味します

ファクタリングも債権をファクタリング業者に譲渡しているので、広義には債権譲渡の一種だといえます。しかし、一般に債権譲渡と言う時は、「代物弁済として債権を譲渡する」「不良債権をサービサーへ譲渡する」といった取引を指すことが多いです。

代物弁済としての債権譲渡

債務者が弁済のための現金を用意できない時、代わりに物品などを譲渡して弁済することがあり、これを代物弁済といいます

一般には代物として不動産などが譲渡されることが多いですが、債権も代物として譲渡可能です

債権の代物弁済に債権を使うというのは、具体的に言うと以下のようになります。

A社を債権者、B社を債務者とする債券があって、B社は現金が足りず弁済できないとします。

この時、もしB社を債権者、C社を債務者とする別の債権をB社が持っていれば、それをA社に譲渡することで債務を弁済できます。

サービサーへの不良債権の譲渡

サービサー(または債権回収会社)とは、支払期日が過ぎても支払いされていない債権(不良債権)を債権者から買い取る業者のことです。

買取後はサービサーが取り立てを行い、回収できた金額が債権の買取額を上回った時、その差額がサービサーの利益となります。

債権を業者に売却して現金を得る点はファクタリングと似ていますが、ファクタリングは支払期日がまだ来ておらず、不良債権化していない債権を対象とする点が違います

不良債権の買取ができる業者はサービサーだけと法律で決められており、ファクタリング業者は不良債権を取り扱うことができません。

民法改正による債権譲渡への影響

令和2年4月1日に民法改正がおこなわれ、債権譲渡に関する法律も改正されました。

具体的には「譲渡禁止特約がついている債権も譲渡できる」という内容です。

債権には譲渡禁止特約をつけることができますが、以前はこの特約がついている債権は譲渡できませんでした。

売掛債権の多くの譲渡禁止特約がついているのが一般的です。

この特約によってファクタリングなどで円滑な資金調達をおこなうことが阻害されているという問題点が以前から指摘されていました。

そこで、民法改正によって次のような条文が加わり、譲渡禁止特約がついている債権譲渡も有効となりました。

第四百六十六条
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
引用:e-Gov法令検索|民法

これによって、譲渡禁止特約がっても債権譲渡は有効になります。

債権譲渡禁止特約を付す理由

債権に譲渡禁止特約をつける理由は当初の契約の意味を守るためです。

商取引は、取引先の支払能力や資力に応じて、支払期日や取引金額を決めるのが基本です。

債権者は「この取引先だからこの条件」と取引条件を決めているのです。

しかし、この債権が全く資力や支払能力が異なる第3者に売却されてしまったら、当初取り決めた契約の意味がなくなってしまいます。

このようなリスクを排除するため、債権譲渡禁止特約をつけることがあります。

しかし、民法改正によって譲渡禁止特約をつけても自由に譲渡できるようになったため、契約の意味を保全するため、次のような規定が新たに定められました。

第四百六十六条の三 前条第一項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。
引用:e-Gov法令検索|民法

第四百六十六条の二 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
引用:e-Gov法令検索|民法

譲渡人が破産手続きを開始した場合は、譲受人は債務者に対して債権金額を供託させることができます。

また、譲渡制限のついた債権が譲渡された場合、債務者は債務相当額を供託できるので確実に債務を支払えます。

これらの規定によって、譲渡禁止特約がついた債権譲渡をおこない債権者が全く知らない人になっても債務者や譲受人に不利益が生じないようになりました。

ファクタリングと債権譲渡の違い

ファクタリングは広義には債権譲渡の一種だといえますが、債権譲渡という言葉を代物弁済やサービサーへの譲渡という意味とみなした時、両者にはさまざまな点で違いがあります

主な相違点をまとめると以下の4点となります。

  1. 目的の違い
  2. 対象となる債権の違い
  3. 関与する者の違い
  4. 対抗要件の具備の違い

目的の違い

ファクタリングと債権譲渡は、その目的に大きな違いがあります。

ファクタリングは債権を早く現金化して資金調達するためのもので、債権者側の事情で行われる取引です。債務者側の弁済能力に問題はなく、期日が来たらほぼ確実に弁済されるであろうことが前提となります。

