ファクタリングは、売掛債権を売却することで、売掛金の支払期日前に資金調達できる方法として注目されています。
企業によっては手数料が高い、売掛債権以上の金額が入金されないことで必要な資金が手に入らないなどのデメリットを感じる場合もあるでしょう。
ここでは資金繰りに悩み、ファクタリングの利用を検討しているが、デメリットを心配している人向けに、以下の内容について解説しています。
- ファクタリングの8つのデメリット
- デメリットを抑えてファクタリングを活用する3つの工夫
- ファクタリングの6つのメリット
ファクタリングのデメリットについて理解し、対策方法が分かることで自社に合ったファクタリングが利用できるため、参照ください。
ファクタリングの8つのデメリット
ファクタリングは、売掛金の支払期日前に資金が入手できることで、資金繰り改善に役立ちます。
一方で、以下の8つのデメリットもあるため、詳しく解説します。
- 銀行融資と比較して手数料が高い
- 売掛債権以上の金額は入金されない
- 分割払いができない
- ファクタリングを繰り返し利用すると資金繰りが悪化する危険性がある
- 譲渡禁止の売掛債権は利用できない
- 業者選びが難しい
- 2社間の場合:債権譲渡登記を求められる可能性がある
- 3社間の場合:取引先との信頼関係悪化が懸念される
自社にとってどの程度リスクが大きいものになるか、確認しておきましょう。
銀行融資と比較して手数料が高い
ファクタリングは、銀行融資と比較すると手数料が高いです。
ファクタリングの手数料と、銀行融資の金利の各相場は以下の通りです。
- 2社間ファクタリングの相場:10~20%
- 3社間ファクタリングの相場:1~10%
- 銀行融資の金利年:2~9%
銀行融資の金利とは、借りた資金に対して支払う費用の割合を言います。
一般的には、1年間にかかる金利を【年利〇%】と表示していることが多いです。
ファクタリングの手数料を、年利に置き換えて考えてみましょう。
ファクタリングの手数料は、売掛金の期間に設定されているものです。
売掛金期間が1カ月の場合、年利とそろえると手数料を12倍にしなければなりません。
例えば、手数料10%で売掛金期間が1カ月だった場合【手数料10%×12カ月=120%】となります。
つまり手数料10%を年利にそろえると、120%と言えます。
銀行融資の金利と比較すると、ファクタリングの手数料はかなり高いものであると言えるでしょう。
売掛債権以上の金額は入金されない
ファクタリングは売掛債権を売却することで資金調達する仕組みであることから、売掛金以上の資金は調達できません。
例えば、100万円の売掛債権を売却した場合、100万円から手数料を引いた資金が入手できます。
売掛債権の金額より多くの資金が必要な場合は、複数の債権を売却できる業者を探すか、銀行融資やカードローンなどの金融機関を併用するなどの対策が必要です。
分割払いができない
分割払いは、返済期間に金利が発生するためファクタリングでは適応されません。
金利が発生する取引は、貸金業に該当するものであり、貸金業登録をしていないファクタリング会社では利用できないからです。
分割払い可能としているファクタリング会社を見かけた場合は、違法業者の可能性があるため、利用しないことをおすすめします。
ファクタリング会社への支払いは、一括払いが原則です。
2社間ファクタリングを利用した場合は、取引先から売掛金の入金が確認され次第、速やかにファクタリング会社に支払いましょう。
ファクタリングを繰り返し利用すると資金繰りが悪化する危険性がある
ファクタリングは売掛債権から手数料が引かれていることから、売掛金が手数料分減った状態で入金されます。
繰り返しファクタリングを利用すれば、それだけ手数料が引かれた金額が入金され続けるため、将来的に資金不足に陥る危険性があります。
例えば、100万円の売掛債権を手数料20%のファクタリング会社と、5回にわたって取引したとします。
1回の取引で入金される金額は以下の通りです。
売掛債権100万円×手数料20%=80万円
上記の取引を5回行ったとすると、80万円×5回=400万円となります。
100万円の売掛債権を従来通りの支払期日で受け取れていれば、500万円の資金が入手できたところが、100万円も減額されたことになってしまいます。
以上のことから、繰り返しファクタリングを利用し続けると将来的に資金繰りが悪化する危険性があるため、利用するタイミングは慎重に検討しましょう。
譲渡禁止の売掛債権を利用する場合は契約成立までに時間がかかる
以前は譲渡禁止とされている売掛債権ではファクタリングが利用できませんでしたが、2020年の民法改正により利用できるようになりました。
売掛金の支払先を固定し、誤送金や会計処理の複雑化を避けるために譲渡禁止としている企業がほとんどです。
しかし民法改正によって、譲渡禁止の債権が利用できるようになり、ファクタリングが利用しやすくなりました。
ただし、譲渡禁止の売掛債権を利用する場合、事務処理に時間がかかることもあるため、スムーズに取引できるかはファクタリング会社によって異なります。
