調剤報酬の支払いは請求月から2カ月後になるため、資金繰りに悩んでいる薬局も多いのではないでしょうか?
調剤薬局で急な支払いや、設備の新設などにより資金が必要になった場合は、調剤報酬ファクタリングの利用が有効です。
この記事では資金繰りに悩んでいる調剤薬局の経営者向けに、調剤報酬ファクタリングとは何か、利用するメリット・デメリット、有効な利用例について解説しています。
ファクタリングを正しく理解して利用することで、資金繰りの悩みが解消し、経営が安定しますので参考にしてください。
調剤報酬ファクタリングは薬局が対象
調剤報酬ファクタリングとは、調剤薬局で作成されたレセプトを債権として売却し、資金調達する方法です。
調剤報酬ファクタリングについて、以下の2つに分けて解説していきます。
- 調剤報酬債権を売却して資金調達する仕組み
- 医療ファクタリングの1つである
薬局で資金繰りに悩んでいる方は、調剤報酬ファクタリングを利用することで改善が期待できるため、仕組みをしっかり理解しましょう。
調剤報酬債権を売却して資金調達する仕組み
調剤報酬が入金されるのは請求月から2カ月後になるのに対し、調剤報酬ファクタリングは最短
2週間で資金が入手できます。
店頭での売上によって、すぐに調剤薬局の資金となるのは主に以下の2つです。
- 患者さんの年齢や所得に応じた自己負担割合分の調剤報酬
- 店内にある健康グッズや雑貨などの売上
これらの患者さんの自己負担割合以外の負担分は、レセプトを健康保険組合などの支払機関に提出することで2カ月後に入金される仕組みです。
例えば3割負担であれば、患者さんが調剤薬局の窓口にて3割分の代金を支払い、残りの7割が支払機関である健康保険組合などの保険者から2カ月後支払われる流れになります。
調剤薬局では、売上の大部分が2カ月後に支払われることになっているため、手元に2ヶ月分の運転資金を確保していなければなりません。
手元に資金が必要な場合や、2ヶ月後の保険負担分の入金までの期間に、まとまった資金が必要になった場合に調剤報酬ファクタリングを利用するのがおすすめです。
医療ファクタリングの1つである
調剤報酬ファクタリングは、診療報酬・介護報酬と合わせて医療ファクタリングの1つとされています。
それぞれの対象となる機関や違いについて以下にまとめました。
- 診療報酬ファクタリング:病院や診療所において発生する診療報酬債権を売却して行われるファクタリング
- 介護報酬ファクタリング:介護保険を適応して介護サービスを行った報酬(介護報酬)を売却して行われるファクタリング
- 調剤報酬ファクタリング:医師が発行した処方箋の元、調剤した薬に対して発生した報酬(調剤報酬)を売却して行われるファクタリング
医療ファクタリングの違いは、対象となる機関と取り扱う債権の種類が異なる点であり、ファクタリングを利用する流れはいずれも同じです。
医療ファクタリングはいずれも、健康保険や介護保険が債務者となり、ファクタリング会社へレセプトを売却することによって、診療報酬や介護報酬や調剤報酬を前倒しで受け取れます。
これらのファクタリングはd3社間で行われるので資金化までに数日から2週間程度の時間がかかり、債務者が公的機関であるため高い確率で審査に通過でき、手数料もかなり低めになっているなどの特徴が共通しています。
調剤報酬ファクタリングのメリット
調剤報酬ファクタリングには、以下の8つのメリットがあります。
- 通常2カ月後になる報酬を最短2週間で入手可能
- 売掛先が国になるため高率で買取してくれる
- 手数料が安く銀行融資より利用しやすい
- 初回は2カ月分をファクタリングするため、まとまった資金が入手可能
- 負債にならない
- 使い道が自由
- 担保や保証人が不要
- 業歴や業績と関係なく資金調達可能
入金スピードの早さや審査に通りやすいなどのメリットについて、理由を含め解説します。
通常2カ月後になる報酬を最短2週間で入手可能
