介護報酬債権は、入金されるまでに2〜3ヶ月の期間を待たなければなりません。
入金待ちの間も支出は変わらず発生するため、資金繰りに苦労している介護事業者も多いのではないでしょうか。
そのような介護事業者の資金繰り改善に有効なのが、介護報酬ファクタリングです。
介護報酬ファクタリングを利用すると、通常入金までに2〜3ヶ月かかる介護診療報酬を、負債扱いにならずに早期で資金化できるため介護事業者の資金繰り改善に寄与します。
この記事では、介護報酬ファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、おすすめの介護報酬ファクタリング会社を紹介します。
資金調達方法の1つとして、いざという時のために仕組みを理解し、すぐに活用できるように備えておきましょう。
目次
介護報酬ファクタリングの仕組み|介護報酬債権を早期に資金化できる
介護報酬ファクタリングとは、医療機関のみが利用できる医療ファクタリングの1つです。
未入金の介護報酬債権をファクタリング会社が買い取り、本来ならば2〜3ヶ月先となる入金日より前に資金化します。
介護報酬ファクタリングを利用することで、介護報酬の入金を待つ間の資金繰りに悩む介護事業者の資金ニーズを満たすことが可能です。
介護報酬債権が入金されるまで約2~3ヶ月を要する
そもそもなぜ介護事業者は資金繰りに苦しむのでしょうか。
それは、介護報酬が支払われるまでに約2〜3ヶ月のタイムラグが発生することが原因です。
介護報酬が入金されるまでの通常の流れは以下のとおりです。
- 介護保険指定事業者が、利用者にサービスを提供
- 1ヶ月分のサービス利用料の自己負担割合(1~3割)を利用者に請求
- 1ヶ月の「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」を用意し、翌月10日頃までに国民健康保険団体連合会(国保)へ介護報酬を請求
- 国保が内容を審査し、問題がなければ請求月の翌月25日頃に介護報酬が入金される
上記を簡単に月日で考えると以下のようになります。
- 4月にサービス提供
- 5月10日までに国保へ請求
- 6月25日に入金される
つまり、介護報酬が全額手元に入るのはサービスを提供してから2~3ヶ月先です。
さらに、請求書や明細書に不備等があれば国保から返戻され、入金までにさらに時間を要してしまいます。
入金待期期間でも、備品や人件費などの支出は発生します。
特に手元資金が少ない開業したての事業者や、支払いが重なってしまったときなど、一時的に資金繰りに悩む場面も少なくありません。
このようなケースに介護報酬ファクタリングは非常に有効な資金調達手段です。
3社間ファクタリングで行われる
介護報酬ファクタリングは、基本的に3社間で行われます。
そもそもファクタリングには、2社間と3社間があり、両者の特徴を簡単にまとめると以下のとおりです。
2社間 | 3社間 | |
---|---|---|
契約主体 | 利用者とファクタリング会社 | 利用者とファクタリング会社と売掛先 |
売掛先への債権譲渡通知 | 不要 | 必要 |
手数料 | 高い(約10~20%) | 低い(約2~9%) |
通常のファクタリングの場合、売掛先へ債権譲渡の通知・承諾が不要な2社間ファクタリングの需要が多いです。
民間企業同士の取引では、取引先同士の信頼関係が非常に重要であり、ファクタリングを利用していることが売掛先に知られると「この会社は資金繰りに困っているのでは?」と勘繰られ、最悪の場合は取引中止となってしまうケースも考えられるからです
しかし、介護事業者の場合は報酬請求先が国保(公的機関)であるため、ファクタリング利用によって関係性が崩れたりファクタリングを断られたりすることはまずありません。
関係性が悪化する不安を抱えることなく、安い手数料で利用できることから、介護報酬ファクタリングは3社間ファクタリングのみの取り扱いとなっています。
申し込みから資金化までの流れ
介護報酬ファクタリングを利用する流れは、以下のとおりです。
- ファクタリング会社に申し込みをする
- ファクタリング会社と介護事業者間で債権譲渡契約を結ぶ
- ファクタリング会社が国保に債権譲渡を通知し、承諾を得る
- 介護事業者へ買取手数料を差し引いた掛け目分の金額が支払われる