あらかじめ確認しておくと安心です。
業者選びが難しい
ファクタリング会社には、それぞれ取り扱っているファクタリングの種類(2社間・3社間)、手数料、必要な書類の種類などに違いがあり、自社に合った業者を選ぶのが難しいです。
なかには、違法業者が紛れていることもあり、初めてファクタリングを利用する場合はどういった業者が安全なのか、判断ができない場合もあるでしょう。
以下に違法業者と安全な業者、それぞれの特徴をまとめましたので参照ください。
安全な業者といえるポイント | 違法業者の可能性を疑うポイント |
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上記のポイントを確認して、違法業者と安全な業者を区別し、自社に合ったファクタリング会社を選びましょう。
法人番号検索サイトで調べるのもおすすめ
ファクタリング会社を選ぶ際は、法人番号検索サイトで調べて業者の信頼度を確認しましょう。
法人番号検索サイトとは、起業した際に割り振られた法人番号が調べられるサイトです。
国税庁が管理しているため、検索して出てきた結果は確実な情報であると言えます。
ファクタリング会社の信頼度を確認したいときは、下記の法人番号検索サイトで調べてみましょう。
法人番号検索サイトURL:https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
2社間の場合:債権譲渡登記を求められる可能性がある
債権譲渡登記をすることで、2社間でも取引先にファクタリングが知られてしまう可能性があります。
債権譲渡登記とは、自社が持つ売掛債権をファクタリング会社に譲渡したことを公的に証明する書類です。
調べれば誰でも閲覧できるため、取引先が調査すれば自社がファクタリングを利用したことが分かってしまいます。
ファクタリングの利用を取引先に知られたくないために、2社間を利用した場合には、デメリットになると言えるでしょう。
また、登記するためには登録料や手続きする司法書士への報酬などを合わせて10〜15万円の費用がかかります。
債権額が少額の場合は、登記にかかる費用が負担になることも考えられます。
3社間の場合:取引先との信頼関係悪化が懸念される
3社間ファクタリングは、取引先を含めて契約するため、必然的にファクタリングの利用が知られることになります。
ファクタリングを利用することは「経営難」「資金繰りがうまくいっていない」という、マイナスなイメージを持たれてしまう可能性が考えられます。
よって取引先との信頼関係悪化が懸念されるため、どの取引先の売掛債権を利用するか、慎重に検討しなければなりません。
デメリットを抑え有効活用できる3つの工夫
上記に挙げた8つのデメリットを、最小限に抑えてファクタリングを利用できる工夫が3つ挙げられます。
- 手数料を抑える5つのポイント
- 債権譲渡登記の有無を自社が決められるファクタリング会社を選ぶ
- 信頼関係が崩れる心配のない取引先の売掛債権を利用する
以下に詳しく解説していますので、工夫できるところを参考にしてファクタリングを有効に活用しましょう。
手数料を抑える5つのポイント
ファクタリングの最大のデメリットと言える手数料の高さについて、以下の5つの工夫により抑えることが可能です。
- 信頼度が高い売掛債権を選ぶ
- 売掛金の支払期日が近いものを利用する
- 3社間ファクタリングを利用する
- 債権譲渡登記を行う
- オンラインファクタリングを利用する
なぜこのような工夫をすると手数料が抑えられるのか、理由について詳しく解説します。
信頼度が高い売掛債権を選ぶ
売掛金を支払う取引先の経営状況や資産など、支払い能力があるかどうかによって、手数料が変わってきます。
ファクタリング会社にとって、売掛金の未回収は最大の損失であり、何としてでも回避したいと考えているからです。
そのため、売掛債権の信頼度によって手数料が異なると言えます。
知名度の高い企業や、経営が安定している会社の売掛債権は、確実に売掛金の支払いが可能、つまり信頼度が高いと判断され、手数料が抑えられる傾向があります。
売掛金の支払期日が近いものを利用する
売掛金の支払期日が近い債権は、遠い債権よりも確実に売掛金が支払われる可能性が高いと判断され、手数料が抑えられる傾向があります。
仮に、売掛金の支払期日が2カ月後の債権の場合、支払いまでの2カ月間で取引先の経営状況の悪化や、倒産がないとも言い切れません。
売掛金の未回収リスクが懸念される期間が短ければ短いほど、確実に支払われる可能性が高いと言えます。
以上のことから、売掛金の支払期日が近い債権は手数料が抑えられる可能性があります。
3社間ファクタリングを利用する
3社間は、売掛金の支払元である取引先が明確に分かるため、未回収リスクが低いと判断されることから、手数料が抑えられます。
また、支払いルートを見ても3社間の方が売掛金の未回収リスクが低いと判断されますので、以下のルートをご確認ください。
- 2社間:売掛金が取引先から自社に支払われる→自社がファクタリング会社に支払う