一方、債権譲渡は不良債権または不良債権化のおそれがある債権をできるだけ回収するための取引で、弁済能力の不足という債務者側の事情で行われるものです。

対象となる債権の違い

ファクタリングと債権譲渡では、対象となる債権の種類に違いがあります。

ファクタリングの対象となるのは不良債権化していない売掛債権で、中には注文書などの将来債権を取り扱っている業者もあります。

手形のファクタリングは取り扱っていない業者が多いですが、一部取り扱っているところもあります。

手形を期日前に現金化するサービスに「手形割引」がありますが、手形割引は不渡りになると利用者が買い戻さないといけないので、不渡りになっても買い戻さなくていいファクタリングとは別物です。

債権譲渡は広義の意味でとらえた場合、原則全ての債権が対象となります。ただし、性質上債権者の変更ができない債権(慰謝料請求権など)や、法律上の制限がある債権(給与債権など)は除外されます。

サービサーが取り扱える債権は、「特定金銭債権」のみと法律で定められています。特定金銭債権とは、大まかに言うと破産した者が保有している債権などのことで、他には銀行ローンやクレジットのキャッシングなども含まれます。

関与する者の違い

ファクタリングと債権譲渡では、取引に関与する者に違いがあります。

まず、ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があり、両者で関与する者が違うのが特徴です。

2社間ファクタリングは債権者とファクタリング業者の間の取引で、債務者は関与しません。債務者にはファクタリングが行われた事実は伝えられず、期日が来たら通常どおり債権者に債務を弁済します。

一方、3社間ファクタリングは債務者にファクタリングを行うことを通知して承諾を得ます。そして期日が来たら、債務者は債権者ではなくファクタリング業者に債務を弁済します。

サービサーへの債権譲渡は、譲渡契約の当事者はサービサーと債権者の2者です。ただし、債務者への取り立てが目的なので、もちろん債務者も主要な関与者となります。

債権による代物弁済では、弁済対象となる債権の債権者・債務者に加えて、代物となる債権の債務者(第三債務者)が関与するのが特徴です。

対抗要件の具備の違い

対抗要件とは、権利の所有者が変わったことを他の者に主張するための条件のことで、登記などがよく知られた例です。

対抗要件を具備せずに債権譲渡すると、二重譲渡などの違法行為のおそれが出てくるので、一般に債権譲渡では対抗要件を具備します。

具体的には、以下のいずれかの手続きによって対抗要件が具備されます。

  • 債権譲渡したことを債務者へ書面などで通知する
  • 債務者に債権譲渡の承諾を得る
  • 債権譲渡登記をする

債権譲渡では、債務者への通知や承諾によって対抗要件を具備するのが一般的です。また、3社間ファクタリングでは必ず債務者の承諾を得るので、これが対抗要件となります。

一方、2社間ファクタリングでは、債権譲渡登記によって対抗要件を具備する場合と、登記せず対抗要件を具備しないままファクタリングを行う場合があります

対抗要件がないと二重譲渡の危険がありますが、2社間ファクタリングではこのリスクをファクタリング業者が負います。

ファクタリングと売掛債権担保融資の違い

売掛債権を活用した資金調達方法の1つとして売掛債権担保融資という方法があり、この方法もファクタリングとは大きな違いがあります。

ファクタリングと売掛債権担保融資の違いは主に次の9つです。

  • 借入か否か
  • 資金調達先
  • 債権譲渡か否か
  • 調達できる金額
  • 資金調達コスト
  • 審査の難易度
  • 審査の対象
  • 資金調達までの時間
  • 資金調達後の手続き

ファクタリングと売掛債権担保融資の違いについても詳しく解説していきます。

借入か否か|返済の有無

売掛債権担保融資は売掛債権を担保にした借入です。

売掛債権の所有権はあくまでも借主である融資の債務者です。

もしも融資の返済ができなくなった場合のみ金融機関が抵当権を行使して、売掛債権の差し押さえをおこないます。

そのため、売掛債権担保融資によって借りた代金は分割または一括で金融機関へ返済しなければなりません。

売掛債権担保融資によって1,000万円の借入(長期借入金)をおこなった場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
普通預金 1,000万円 借入金 1,000万円