ファクタリングを利用すると、通常入金まで2カ月かかるところを最短2週間で入金されます。
ファクタリングは「融資」ではなく「売買契約」にあたるため、売掛債権(調剤報酬ファクタリングの場合はレセプト)の信頼度が高ければ短期間で審査が済み、資金調達できるからです。
調剤薬局の回収サイトは通常2ヶ月ですが、調剤報酬ファクタリングを利用することによって最短2週間へ短縮できるのは大きなメリットです。
売掛先が国になるため高率で買取してくれる
調剤報酬ファクタリングは、調剤薬局で発生するレセプトが売掛債権になります。
売掛先は国民健康保険協会や全国健康保険協会などの国や公的機関が運営する機関となることから、売掛金の未回収リスクがほぼないと判断され高確率で買取してくれます。
銀行融資などの審査に通過できない調剤薬局でも、調剤報酬ファクタリングであれば資金調達できる可能性は非常に高いでしょう。
手数料が安く銀行融資より利用しやすい
調剤報酬ファクタリングの手数料は、0.25〜2%程度が相場と言われています。
売掛元は国の機関であることから、売掛金の未回収リスクを考えなくて良いと判断されているためです。
銀行融資の金利の相場は年1〜3%台となっており、調剤報酬ファクタリングを年利に換算すると2%〜となっているため、調剤報酬ファクタリングは銀行融資とそれほど変わらない低負担で利用できます。
加えて銀行融資は保証人や担保などの準備も必要となる場合が多く、利用までの手間もありますが、ファクタリングは必要ありません。
ファクタリングには2社間、3社間、医療と種類があり、それぞれの手数料について以下の表を参照ください。
ファクタリングの種類 | 手数料 |
---|---|
2社間 | 10~20% |
3社間 | 1~10% |
医療(診療・介護・調剤) | 0.25~2% |
調剤報酬ファクタリングの中でも手数料が安いことが分かります。
以上のことから、銀行融資やその他のファクタリングの中でも、医療ファクタリングは利用しやすいと言えるでしょう。
初回は2カ月分をファクタリングするため、まとまった資金が入手可能
調剤報酬は、前月分を翌月中旬に請求し、請求月の翌月末に入金される仕組みです。
例えば、8月分を9月10日に請求した場合、10月25日に入金されます。
8月にファクタリング契約をした場合は、7月分のレセプトが売掛債権となりファクタリングの対象になります。
8月は元々6月に請求した報酬が入金される月となるため、6月分とファクタリングした7月分を合わせた2カ月分が入金されます。
以上の仕組みから、初回は2カ月分の資金が入手可能です。
新しい機器を導入したい場合や、従業員の増員などまとまった資金が必要になった場合におすすめの利用方法です。
また、開業間もない調剤薬局が手元に2ヶ月分の売上がないというケースでも活用できるでしょう。
負債にならない
調剤報酬ファクタリングは負債ではありません。
貸借対照表に「売掛金」として計上されている資産を現金預金と交換しているだけですので、資産と資産の交換です。
そのため、調剤報酬ファクタリングを利用しても、貸借対照表の負債が増えることはありません。
借入金によって負債が増えると、自己資本比率などの各種経営指標が低下します。
また、負債が増えた分だけ貸借対照表の大きくなるので、不要な資産も負債も持たず、貸借対照表はできる限り小さくする貸借対照表のオフバランス化にも反することとなります。
借入金を利用すると、外部からの評価が下がることがありますが、調剤報酬ファクタリングであれば、負債ではないので自社の評価が下がることはありませんし、金融機関などから外部より資金調達したことを知られる心配もありません。
使い道が自由
調剤報酬ファクタリングで調達したお金は何に使用しても自由です。
ファクタリング会社がお金の流れを管理することはないので、例えば、運転資金にも設備投資にも、他の借入金の返済にも使用できます。