- 3社間:取引先がファクタリング会社に直接売掛金を支払う
金銭の支払いに関しては、なるべく仲介を挟まない方が、より確実に回収できると判断されます。
以上のことから、取引先との信頼関係に心配がない場合は、3社間を利用するのがおすすめです。
債権譲渡登記を行う
債権譲渡登記を行うことで、二重譲渡の危険性が回避でき、手数料が抑えられる可能性があります。
ファクタリング利用者のなかには、同じ売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡し、2倍3倍の資金を調達しようとする場合があります。
債権譲渡登記を行わなかった場合は、ファクタリング会社が債権の譲渡を受けたと主張することができず、売掛金の未回収となり大きな損失が出てしまいます。
そのため、債権譲渡登記を行わない場合は売掛金の未回収を懸念して手数料が高く設定される場合が多いです。
ファクタリング会社は債権譲渡登記をすることで二重譲渡を回避し、売掛金の未回収リスクを軽減することで、手数料を安く設定できます。
オンラインファクタリングを利用する
オンラインファクタリングは、人件費や契約書にかかる紙代・収入印紙代などの諸経費がかからないことで、手数料が安く設定されている場合が多いです。
ファクタリング会社に出向くこともないため、時間もかからないことは自社にとってもメリットと言えるでしょう。
しかし、初めてファクタリングを利用する場合や、ファクタリング会社に対する信頼度が気になる場合は、対面での契約がおすすめです。
債権譲渡登記の有無を自社が決められるファクタリング会社を選ぶ
2社間ファクタリングにおける最大のメリットは、取引先に通知されないことだと言えます。
しかし、債権譲渡登記を行うと、取引先が調べればファクタリングの利用が分かってしまいます。
どうしても取引先に知られたくないと考えている場合は、債権譲渡登記の有無が自社で決められるファクタリング会社を選びましょう。
信頼関係が崩れる心配のない取引先の売掛債権を利用する
知名度の高い大企業や、国または地方公共団体の売掛債権は、ファクタリングの利用を通知されても信頼関係に影響はないとされている場合が多いです。
また、付き合いが深く信頼関係が構築されている取引先の売掛債権を利用するようにしましょう。
ファクタリングの6つのメリット
ファクタリングには、デメリットだけでなく以下の6つのメリットがあります。
- 現金が早期に入手できる
- 銀行融資と比べると審査に通りやすい
- 売掛金が未回収となっても支払い義務が発生しない
- 資金繰り改善に効果がある
- 保証人や担保が不要
- 自社の負債にはならないため信頼度が下がる心配がない
自社の経営を安定させるためにも、状況に応じてファクタリングの利用がおすすめできる場合があるため、参照ください。
現金が早期に入手できる
ファクタリングは、2社間であれば契約後最短で当日、3社間は2週間ほどで資金が入手できるため、入金スピードが早いです。
売掛債権が発生してから、売掛金が支払われるまでおよそ1〜2カ月としている場合が多いでしょう。
売掛金の支払期日までに資金が必要になった場合に、ファクタリングを利用して資金調達することで支払いに充てることができます。
銀行融資と比べると審査に通りやすい
ファクタリングは、取引先の支払い能力を重視して審査していることから、売掛債権の信頼度によっては銀行融資よりも審査に通りやすいと言えます。
銀行融資とファクタリングの違いを以下の表にまとめましたので、参照ください。
ファクタリング | 銀行融資 | |
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審査基準 |
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審査期間 | 即日~約2週間 | 約1週間~3カ月 |
審査に通らない理由 |
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ファクタリングと銀行融資の審査基準は、自社か取引先に重点が置かれているかが大きな違いです。
自社の経営が落ち込んでいる場合や、起業したばかりで実績がない企業でも、信頼度の高い売掛債権を持っていればファクタリングにより資金調達可能と言えます。
売掛金が未回収となっても支払い義務が発生しない
ファクタリングには、償還請求権がないことから売掛金が未回収となっても、自社に売掛金の支払い義務が発生しません。
償還請求権とは、取引先からファクタリング会社へ売掛金の支払いがなかったとき、ファクタリング会社が自社に売掛金の支払いを請求できる権利を言います。
仮に取引先の経営悪化や倒産などにより売掛金の支払いができなくなった場合でも、自社がファクタリング会社に支払う義務は発生しないことになるため、安心してファクタリングが利用できます。
資金繰り改善に効果がある
ファクタリングは、売掛金を本来の入金日より前に入手できる制度であることから、資金繰り改善に効果があります。