借入金という負債を増加させることで、普通預金という資産も増加します。

一方、ファクタリングは売掛債権そのものを売却する行為です。

つまり、資産の売却をおこなって資金調達します。1,000万円の売掛債権を手数料10%を支払って資金化した場合、次のような仕訳になります。

借方 貸方
普通預金 900万円
売掛債権売却損 100万円
売掛金 1,000万円

売掛金という資産を売却して普通預金に代えているだけの会計処理です。

ファクタリングは借入ではないの負債が増えない資金調達方法になります。

資金調達先

売掛債権担保融資の資金調達先は、銀行などの金融機関です。

売掛債権担保融資は融資ですので、銀行などの金融機関に行かなければ資金調達できません。

一方、ファクタリングはファクタリング業者から資金調達します。

ファクタリングを専門におこなう業者を独立系ファクタリング会社、銀行傘下のファクタリング会社を銀行系ファクタリング会社、消費者金融傘下のファクタリング会社を消費者金融系ファクタリング会社などと分類することもあります。

債権譲渡か否か

売掛債権担保融資は売掛債権を担保にして融資を受けているので、債権譲渡ではありません。

担保として提供している売掛債権の所有権はあくまでも借主本人にあり、金融機関に所有権が移るわけではありません。

一方、ファクタリングは債権譲渡です。

売掛債権を業者へ売却して資金化するので、ファクタリング後の所有権はファクタリング会社へ移ります。

2社間ファクタリングにおいては、売掛債権の代金を一度利用者が回収しますが、これはファクタリング会社との間で回収代行契約を締結しているだけです。

つまり、ファクタリング会社が所有する売掛債権の代金をファクタリング会社に代わって回収しているだけですので、ファクタリングによって債権の所有権はファクタリング会社へ譲渡されています。

調達できる金額

調達できる金額は売掛債権担保融資の方が多くなるのが一般的です。

売掛債権担保融資では、担保にしている売掛債権は特定の売掛債権ではありません。

毎月〇〇円程度の売掛債権があるだろう、という前提のもとに、想定される将来の売掛債権も含めて数ヶ月分程度の売掛債権を担保にするという考えで融資をおこないます。

つまり、毎月100万円の売掛債権が発生するのであれば、半年分の600万円が担保になるという考えのもと、600万円を限度に融資するというものです。

そのため売掛債権担保融資では売掛債権金額数ヶ月分の融資を受けることが可能です。

一方、ファクタリングは売掛債権の売却ですので、現在手元に保有している売掛債権の金額が調達できる金額の限度です。

現在、手元に100万円の売掛債権を保有しているのであれば、100万円が調達できる金額の限度となります。

そのため、ファクタリングでは月商を超えるような高額の資金調達はできませんが、売掛債権担保融資では月商数ヶ月分程度の高額な融資を受けることが可能です。

資金調達コスト

売掛債権担保融資とファクタリングは資金調達にかかるコストも大きく異なります。

売掛債権担保融資は銀行からの融資ですので、金利は低く設定されています。

業者によって違いはありますが、年1%〜3%台で借りることが可能です。

一方、ファクタリングは売掛債権の売却です。

売掛債権が未回収になった際のリスクも一緒に売却するので、ファクタリングはそのリスクプレミアムとして高額な手数料がかかります。

上記の手数料は年利ではないので、たとえば1ヶ月先が入金期日の売掛債権をファクタリングした場合、年利では60%〜240%(2社間ファクタリング)もの高額な手数料となります。

売掛債権担保融資もファクタリングも売掛債権を活用した資金調達方法という点では同じですが、資金調達に伴うコストは非常に大きく異なり、ファクタリングの方が圧倒的に高額になります。