銀行融資であれば、運転資金として借りたお金は会社の運転資金にしか利用できませんし、設備資金を借りた場合は、支払先まで全て金融機関に管理されるので自由度は全くありません。
調剤報酬ファクタリングは調達したお金を自由に利用できるのは融資と比較したメリットと言えるでしょう。
担保や保証人が不要
調剤報酬ファクタリングで資金を調達するために担保や保証人は必要ありません。
そのため、有力な保証人を用意できない場合や、不動産などを保有していない方も、調剤報酬ファクタリングであれば資金調達が可能です。
銀行融資ではどうしても有力な担保などを提供できる方が審査で有利になるので、審査に平等性がありません。
調剤報酬ファクタリングは調剤報酬さえ手元に保有していれば、どのような調剤薬局でも資金調達ができるのは融資と比較した場合のメリットです。
業歴や業績と関係なく資金調達可能
調剤報酬ファクタリングは業歴や業績などは審査でほとんど評価されません。
ファクタリングによって売掛債権を売却した後、ファクタリング会社へ代金を支払うのは債務者である保険者の国保連や健康保険組合などだからです。
そして、公的機関である保険者は支払不能になるリスクが実質的にゼロですので、どのような調剤薬局ても高い確率で審査通過できます。
銀行融資であれば調剤薬局の信用が重視されるので、以下のような点を審査されます。
- 業歴
- 決算状況
- 前回の融資からの時間
例えば赤字や債務超過の場合は審査通過が難しくなります。
また、銀行融資は1年間に複数回の融資を受けることが難しいため、前回融資から1年を経過していないのに資金が必要になった場合も審査通過が困難です。
調剤報酬ファクタリングは赤字や債務超過などの理由で銀行から資金調達できなかった薬局でも審査に通過し、資金調達できる可能性があります。
調剤報酬ファクタリングのデメリット
調剤報酬ファクタリングの6つのデメリットを紹介します。
- 掛け目が設定されており、100%債権額が支給されない
- ファクタリングの利用が長期化するおそれがある
- 債権譲渡登記が必要になることで出費が増える
- 本質的に資金繰りは改善しない
- 長期契約が必要な場合がある
- 保証人が必要になることがある
資金額が減ってしまう可能性や、資金繰りに関するデメリットになるためしっかり抑えておきましょう。
掛け目が設定されており、100%債権額が支給されない
ファクタリング会社は、レセプト(売掛債権)に対し「最大〇円まで出せます」という掛け目を設定しており、相場は80%と言われています。
調剤薬局が提出したレセプトの内容を審査機関が調査し、妥当と判断された報酬のみ入金されるため、レセプトの金額全てが支払われるとは言い切れないからです。
掛け目を設定せずに売掛債権額を100%支給した後に、審査機関から不備と判断され減額されてしまった場合、ファクタリング会社が損をしてしまうため、掛け目が設定されています。
なお掛け目によって減額されたは、審査機関から正式な支給額が決定した後返還される仕組みになっているため、安心してください。
以下に掛け目が返還されるまでの流れを記載していますので参照ください。
- ファクタリング会社から売掛債権の80%の金額が支給される
- 審査機関から正式な報酬額決定の通知が届く
- ファクタリング会社は残りの20%を利用者に支払う
支払機関からの正式な報酬額決定通知が届くのは、請求月のおよそ2カ月後になるため掛け目の20%分の代金も2カ月後になります。
最初に支給されるのはレセプトの80%程度の金額で、調剤報酬ファクタリングを利用したからといって全額が入金されるわけではありません。
おおよその入金額を理解した上で、調剤報酬ファクタリングを利用しましょう。
ファクタリングの利用が長期化するおそれがある
ファクタリングは本来入金される時期を前倒しして、手数料や掛け目を差し引いた資金を入手する方法です。