- 国保からファクタリング会社へ介護報酬を支払う
- ファクタリング会社から介護事業者へ掛け目で差し引いた金額を支払う
介護報酬ファクタリングは、通常の3社間ファクタリングとほぼ同じ流れでおこなわれます。
しかし、公的機関である国保との契約であるため、一般のファクタリングよりも手数料が融通されていたり信用不安を抱えずに安心して取引できたりと、介護事業者にとってのメリットが多くあります。
介護報酬ファクタリングが必要となる場面
介護報酬ファクタリングは、以下のような場面で有効な資金調達方法です。
- 開業したばかりで運転資金が間に合わないとき
- 開業したばかりで銀行融資に断られたとき
- 事業拡大に伴い、設備投資にまとまった資金が必要となったとき
- 支出が重なり、近日中に急いで支払わなければならないとき
介護報酬ファクタリングは、審査に通りやすく入金までのスピードが1週間程度と非常にはやいので、銀行融資では間に合わない至急の場面に有効です。
ただし、債権額以上の資金化ができない点に注意しなければなりません。
普段の資金繰りは担保・保証人不要なファクタリングを活用することで、ファクタリングでまかないきれない大きな金額が必要な時に備えて、銀行融資枠の温存が可能です。
介護報酬ファクタリングを資金調達の選択肢の1つとして活用できると、あらゆる場面の資金ニーズに柔軟に対応できるでしょう。
介護報酬ファクタリングの4つのメリット
介護報酬ファクタリングのメリットは以下の通りです。
- 資金繰りが改善される
- 負債にならない
- 審査に通りやすい
- 保証人・担保が不要で利用できる
上記について、詳しく解説していきます。
資金繰りが改善される
介護報酬ファクタリングを利用すると、本来最大で約3か月後に入金されるはずだった介護報酬が、1週間程度で入金されるため資金繰り改善に寄与します。
介護の場では、介護報酬の入金を待っている間も設備費や人件費など、日々さまざまな支出が発生します。
これらの支出を利用者からの自己負担額分を含めた手元資金のみでまかなわなければなりません。
特に開業間もない事業所では、運営資金も少なく資金繰りが非常に困難になるケースが多々あります。
そこで介護報酬ファクタリングで早期に資金が入れば手元の資金不足が解消できるので、借入に頼らずにキャッシュフローの改善が可能となるのです。
負債にならない
ファクタリングは売掛債権の売買であるため、負債扱いにならずに資金調達が可能です。
この点が銀行融資等と異なるファクタリングの大きな特徴です。
負債にならないため、決算書への影響もありません。
たとえば開業資金に銀行から融資を受けている場合、運営資金のためにさらに融資を重ねることは審査に不利になる可能性があります。
しかし、債権の売買であるファクタリングなら、すでに銀行融資を受けていたとしても問題なく利用可能です。
すでにほかのところから融資を受けているときや、今後のために銀行融資枠を残しておきたいときにも、ファクタリングは有効な資金調達方法です。
審査に通りやすい
そもそもファクタリングは、融資やローンに比べて審査に通りやすい特徴があります。
さらに介護報酬ファクタリングは、契約先が公的機関の国保であることから、一般のファクタリングよりもさらに審査に通りやすくなっています。
介護報酬ファクタリングが審査に通りやすいのは、介護報酬を回収できないリスクが限りなく低いことが理由です。
通常、民間企業の取引で債権譲渡後に売掛先企業が倒産等で売掛金を支払えなくなった場合は、譲受先であるファクタリング会社が損害を被ります。
そのため、ファクタリング会社は売掛先企業の業績等を厳格に審査し、問題がある場合には審査落ちとするケースも十分あり得ます。
しかし、介護報酬ファクタリングの場合、売掛先が国保であることから倒産する可能性はまずありません。
ファクタリング会社にとって、介護報酬を回収できないリスクがまったくといっていいほどないため、非常に審査に通りやすいのです。
保証人・担保が不要で利用できる
融資であれば、確実に借入金を回収するために保証人や担保が必要となるケースが多々あります。
しかし、ファクタリングは債権の売買であって融資ではないため、保証人や担保が一切不要で利用可能です。