審査の難易度

売掛債権担保融資とファクタリングは審査の難易度が異なります。

売掛債権担保融資は金利が低く、銀行が融資する商品ですので、審査は厳しくおこなわれます。

売掛債権という流動資産を担保にするので、不動産担保よりも金融機関よりもリスクが高いので、基本的には赤字や債務超過の企業は審査に通過することが困難です。

一方、ファクタリングは赤字や債務超過でも売掛先企業の決算状況や支払能力に問題さえなければ審査に通過できます。

ファクタリングは融資審査に断られた企業も資金調達できた事例が多数あるので、融資よりも審査難易度が低く、審査に通りやすいといえます。

審査の対象

売掛債権担保融資とファクタリングは審査の対象が異なります。

借主本人からの返済を前提としている売掛債権担保融資は、基本的には借主本人に対して審査をおこないます。

どんなに優良企業に対する売掛債権を保有していようとも、借入金の返済をするのは借主なので、借主が債務超過や赤字の場合は審査通過は困難です。

一方、ファクタリングで審査の対象になるのは売掛先企業です。

ファクタリングでは債務者である売掛先企業から売掛債権の弁済を受けるので、利用者が赤字や債務超過であっても売掛先企業の信頼に問題がなければ審査に通過できる可能性が高くなります。

資金調達までの時間

売掛債権担保融資は申込から融資まで1ヶ月程度の時間がかかります。

借主の審査や売掛債権の審査や調査などを行い、銀行の支店、本部、信用保証協会の保証など、審査にはさまざまなプロセスがあるので、どうしても審査には時間がかかります。

一方、ファクタリングは2社間で最短即日、3社間で1週間程度の期間で資金調達が可能です。

ファクタリングは売掛債権の支払能力の有無などを簡単に審査するだけです。

売掛債権担保融資よりも圧倒的に速いスピードで資金調達できるので、緊急で資金が必要な場合には、ファクタリングを活用するとよいでしょう。

資金調達後の手続き

売掛債権担保融資とファクタリングでは資金調達後の手続きもことなります。

またファクタリングも2社間ファクタリングと3社間ファクタリングで資金調達後の手続きが異なるので、それぞれ解説していきます。

売掛債権担保融資

売掛債権担保融資は資金調達後には毎月または期日に一括の返済が必要になります。

借入金ですので、必ず返済が発生します。

また、売掛債権担保融資は将来発生するであろう売掛債権も担保にとっているので、想定した通りに売掛債権が発生しているかを確認するモニタリングもおこなわれます。

定期的に試算表などを提出し、「想定していた金額以上の売掛債権が発生しているか」を3ヶ月〜半年に1回程度確認します。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングでは、売却した売掛債権の入金期日に売掛先企業から利用者に対して代金が支払われます。

この代金をファクタリング会社へ送金する手続きが必要です。

2社間ファクタリングでは売掛先企業に秘密で契約するので、通常通りに売掛先企業が利用者に対して代金を支払います。

しかしこの債権はファクタリング会社のものですので、利用者は遅滞なく代金をファクタリング会社へ送金しなければなりません。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングでは資金調達後に利用者がすることは何もありません。

あらかじめ売掛先企業の同意を得て契約するので、売掛債権の期日になると売掛先企業が直接ファクタリング会社へ代金を支払うためです。

もしも支払いに遅れた場合もファクタリング会社が売掛先企業へ直接督促をおこなうので、利用者がすることは何もありません。

回収事務をファクタリング会社へ任せられるので、3社間ファクタリングは売掛債権の回収事務のアウトソーシング化にも繋がります。

ファクタリングと債権譲渡の関係性

ファクタリングでは債権者からファクタリング業者への債権譲渡が行われますが、譲渡しただけで終わりではなく、期日が来たら債務者から債権を回収して取引が完了となります。

しかも、実際に債権を回収するのは、2社間ファクタリングでは債権者、3社間ファクタリングではファクタリング業者と、ファクタリングの種類によって違ってきます。よって、それぞれの関係性を理解しておくことが重要になります。

2社間ファクタリングでは債権者が回収業務を行いますが、業者側としては、債権者が回収業務を怠ったり、回収した資金を業者に入金せずくすねるといった行為を防止しなければなりません。

そのため、2社間ファクタリングの契約では、債権譲渡契約に加えて、債権者がきちんと回収業務を行う義務を負う「回収代行の業務委託契約」を締結します

一方、3社間ファクタリングでは回収業務はファクタリング業者が行うため、債権譲渡契約に加えて、ファクタリング業者が債権者の代わりに回収業務を行う「回収代行契約」が締結されます