資金繰り改善のために、一時的に利用する場合にはメリットが大きい制度ですが、ファクタリングに依存して長期化してしまうと、手数料は引かれ続けるため結果的に膨大な資金を失うことになりかねません。
薬局内で患者さんに購入してもらえるようなアイテムを増やしたり、薬の在庫管理を徹底し余分な発注を避けるなど、手元に資金を残すような工夫をして、ファクタリングは緊急時用の措置として考えましょう。
債権譲渡登記が必要になることで出費が増える
調剤報酬ファクタリングを利用する際は「A薬局が持っているレセプト(売掛債権)をBファクタリング会社に売却します」と公的に証明する、債権譲渡登記が必要になる可能性があります。
債権譲渡登記を発行するためには以下の費用が発生します。
- 登録免許税:7,500円
- 発行手続きを行う司法書士への報酬:5~10万円
資金繰りの悩みを解消するためにファクタリングを利用するはずが、手数料や掛け目、書類にかかる諸費用で手元に入る資金がかなり減ってしまう可能性があることを認識しておきましょう。
ただし、3社間ファクタリングでおこなわれる調剤報酬ファクタリングでは、一般的に債権譲渡登記はおこないません。
債務者に対してファクタリング会社と利用者の連名で債権譲渡通知を内容証明郵便で発送することで、債権譲渡を公的に証明できるためです。
調剤報酬を2社間ファクタリングで売却する場合には、債権譲渡登記が必要になる可能性があると理解しておきましょう。
本質的に資金繰りは改善しない
調剤報酬ファクタリングは、2ヶ月後に入金になる調剤報酬を前倒しで受け取っているだけです。
そのため、本来、調剤報酬が受け取れる2ヶ月後には入金がなくなってしまうため、また2ヶ月後には資金繰りが苦しくなる可能性が非常に高くなります。
つまり調剤報酬ファクタリングを利用して、本質的に資金繰りが改善することはありません。
無計画に利用することによって、調剤報酬ファクタリングから抜け出せなくなり、毎月、手数料を負担して収益を圧迫することになってしまいます。
そのため、調剤報酬ファクタリングを恒常的に利用することはおすすめできません。
調剤報酬ファクタリングを利用するのはあくまでも緊急でお金が必要な場合や、銀行から融資をが降りてくるまでのつなぎとして利用し、調剤報酬ファクタリングに依存した資金繰りは避けた方がよいでしょう。
資金繰りを根本的に立て直したいのであれば、銀行から長期借入金を調達するか、人件費や経費などを見直して経営改善を図るようにしてください。
長期契約が必要な場合がある
調剤報酬ファクタリングは、ファクタリング会社と長期の契約を締結しなければならなケースがあります。
ファクタリング会社によっては契約期間を1〜2年に設定している場合もあります。
このような契約を締結すると、契約期間内は調剤報酬ファクタリングを利用し続けなければなりません。
1年〜2年程度、調剤報酬ファクタリングを継続的に利用して、経営が軌道に乗るまでは資金繰りを安定化されるという方法ももちろん有効です。
しかし、調剤薬局によっては1回だけ利用できれば、継続的に利用する必要性はないというケースもあるでしょう。
ファクタリング会社の契約期間が本当に自社にとって必要な期間なのかを慎重に遣唐し、調剤報酬ファクタリングを活用してください。
保証人が必要になることがある
調剤報酬ファクタリング利用の手順
調剤報酬ファクタリングを利用する際の流れを、以下の5つの項目に分けて解説していきます。
- レセプトをファクタリング会社に売却する
- 債権譲渡契約を締結する
- 審査後掛け目を引いた代金が入金される
- 請求先がファクタリング会社に明細書の金額を入金する
- ファクタリング会社は掛け目分の代金を利用者に返還する
手順①レセプトをファクタリング会社に売却する
1カ月分のレセプトの作成が完了したら、ファクタリング会社に調剤報酬債権の売却を依頼します。
申し込みの際は以下の書類が必要になる場合があるため、事前に用意しておくと安心です。
- レセプト(調剤報酬明細書)