万が一、ファクタリングであるにもかかわらず担保や保証人を要求された場合は、違法な業者を疑ってください。
違法な業者がファクタリングに見せかけて、貸付契約をさせようとしている可能性が非常に高いためです。
ファクタリング会社と名乗っているのに、担保や保証人を要求される会社とは取引をしないようにしましょう。
介護報酬ファクタリングの2つのデメリット
介護報酬ファクタリングにも、以下のようなデメリットがあります。
- 本来受け取れる金額よりも少なくなる
- 債権額までしか調達ができない
上記のデメリットは、利用前に必ずおさえておきましょう。
本来受け取れる金額よりも少なくなる
ファクタリングを利用して入金される金額は、本来国保から受け取る介護報酬額の約80〜90%となります。
受取金が少なくなる理由は、買取手数料と掛け目にあります。
掛け目とは、ファクタリング業者が回収リスクを避けるために設定している買取可能割合です。
掛け目によって差し引かれた分の金額は、無事にファクタリング会社が介護報酬を回収できた後に介護事業者へ支払われます。
たとえば、売掛債権額が1,000万円で掛け目80%、手数料1%でファクタリングを利用すると仮定します。
この場合、ファクタリング契約後に手元に入る金額は以下のとおりです。
1,000万円ー掛け目(200万円)ー買取手数料(10万円)=790万円
その後、ファクタリング会社が国保から介護報酬を回収できれば、掛け目により差し引かれていた200万円が介護事業者へ支払われます。
後から支払われるものの、掛け目に注意しなければ必要なタイミングで必要な資金が調達できない可能性があるため、掛け目はファクタリング会社を選ぶ際の重要なポイントとなります。
債権金額までしか調達できない
ファクタリングは、介護報酬債権額以上の金額を調達することはできません。
たとえば、事業拡大のために500万円の資金調達をしたいとします。
このとき、介護報酬債権が300万円分しかなかったとしたら、ファクタリングで希望する満額の資金調達はできません。
一方で、銀行融資であれば審査に通り次第500万円の資金調達が可能となります。
ファクタリングは、債権の買取代金が得られる仕組みであるため、債権額を超えるような大きな金額が必要な場合は銀行融資などを検討するようにしましょう。
利用の注意点|長期的な資金繰り改善の計画が必要
介護報酬ファクタリングは、1度使うとその便利さから抜け出すのが難しくなってしまうため注意が必要です。
介護報酬ファクタリングを利用したその時は手元資金が増えて資金繰りが改善されますが、長期的に考えると根本的な財務問題の解決ができていません。
これは介護報酬債権にかかわらず通常のファクタリングにもいえることですが、ファクタリングは2〜3ヶ月先の債権を前借りに近いサービスです。
1度使うと次の介護報酬が入金されるまでの期間が空くため、繰り返し利用してしまい、最終的にはファクタリングに依存した資金計画になる可能性があります。
ファクタリングは、一時的な資金繰りの悪化といったやむを得ない事態に非常に有効な手段ではありますが、一度利用すると元通りのキャッシュフローに戻すのに苦労します。
介護報酬ファクタリングを利用する際は、必ず長期的な資金繰り改善の計画を立てて利用するようにしましょう。
介護報酬ファクタリング会社を選ぶポイント
ファクタリング会社を選ぶときは、以下のポイントを見て検討しましょう。
- 手数料
- 掛け目
- 入金までのスピード
上記のポイントについて、詳しく解説していきます。
手数料|相場は1%未満
介護報酬ファクタリングは、通常のファクタリングよりも手数料が非常に安い点が魅力であるため、提示される手数料が相場よりもあきらかに高い場合は利用を見直しましょう。
多くのファクタリング会社で、介護報酬ファクタリングの手数料は0.25~1%が相場とされています。
介護報酬ファクタリングは、3社間ファクタリングであり、国保との取引であることから信用力が非常に高いのが特徴です。
そのため、介護報酬を回収できないリスクがほとんどなく、通常の3社間ファクタリング以上に安い手数料が実現されています。
ファクタリング業者を選ぶ際には、手数料が相場とかけ離れていないかによく注意しましょう。
掛け目|相場は80%~90%
ファクタリング会社が提示する掛け目が、希望する資金額を満たしているかを確認しましょう。