ファクタリングと債権譲渡の関係性をまとめると以下のようになります。

債権譲渡登記とは

債権譲渡登記とは、債権譲渡によって債権者が変わったことを登記によって公に示すことです。

売掛債権は物品などの動産と違って実体がなく、手形のような証券もありません。よって、「自分こそが本当の債権者だ」と名乗る第三者が現れた時に、それを拒否できる手段を持っておく必要があります。

債権譲渡登記をしておけば、登記を根拠に自分が正式な債権者であると主張できます。

債権譲渡登記は「第三者対抗要件」のみを具備する

債権譲渡の対抗要件には「第三者対抗要件」と「債務者対抗要件」の2種類があり、債権譲渡登記は第三者対抗要件のみを具備します

第三者対抗要件とは、自分が正式な債権者であることを第三者に対して主張するための条件のことです。これにより、1つの債権を複数の者に譲渡する「二重譲渡」を防ぐことができます。

そして、債務者対抗要件とは、自分が正式な債権者であることを債務者に対して主張するための条件のことです。これにより、債権者と名乗る複数の者に債務を弁済してしまう「二重払い」を防ぐことができます。

一般的な対抗要件の具備方法である「債務者への通知または承諾」は、第三者対抗要件と債務者対抗要件を両方具備できます。

一方、債権譲渡登記は債務者対抗要件を具備できませんが、債務者の許可なく第三者対抗要件を具備できるメリットがあります。

ファクタリングで債権譲渡登記をする場面

ファクタリングで債権譲渡登記をするのは、2社間ファクタリングを行う時です。

3社間ファクタリングは債務者に承諾を得るのでこれが対抗要件となりますが、2社間ファクタリングは債務者が関与しないので別途対抗要件を具備する必要があります。

2社間ファクタリングは債務者に知られないことが重要なので、通知や承諾ではなく債権譲渡登記を利用することになります。

ただし、債権譲渡登記は全ての2社間ファクタリングに必須というわけではなく、登記せず2社間ファクタリングができる業者もあります。

債権譲渡で債権譲渡登記をする場面

債権譲渡における対抗要件は、債務者への通知や承諾によって具備されるのが一般的です。

しかし、譲渡する債権の数が多い、または債務者の数が多いため通知・承諾では手間がかかり過ぎる時は、より簡便な手段として債権譲渡登記を利用することがあります

ファクタリングで債権譲渡登記するメリット

債権譲渡登記をすると二重譲渡を防止できるので、ファクタリング業者のリスクが少なくなります

業者のリスクが少なくなると、その分手数料を安くできたり審査に通りやすくなるので、利用者側にもメリットがあります。

ファクタリングで債権譲渡登記する際の注意点

ファクタリングで債権譲渡登記すると手数料や審査の面で有利になりますが、一方でいくつか注意点もあります。

以下の4つの注意点を踏まえたうえで、メリットと比較して登記するか決めるようにしましょう。

  1. 費用がかかる
  2. 個人事業主は債権譲渡登記できない
  3. 売掛先に知られる可能性がある
  4. 融資の審査に影響が出る場合がある

費用がかかる

債権譲渡登記は登記費用が1件につき7,500円(債権の数が5,000個を超える場合は15,000円)かかり、登記を司法書士が代行すればその費用もかかります

この費用がファクタリングの手数料に上乗せされた場合、その分受け取れる金額が少なくなってしまいます。特に、少額のファクタリングは登記コストの割合が相対的に大きくなるので注意が必要です。

個人事業主は債権譲渡登記できない

債権譲渡登記ができるのは法人だけなので、個人事業主のファクタリングでは利用できません。もし個人事業主が2社間ファクタリングを行いたい場合は、登記なしでできる業者を探す必要があります。

