注文書買取は、仕事を受注した段階で発生する注文書(発注書)を注文書買取業者が買い取って資金化する資金調達方法です。
2社間ファクタリングをベースに取り入れ、最短即日で資金化ができることから、申込と契約の流れが非常にスムーズな点が特徴です。
この記事では、注文書買取の申込と契約の流れを詳細に解説していきます。
契約に必要な書類や債権譲渡登記についても詳しく解説しているので、これから利用を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
注文書買取の申込と契約の流れ
注文書買取は、おおまかに以下のような流れで申込から取引までが行われます。
- 注文書買取業者へ申し込む
- 面談・審査が行われる
- 買取手数料を引かれた金額が最短即日~数日で入金される
- 利用者が売掛先から売掛金を回収する
- 回収した売掛金を注文書買取業者へ送金する
注文書買取は、基本的に2社間ファクタリングで行われるため、売掛先に債権譲渡を知られずに利用できます。
そのため、入金までの期間が短く、最短即日~数日で資金調達ができる点が魅力です。
注文書買取の取引で利用者が行う5つのこと
注文書買取の申込と契約の流れについて、利用者が行うべきことを詳しく見ていきます。
利用者が行うべきことは、大きく以下の5つです。
- 必要書類を用意する
- 注文書買取業者と面談・審査を受ける
- 債権譲渡登記を行う
- 注文書買取業者から入金される
- 回収した売掛金を注文書買取業者へ送金する
上記について、詳しく解説していきます。
1.必要書類を用意する
注文書買取では、基本的に以下の書類が必要となります。
必要書類 | 備考 |
---|---|
注文書または発注書 | 金額・入金日・取引内容が明記されているかを確認 |
通帳のコピー | 取引先との取引歴の確認のため2~3ヶ月分が必要 |
本査定申込書(審査依頼書) | 審査を受けるための必要事項を記入し提出 |
代表者の身分証明書 | 運転免許証やマイナンバーカード、パスポート等 |
注文書買取を利用するには「注文書(発注書)」が必要ですが、発行されていない場合もあるかもしれません。
そのような時は、金額・入金日・取引内容が分かるメール文等で対応してもらえる場合もあります。
注文書がないからと諦めるのではなく、まずは注文書買取業者に相談してみましょう。
また、ここで紹介した必要書類はあくまで一例です。
注文書買取業者によって必要とする書類は異なるため、利用前に必ず確認して不備なく揃えましょう。
2.注文書買取業者との面談・審査を受ける
注文書買取業者に申込したら、面談・審査がおこなわれます。
即日入金を希望する場合は、注文書買取業者がスムーズに審査をできるように利用者側も努力をしなければなりません。
具体的には、以下の点に気をつけましょう。
- 信用力の高い取引先の発注書を用意する
- 現状の財務状況をまとめておく
- 嘘偽りなく現状を話す
- 必要書類に不備や不足がないようにする
審査では、利用者よりも取引先の信用力が最も慎重に調査されます。
注文書買取業者からすると、確実に売掛金を回収しなければ利益につながらないため、売掛金の支払元である取引先の審査を念入りに行うのです。
そのため、業績の良くない取引先との発注書を審査に出してしまうと、審査に時間がかかり即日入金ができない可能性が高くなるうえに、手数料も上がる傾向にあります。
また、利用者の財務状況についてもわかりやすく話せるようにまとめておいたり、必要書類に不備や不足がないかをしっかり確認しておくこともポイントです。
取引先の信用力に問題がないとしても、利用者の状況に不審な点があったり書類に不明点が多かったりする場合、信用できない利用者と判断されてさらに審査の時間がかかってしまいます。
早期資金化を希望するなら、利用者は上記の点を意識して審査がスムーズに終わるよう努力していきましょう。
3.債権譲渡登記を行う
債権譲渡登記とは、注文書買取業者が第3者への対抗要件を示すために売掛債権が譲渡されたことを登記するものです。
債権譲渡登記を行なうことで、利用者が複数の注文書買取業者と契約(二重譲渡)をして、売掛金の回収ができなくなってしまうリスクを防ぎます。
債権譲渡登記を行う利用者側のメリットは、手数料が安くおさえられる点です。
債権譲渡登記は、二重譲渡されて売掛金の回収ができなくなる注文書買取業者のリスクを防ぎます。
手数料は、注文書買取業者が抱えるリスクに比例するため、債権譲渡登記を行うことで業者のリスクが軽減して手数料もおさえられるのです。
一方で、債権譲渡登記を行うことのデメリットもあります。
それは、取引先に債権譲渡したことが知られてしまうリスクが発生することです。
登記をすると、基本的には誰でも閲覧できるようになるため取引先に見られてしまう可能性があります。
しかし、閲覧するには有料だったり所定の情報が必要だったりするため、現実的に考えると取引先に知られる可能性はそう高くはありません。
2社間ファクタリングがベースとなっている注文書買取では、債権譲渡登記を行うのが基本ですが、義務ではないため省略している事業者もあります。
債権譲渡登記を行うメリット・デメリットを比べて、注文書買取業者を選ぶポイントの1つとして検討しましょう。
4.注文書買取業者から入金される
審査に通過すると、最短即日で注文書買取業者から入金があるため必ず確認しましょう。
この時に入金される金額は、買取手数料を差し引いた金額です。
発注書に書かれている金額がそのまま入金されるわけではないので注意しましょう。
注文書買取業者から入金されたら、人件費や設備費、着手金等の仕事上必要な経費に充てられます。