- 調剤薬局などの概要が分かるもの
- 会社謄本
- 印鑑証明書
- 納税証明書
- 代表者の本人確認ができる書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
必要書類はファクタリング会社によって異なるため、利用する会社に問い合わせて確認しましょう。
手順②債権譲渡契約を締結する
必要書類を基に審査を行い、契約をします。
債権元が社保や国保を扱う国の機関であるため審査に落ちることはほとんどないでしょう。
審査にかかる期間は、1〜2週間が相場です。
このとき、ファクタリングの利用を債権元に通知されますが、国の機関であるため今後の取引が不利になることはありませんので安心して利用できます。
手順③審査後掛け目を引いた代金が入金される
実際に入金される金額は【調剤報酬債権の金額×掛け目(相場80%)‐手数料(相場0.25〜2%)】となります。
具体例として、売掛債権が100万円、掛け目が80%、手数料が1%だった場合の支給額を計算します。
100万円(売掛債権)×0.8(掛け目80%)=80万円(支給可能な金額)
80万円(支給可能額)‐8万円(手数料1%)=72万円(支給額)
100万円の売掛債権が72万円まで減額されて支給されます。
掛け目や手数料を考慮して、ファクタリングの利用を検討しましょう。
掛け目が引かれた金額は、審査通過後の翌日に入金されるのが一般的です。
手順④請求先がファクタリング会社に明細書の金額を入金する
レセプトを提出した審査機関が、明細書の内容を確認後報酬金額が確定します。
審査機関がファクタリング会社に支払いをします。
手順⑤ファクタリング会社は掛け目分の代金を利用者に返還する
報酬金額が確定した後にファクタリング会社は、掛け目分の代金を利用者に返還します。
報酬金額の確定にはおよそ2カ月かかるため、掛け目分の支払いも同様の期間がかかりますので注意しましょう。
調剤報酬ファクタリングの利用をおすすめする4つの例
実際にどのような場面で調剤報酬ファクタリングの利用が有効なのか、具体的な例を4つ紹介します。
- 薬の在庫不足により、急にまとまった資金が必要になった場合
- 事業の拡大により設備費がかかることになった場合
- 薬局内で勤務する薬剤師の増員に伴い、人件費が発生した場合
- 銀行からの融資は避けたい、または審査に落ちてしまった場合
自社の状況に近い例があるか確認しましょう。
薬の在庫不足により、急にまとまった資金が必要になった場合
インフルエンザや胃腸風邪など、季節によって流行がある病気に対する薬は、急に流行り始めると在庫不足になりがちです。
なかには高額な薬もあり、突然まとまった発注が必要になったにもかかわらず資金が手元にないという事態になった場合に、調剤報酬ファクタリングの利用がおすすめです。
事業の拡大により設備費がかかることになった場合
調剤に必要な機材や、オンラインで処方箋受付を行うシステムの導入など新たに設備を整える場合には多額の資金が必要になります。
支払い期日までに報酬が入らない場合は、調剤報酬ファクタリングで資金を前倒しして入手することで支払いが可能です。
薬局内で勤務する薬剤師の増員に伴い、人件費が発生した場合
新しく薬剤師を雇った場合、1カ月後には1人分の給料を余計に確保しなければなりません。
またボーナス時期にはより多額の資金が必要となることから、ファクタリングの利用で資金を確保し、従業員に支払うことができます。
銀行からの融資は避けたい、または審査に落ちてしまった場合
銀行融資は「借入」になるため、利用は慎重になります。
審査に落ちてしまった場合でも、ファクタリングの利用は可能です。
調剤報酬債権は、社保や国保などの国の機関から支払われる報酬であることから、代金の未払いの可能性は限りなく低く審査が通りやすいからです。
開業当初に銀行融資を受けたためこれ以上の融資は避けたい場合や、審査が通らなかった場合の調剤報酬ファクタリングの利用は有効であると言えます。