売掛先に知られる可能性がある

2社間ファクタリングは売掛先(債務者)に知られずに行えるのが特徴ですが、債権譲渡登記は誰でも閲覧できるので、売掛先が登記を閲覧する可能性もあります

融資の審査に影響が出る場合がある

融資の審査で債権譲渡登記の有無を確認された場合、資金繰りが苦しいと判断され、審査に不利になる可能性があります

ファクタリングと債権譲渡の使い分け方法

ファクタリングと債権譲渡登記では、適切に利用できる場面が異なります。

それぞれどのような場面に向いているのか、詳しく解説していきます。

ファクタリングが向いている場面

ファクタリングが向いているのは次の2つの場面です。

  • 資金調達をしたい場面
  • 売掛債権の未回収リスクを排除したい場合

ファクタリングは正常な売掛債権を売却する資金調達方法ですので、融資審査に通過できない場合や、すぐにお金が必要になる場面で活用できます。

また、ファクタリングは償還請求権なし(ノンリコース)で実施されます。

そのため、万が一売掛債権が回収不能になっても、その損失をファクタリング会社が負ってくれるので、利用者には損失が及びません。

支払いが心配な取引先や、支払能力が不透明な新規取引先があるのであれば、ファクタリングを利用することで確実に代金を回収できます。

債権譲渡が向いている場面

債権譲渡が向いている場面は、不良債権を処理したいケースです。

債権譲渡は不良債権や不良債権化するおそれのある売掛債権を売却する際に利用されます。

そのため、支払期日を過ぎても未入金の売掛債権を保有しているのであれば、債権譲渡を利用することで、多少なりとも現金化できる可能性があります。

企業の決算書にいつまでも不良債権が計上されている状態は、銀行などが企業を評価する際のマイナスポイントとなります。

債権譲渡によって不良債権をクリアにすることで、外部からの決算書の評価が向上するでしょう。

おすすめのファクタリング会社5選

債権譲渡ではなく、ファクタリングを選択するのであれば売掛先に秘密でスピーディーに資金調達できる2社間ファクタリングがおすすめです。

安全に利用でき、手数料も低く利用できるおすすめ業者は次の5つです。

  • ベストファクター
  • OLTA
  • ラボル
  • ペイトナーファクタリング
  • フリーナンス

それぞれのファクタリング会社が債権譲渡よりもすぐれている点をスペックとともに解説していきます。

ベストファクター

ベストファクター

種類 2社間ファクタリング
3社間ファクタリング
調達可能額 下限・上限なし
手数料 2%〜
入金スピード 最短即日
審査の必要書類 ・本人確認書類
・売掛債権成因資料
・入出金明細
手続き方法 対面

ベストファクターは担当者とのコミュニケーションや専門性を重視したい方におすすめです。

ベストファクターは顧客との対面での対話を重視しており、決算書や確定申告書からでは判断できない経営者の人間性や資質を評価しています。

したがって、他社では「決算状況が悪い」などの理由で審査に落ちてしまった方も、ベストファクターであれば審査に通過できる可能性があります。

審査の際には財務コンサルティングをおこない、財務状況を改善するための提案や、顧客にとって最適な資金調達方法の検討などをおこなってくれます。

ファクタリングに対して不安を抱えている方におすすめで、利用者からの評価が高い業者です。

契約時には面談が必須となっていますが、希望すればベストファクターの担当者が会社まで訪問してくれます。

対面型のファクタリング会社を探している方は申し込みを検討しましょう。

OLTA

OLTA

種類 2社間ファクタリング
調達可能額 下限・上限なし
手数料 2%〜9%
入金スピード 最短即日
審査の必要書類 ・本人確認書類(免許証、パスポート、マイナンバーカードのうち1つ)
・請求書
・事業用口座の入出金明細(4カ月前の1日~直近まで)法人の場合決算書記載の全口座
・昨年度の決算書(法人の場合)、昨年度の確定申告書(個人事業主の場合)
手続き方法 オンライン

OLTAはオンライン完結型のファクタリング会社のパイオニア的な会社で、日本で最初にオンライン完結型のファクタリングを広めた業者です。

新しい資金調達方法として注目を集め、ベンチャーキャピタルや大手企業など数多くの企業から出資を受け資本金は130億円を超えています。

また、数多くの金融機関とも提携しているので、業者としての信頼度は業界最高水準です。

手数料の低さも業界最低水準で、上限9%の手数料は個人事業主が利用できるファクタリング会社としては最も低い設定となっています。

請求書をアップロードしてから審査回答までは24時間以内ですので、急いで資金が必要な方も活用できます。

業者の安全性や手数料の低さなどで定評のある優良ファクタリング会社です。

ラボル

labol(ラボル)