ファクタリング会社によって定める掛け目はさまざまですが、介護報酬ファクタリングの場合は80%~90%を設定しているところが多いです。
掛け目によって差し引かれた分の金額は、ファクタリング会社が国保から無事に介護報酬を回収できた後に支払われますが、入金されるまでに時間がかかってしまいます。
資金が必要なタイミングで必要な金額を調達できなければファクタリングを利用する意味がないので、希望する資金額を完全にカバーできているかを必ず確認するようにしましょう。
入金までのスピード
介護報酬債権を資金化するスピードは、ファクタリング会社によって異なります。
最短即日で資金化できる会社もあれば、1週間以上かかる会社もあります。
介護報酬ファクタリングを利用するメリットは、介護報酬債権を早期に資金化できる点です。
万が一にも資金を必要とするタイミングに資金化が間に合わないようであれば、ファクタリングを利用する意味がなくなってしまうため、必ず確認するようにしましょう。
介護報酬ファクタリング会社のおすすめ3選
介護報酬債権はすべてのファクタリング会社で取り扱いがあるわけではありません。
ここでは、数あるファクタリング会社の中から介護報酬ファクタリングに強い以下3つの会社を紹介します。
- リコーリース株式会社
- カイポケ
- NSパートナーズ
上記3社について、詳しく解説していきます。
リコーリース株式会社|全国訪問対応のため忙しくても利用しやすい
出典元:リコーリース株式会社
運営会社 | リコーリース株式会社 |
手数料 | 非公開 |
入金までのスピード | 最短5営業日 |
掛け目 | 最大80% |
リコーリース株式会社は、東証プライムに上場している介護報酬ファクタリングに特化した会社です。
リコーリースは介護報酬ファクタリングのみならず、医療・介護機器のリース事業もおこなっており、介護事業者の会計・財務状況に非常に理解があります。
また、全国訪問対応が可能なため、仕事で忙しいときにも利用しやすい点が魅力です。
ただし、手数料が非公開となっているため、見積時に必ず確認するようにしましょう。
カイポケ|介護ソフトの開発を中心に行う企業
出典元:株式会社SMS カイポケ
運営会社 | 株式会社SMS |
手数料 | 最大0.8% |
入金までのスピード | 最短5営業日 |
掛け目 | 最大80% |
カイポケを運営する株式会社SMSは、介護事業を幅広く行っている東証プライム上場企業です。
ケア記録のデータや経営記録、請求書などを一括管理できるクラウド型介護ソフト「カイポケ」を開発しています。
カイポケの大きな魅力は手数料の低さです。
手数料非公開としている業者も多い中、業界最安水準の0.8%以下の手数料で取引ができます。
なるべく安い手数料で取引をしたいと考える事業者は、カイポケを検討してみるのもおすすめです。
NSパートナーズ|医療ファクタリングに特化した取引実績が魅力
出典元:NSパートナーズ株式会社
運営会社 | NSパートナーズ株式会社 |
手数料 | 0.25~1% |
入金までのスピード | 2~3週間 |
掛け目 | 原則85% |
NSパートナーズ株式会社は、医療ファクタリングに特化した東証プライム上場企業です。
買取上限金額を設けていないことから、運営状況等によって高額の介護報酬債権にも対応できます。
注意点としては、契約期間は2年間縛りで、途中解約をすると違約金が発生してしまうことです。
しかし、10年以上の運営から多くの取引実績・事業再生ノウハウを持ち合わせているため、安心して利用できるファクタリング会社といえるでしょう。
介護報酬ファクタリングを有効活用して資金繰りを改善
介護報酬債権は、入金までに約2〜3ヶ月の期間がかかってしまうために資金繰りが厳しくなることが多々あります。
介護報酬ファクタリングは、長期的な資金計画のもとで活用すれば、介護事業者の資金繰り改善に有効な資金調達方法です。
そもそもファクタリングは、会社によってサービス内容や手数料、スピードが異なるため、しっかりと複数社の比較検討をすることが重要です。
介護報酬債権は、すべてのファクタリング会社で取り扱いがあるわけではないので、取り扱いがある中から信頼できる会社を選び、資金繰り改善に役立てましょう。