仕事を受注したはいいものの、資金繰りに困って仕事を完了するための資金が足りない時などに、注文書買取は非常に効果的です。
5. 回収した売掛金を注文書買取業者へ入金する
注文書買取は、2社間ファクタリングで行われるため「回収委託契約」を結び、売掛金を回収して注文書買取業者へ期日までに送金しなければなりません。
本来なら、債権譲渡契約を結んだ以上、売掛金の回収業務は譲受会社である注文書買取業者の業務となります。
しかし、2社間ファクタリングでは売掛先へ債権譲渡の通知を行っていません。
そのため、注文書買取業者から突然売掛金の回収をされてしまっては、売掛先も困惑してしまうでしょう。
そこで2社間の場合は、ファクタリング会社から利用者へ回収業務を委託するという体裁を取ります。これが「回収委託契約」です。
注文書買取は買取金額が入金されて終わりではなく、売掛金を確実に回収し、注文書買取業者へ送金するまでが契約となります。
注文書買取を利用する際の注意事項
注文書買取を利用するときに気をつけるべきことは以下の3点です。
- 契約締結前に契約書の内容を必ず確認する
- 審査に落ちる可能性もある
- 注文書買取に依存しない資金計画が必要
申込をする前に必ず理解しておきたい注意事項であるため、詳しく解説していきます。
契約締結前に契約書の内容を必ず確認する
注文書買取業者との契約締結前に、必ず契約書の内容を確認してください。
注文書買取をはじめとするファクタリング業界では、金融機関のように許可を得なくても営業ができるため、債権の売買に見せかけて違法な貸付を行おうとする業者が混在しているのです。
違法な業者と取引をしないためには、契約前に確実に債権譲渡の契約であるかを確認しなければなりません。
以下のポイントに注目して契約書の内容を確認してください。
確認事項 | 内容 |
---|---|
償還請求権 | 償還請求権がない契約であるか(償還請求権のある契約の場合は違法業者の可能性が高い) |
債権譲渡通知 | 2社間ファクタリングをベースとする注文書買取では、債権譲渡通知がないことを確認 |
債権譲渡登記 | 債権譲渡登記を行うかどうかを確認 |
買取手数料 | 相場(2.5%~12%)からかけ離れていないか、余計な諸費用が追加されていないかを確認 |
担保・保証人 | 担保・保証人が設定されていないことを確認 |
報告義務 | 売掛先の業績が下降するなど不穏な動きがあった場合の報告義務があるかどうかを確認 |
損害賠償・違約金 | 損害賠償の範囲・違約金の金額は適切かどうかを確認 |
違法な業者は上記の内容について、言い逃れできるようにあえてあいまいに書いている可能性があります。
至急で資金調達が必要な場合でも、契約書内容を必ず確認して不明瞭な点を残さないようにしてください。
審査に落ちる可能性もある
注文書買取は、急ぎで資金調達をしたいときに有効な手段ではありますが、必ずしも審査に通過できるわけではありません。
一般的に、通常のファクタリングに比べて売掛金回収までの期間が長い注文書買取は、審査通過率が低いといわれています。
通常のファクタリングなら請求書が発行されてから約1〜2ヶ月待つと売掛金が支払われますが、注文書買取の場合は注文書を買い取ってから最大180日先の売掛金入金まで待たなければなりません。
売掛金入金までの期間が長ければ長いほど、その間に売掛先の業績が傾いて倒産するリスクが高まります。
そのため、注文書買取業者は売掛先を長期的な視点で厳しく審査するのです。
注文書買取で審査通過率を上げるには、長期的なスパンで経営が安定している大手企業や、国や地方団体といった倒産の心配のない取引先との注文書を利用するのがおすすめです。
注文書買取に依存しない資金計画が必要
注文書買取は、最大180日の支払いサイトを最短即日で資金化できる非常に利便性の高いサービスである一方、利用と同時に長期的な資金繰りを解決する資金計画を立てておくことが重要です。
注文書買取は、いわば売掛金の前借りのようなサービスです。
利用した直後は資金が充足していても、計画的に使わないと後々の支払いが厳しくなり、注文書買取を繰り返し利用しなければ経営が回らない状態になる可能性があります。
そのため、注文書買取を利用する際は、注文書買取に依存しないように長期的な資金計画を立てておくようにしましょう。
注文書買取を有効活用できる場面
注文書買取は、以下のような場面で有効に活用できます。
- 仕事を受注したはいいものの着手金が不足しているとき
- 納期までの期間が長く、仕事を完了するための人件費や設備費等が足りないとき
- 手数料以上の売上を見込める仕事を受注するとき
- 手元資金以上の大口の仕事を受注したいとき
注文書買取は、仕事を受注した段階で資金を得られる点が魅力です。
そのため「仕事を受注したいけど運営資金が足りない」場面で効果的に活用ができます。
注文書買取を利用すると、注文書がそのまま運転資金になるので会社の規模以上の仕事を積極的に受注できます。
ただし、手数料は通常のファクタリングよりも高くなる傾向にあるため、手数料分を確実にペイできる売上が見込めるかどうかが利用の判断のポイントです。
至急で資金調達をしたいなら利用者側の努力も必要
注文書買取は2社間ファクタリングをベースにしており、申込から審査、契約までの流れが非常にスムーズに進みます。
しかし、至急で資金が必要な場合などは、利用者側も取引の流れをしっかり理解し、必要書類等を不足なく用意するといった努力が不可欠です。
注文書買取は、仕事を受注した段階で資金化ができる非常に便利な資金調達方法です。
仕事を遂行するにあたって必要な人件費や設備費に充てられるため、有効に利用すれば事業拡大の一助となるでしょう。