種類 2社間ファクタリング
調達可能額 1万円〜上限なし
手数料 10%
入金スピード 最短60分
審査の必要書類 ・本人確認書類
・請求書
・取引先とのメールやLINEなどのエビデンス
手続き方法 オンライン

ラボルを運営する株式会社ラボルは東証プライム上場企業の株式会社セレスの100%子会社です。

実質的に上場企業が運営しているので、業者の安全性が非常に高いサービスです。

最大のメリットは24時間365日最短60分入金に対応している点です。

時間や曜日を問わずにいつでも最短60分で資金調達できるので、土日や祝日に営業している飲食業やサービス業の方も必要なタイミングで資金調達できるでしょう。

手数料は10%固定で、他の手数料が要求されることはないので安心して利用できます。

運営業者の安全性と抜群の対応力に定評がある優良ファクタリング会社です。

ペイトナーファクタリング

ペイトナーファクタリング

種類 2社間ファクタリング
調達可能額 100万円(初回は25万円まで)
手数料 10%
入金スピード 最短10分
審査の必要書類 ・請求書
・本人確認書類
・口座入出金明細
手続き方法 オンライン

ペイトナーファクタリングは業界最速の入金スピードが特徴な有名ファクタリング会社です。

アカウントを作成しておけば、請求書のアップロードから最短10分で審査が完了し、そのまま口座へ振込を受けられます。

緊急で数万円程度の資金が必要な方には非常に重宝するファクタリングです。

手数料は10%固定ですので、あらかじめ資金調達コストを把握でき安心です。

また、ペイトナーファクタリングは個人事業主に対する売掛債権の買取を実施している唯一の主要ファクタリング会社でもあります。

個人事業主相手にビジネスをされている方は、ペイトナーファクタリングであれば売掛債権を早期資金化できます。

数多くの企業から出資を受けている安心できる業者でもあるので、運営業者の安全性を重視したい方にもおすすめです。

ただしペイトナーファクタリングは買取限度額が100万円で初回は25万円までしか売却できません

少額の資金調達専用のサービスですので、事業規模の大きな法人は活用が難しいので注意してください。

フリーナンス

フリーナンス

種類 2社間ファクタリング
調達可能額 下限・上限なし
手数料 3%〜10%
入金スピード 最短30分
審査の必要書類 ・請求書
・売掛先企業へ請求書を送付したことを示すエビデンス(メール等)
手続き方法 オンライン

フリーナンスは個人事業主やフリーランスの業務向上に役立つさまざまなコンテンツを提供する小規模事業者支援サービスです。

その1つとして2社間ファクタリングの「即日払い」を提供しています。

フリーナンスにはフリーナンスが管理して屋号やペンネームなどで口座を作成できる「フリーナンス口座」というサービスがありますが、この口座の使用状況によって「即日払い」の手数料は決まります。

フリーナンス口座を利用すればするほど手数料は下がっていき、一桁台の低い手数料で2社間ファクタリングを利用することも可能です。

フリーナンス口座を利用しない方も「即日払い」を利用できますが、この場合の手数料は10%ですので、いずれにせよ相場よりもかなり低い手数料で利用できます。

請求書のアップロードから最短30分で審査が完了し、即日資金調達可能です。

手数料も入金スピードも優れた優良ファクタリングサービスです。

運営業者はGMOグループのGMOクリエイターズネットワークですので、業者の安全性も高く安心して利用できます。

まとめ

ファクタリングは債権者が資金調達のためにファクタリング業者に債権を売却する取引で、代物弁済やサービサーへの債権譲渡とはさまざまな点で違いがあります。

債権譲渡登記は審査の面では有利になりますが、手間がかかるので早く現金化したい場合は登記なしで利用できる業者を選ぶのがおすすめです。

注文書ファクタリング会社 - BESTPAY

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