おすすめ調剤報酬ファクタリング会社3選
調剤報酬ファクタリングを取り扱っている有名な業者は以下の3社です。
- カイポケ
- スルガ銀行
- 三菱HCキャピタル
それぞれのファクタリング会社の特徴を詳しく解説していきます。
カイポケ
カイポケは主に介護事業の会計処理などの経営支援をおこなう、株式会社エス・エム・エスが提供するサービスです。
カイポケでは介護報酬ファクタリングをメインにおこなっていますが、調剤報酬のファクタリングにも対応しています。
カイポケの調剤報酬ファクタリングの手数料などの条件は以下のとおりです。
- ファクタリング手数料:債権額に掛目を乗じた額の0.8%
- 掛目:80%
- 初回手数料:5,000円
- 月額利用料:2,000円
- 入金スピード:5営業日後に請求額の80%を5営業日後に入金(残る20%は従来の支払い日に入金)
契約期間について定めはないので、1ヶ月分だけなど、非常に短い期間の利用も可能です。
カイポケは東証プライム上場企業が運営する非常に大きなサービスで、約1,800もの法人が利用しています。
安心できる大きなサービスを利用したい方にはカイポケが向いています。
スルガ銀行
地方銀行のスルガ銀行も調剤報酬などの医療ファクタリングを取り扱っています。
最大の特徴は掛目が大きいことで、90%となっています。
申込から最短5営業日で9割もの調剤報酬を資金化できるのは大きなメリットです。
手数料は公開されていませんが、銀行のファクタリングは民間事業者のファクタリングよりも手数料が低い傾向があるので、他社よりも低コストで資金調達できる可能性があるでしょう。
手数料の低さや掛目の重視したいのであれば、スルガ銀行へ相談してください。
三菱HCキャピタル
三菱系列のリース会社である三菱HCキャピタルも医療ファクタリングを取り扱っており、調剤報酬も早期資金化できます。
手数料の低さが魅力で月0.2%〜利用できます。
また、非対面で契約できるので、近くにオフィスがない地方の方も最短5営業日で資金化可能です。
銀行などのファクタリングはある程度まとまった金額からしか買い取ってもらえませんが、三菱HC
キャピタルのファクタリングは数十万円程度の少額でも取り扱ってもらえる可能性があります。
売上規模の小さな調剤薬局でも利用できるでしょう。
調剤報酬ファクタタリングと銀行融資の違い
調剤薬局が資金調達できる方法としては、調剤報酬ファクタリングの他に銀行融資があります。
銀行融資との主な違いは以下のとおりです。
- 審査対象
- 納税状況の審査への影響
- 資産状況の審査への影響
- 業況の審査への影響
- 資金調達スピード
- 調達可能額
負債なのか資産の売却なのかの他に、銀行融資との違いは多数あります。
違いをしっかりと理解して、適切に使い分けられるようになりましょう。
審査対象
調剤報酬ファクタリングの審査対象は、調剤報酬の債務者である、国保連や健康保険組合などの保険者です。
ファクタリングは売掛債権の売却ですので、ファクタリング会社にとっては債務者である保険者が期日通りに代金を支払えるかどうかが非常に重要になります。
そして、債務者である保険者は公的機関ですので支払能力に問題なく、非常に高い確率で審査に通過できます。
一方、融資において債務者となるのは調剤薬局です。
そのため、融資審査では調剤薬局に支払能力があるかどうかが審査され、支払能力がないと判断された場合、審査には通過できません。
赤字や債務超過の場合には、調剤薬局であっても審査通過が難しいと判断されて、審査に通過できない可能性があるでしょう。
納税状況の審査への影響
調剤報酬ファクタリングの審査では納税状況を確認しない会社もあります。
このような会社でファクタリングを利用すれば、税金の滞納があっても問題なく審査に通過して資金調達が可能です。