売掛金の支払いは、1〜2カ月後である場合が多いでしょう。
支払いまでの期間に、まとまった出費が発生したときにファクタリングを利用することで、前倒しで資金調達し、支払いに充てることが可能です。
商品やサービスの素材を支払う期日が売掛金の支払い日より前に入っている場合や、納税・賞与のタイミングが重なった場合などに、ファクタリングを利用すると有効です。
上記のような突発的な支払いに対してファクタリングを利用するのは有効ですが、高額な手数料が後の資金繰りに影響を及ぼすことも考えられます。
長期的に安定した資金繰りができるように、資金計画を立てましょう。
保証人や担保が不要
ファクタリングは融資ではないことから、保証人や担保を用意しなくても利用可能です。
保証人や担保については以下を参照ください。
保証人 | 担保 | |
---|---|---|
概要 |
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対象 |
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銀行融資では、融資した資金の回収を確実にするために保証人や担保を必要とする場合が多いです。
一方ファクタリングは、貸付ではなく売掛債権の売却にて資金調達するため、担保や保証人は要求されません。
自社の負債にはならないため信用度が下がる心配がない
ファクタリングは貸付には該当しないため、負債にはならず会計処理上は売掛金の減少と現金の増加となります。
借金を抱えている企業とみなされることがないため、ファクタリングを利用することで自社の信用度が下がることはありません。
実績が少なく銀行融資に落ちてしまった企業や、今後事業拡大のために融資を検討している場合は、負債にならないファクタリングを利用して、自社の信用度が下がらないように資金調達しましょう。
ファクタリングは2社間・3社間がある
ファクタリングの仕組みについて、改めて詳しく解説しますので確認しましょう。
ファクタリングには2社間と3社間があり、それぞれ違いがあります。
- 2社間ファクタリング|即日で資金調達できる
- 3社間ファクタリング|手数料が抑えられる
2つの違いを理解して、自社に合ったファクタリングを利用しましょう。
2社間ファクタリング|即日で資金調達できる
2社間は、自社とファクタリング会社間で行われる契約です。
2社間で契約されるため手間が少なく、審査もスムーズに進むことから資金調達までの期間が短いのが特徴です。
最短で、契約した当日に資金が入手できるため、数日中に手元に現金が欲しい企業は2社間を利用しましょう。
また、2社間は取引先へファクタリングの利用が通知されないのも特徴のひとつです。
取引先へファクタリングの利用を知られることで信頼関係に影響が出る場合や、どうしても知られたくない場合には、2社間の利用がおすすめです。
3社間ファクタリング|手数料が抑えられる
3社間は、自社・ファクタリング会社・取引先で行われる契約です。
売掛金の支払いを行う取引先が介入することで、売掛債権の信頼度が上がり、手数料を抑えてファクタリングを利用できるのが特徴です。
ファクタリングの利用を知られても、取引先との関係性に影響がない場合には3社間を利用すると、手数料が抑えられることでより多くの資金が手元に残ります。
ただし、2社間よりも契約に時間がかかることから入金スピードは契約してから2〜3週間としている業者が多いです。
取引先との関係性に応じて、ファクタリングの利用を通知されても問題ない場合や、入金までに期間が空いても問題ない場合は、3社間を利用しましょう。
2社間と3社間の違いは取引先の介入の有無
2社間と3社間の違いは、取引先が介入するか否かにより、手数料の差やファクタリング会社への支払いの有無が変わってきます。
具体的な違いを以下にまとめましたので、参照ください。
2社間 | 3社間 | |
---|---|---|
手数料 | 10~20% | 1~10% |
取引先への通知 | 無 | 有 |
入金スピード | およそ即日~数日 | およそ2~3週間 |
ファクタリング会社への支払い | 自社 | 取引先 |
おすすめの利用シーン |
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ファクタリングの種類を確認して、自社に合った方法を選びましょう。
デメリットを理解して自社に合ったファクタリングを利用しよう
ファクタリングには手数料が高い、売掛債権以上の金額は入手できない、分割払いはできないなどのデメリットがあります。
自社にとって不利なデメリットもあるため、確認してからファクタリングを利用しましょう。
売掛債権の信頼度が高いもの、支払期日が近いものを利用すると手数料が抑えられる傾向があります。
2社間においては、債権譲渡登記の有無を自社で選べる業者を探し、債権譲渡登記をしなければ取引先へ知られることはないため、検討してみるとよいでしょう。
デメリットを最小限に抑える方法も参考に、自社に合ったファクタリングの利用を検討しましょう。