一方、融資の場合には審査ではほぼ必ず納税証明書が必要になるので、税金の滞納があった場合には審査通過が不可能です。
税金を滞納してしまうと、資金調達できる手段がおそろしく狭まってしまい、融資を利用するのは非常に難しくなります。
調剤報酬ファクタリングであれば、税金を滞納していても利用できる可能性が高いため、税金滞納時は調剤報酬ファクタリングを利用し、その資金で税金滞納を解消したあとに銀行融資を利用するなど、適切に使い分けましょう。
資産状況の審査への影響
融資では、申し込む企業がどの程度の資産を保有しているのかについても審査で重視されます。
そのため、申し込む企業に不動産や多くの金融資産があると、当該資産を回収に充てられるので審査で有利になり、資産が乏しい企業は審査に通過できないことも珍しくありません。
一方、調剤報酬ファクタリングの審査で重視されるのは、調剤報酬の回収可能性だけですので、資産のない事業者でも、調剤報酬さえ保有していれば審査に通過できます。
資産の有無に関わらず平等に審査を受けられるので、開業間もない調剤薬局でも調剤報酬ファクタリングであれば審査に通過できるでしょう。
業況の審査への影響
業況の審査に対する影響も異なります。
融資の際には、調剤薬局に返済能力があるかどうかが重視されるため、返済能力のないと判断された場合には審査に通過できません。
具体的には赤字や債務超過などの場合には、返済能力が乏しいと判断されるので審査通過が難しくなります。
一方、調剤報酬ファクタリングで審査されるのは売掛債権の信用のみですので、申し込みをおこなった調剤薬局の業況などは審査に影響しません。
赤字や債務超過でも審査に通過できる可能性があるのが、調剤報酬ファクタリングの特徴です。
業況が悪く融資審査に通過できないのであれば、調剤報酬ファクタリングを利用しましょう。
資金調達スピード
資金調達スピードは銀行融資であれば2週間〜3週間程度、調剤報酬ファクタリングは2週間程度です。
それほど入金までのスピードは変わりませんが、調剤報酬ファクタリングは保険者に対してレセプトの発送をおこなったあとでないと、ファクタリングへ申し込むことはできません。
一方、銀行融資は資金が必要になった時にすぐに申し込むことが可能です。
この点で、調剤報酬ファクタリングよりも銀行融資の方が機動的な資金調達ができます。
逆に、レセプト発送から間もない場合には、調剤報酬ファクタリングの方が資金調達できる可能性があります。
資金が必要なタイミングに合わせて、融資と調剤報酬ファクタリングを上手に使い分けましょう。
調達可能額
調達可能額は調剤報酬ファクタリングは調剤報酬の範囲内です。
そのため、月商を超えるような高額な資金調達をおこなうことは、調剤報酬ファクタリングでは不可能です。
一方、銀行融資では月商を超えるような高額の資金調達をおこなうこともできます。
数ヶ月分の運転資金を調達することや、高額な設備資金を調達することも、銀行融資では不可能ではありません。
高額な資金調達が必要な際には銀行へ相談してみましょう。
調剤報酬ファクタリングは調剤薬局の資金繰り改善に効果的
国保や社保からの調剤報酬の支払いは、請求月から2カ月後になるため、資金繰りに悩んでいる薬局には調剤報酬ファクタリングが有効です。
ファクタリングが有効な理由やポイントについて以下にまとめます。
- 通常2カ月後になる支払いを、ファクタリングを依頼してから最短2週間程度で資金調達が可能
- 審査に通りやすく、銀行融資より利用しやすい
- 掛け目が設定されており、報酬額の80%が支払われる場合が多い
- ファクタリングに頼りすぎると長期化するおそれがあり、資金繰りが返って難しくなる場合がある
一時的な資金繰りを改善するためのファクタリング利用は有効な手段ですが、長期化することで手数料が膨大な金額になり、結果的に資金繰りがうまくいかない危険性もあります。
ファクタリングに頼らない資金繰りの工夫をして、緊急時などのタイミングを見て有効に利用しましょう。