注文書買取とは、その名の通り注文書(発注書)を業者が買い取って資金化するサービスです。
「借りない」資金調達方法として認知度も高まりつつある注文書買取ですが、その仕組みを詳しくは知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では注文書買取の仕組みをはじめ、利用時の注意点やほかの資金調達方法との違いを解説します。
注文書買取に関心があるけど仕組みがわからないと感じている人は、ぜひ参考にしてください。
注文書買取の仕組み
注文書買取とは、仕事の受注段階で発生する「注文書(発注書)」を、注文書買取サービスを行う事業者が買い取り、資金化するサービスです。
銀行融資のようにお金を借りるのではなく、売掛債権を売却することによって資金を得られる資金調達方法です。
利用者は、買い取り審査に通過した発注書の金額から、買取手数料を差し引かれた金額を受け取り、人件費や設備費などの仕事上必要な経費に充てられます。
注文書買取は通常ファクタリング(請求書ファクタリング)から派生して生まれたサービスです。
通常ファクタリングはサービス・商品納入後の請求書を買い取る一方、注文書買取は発注書を買い取るため、仕事着手前の資金化が可能です。
さらに通常ファクタリングは最大30~60日前倒しでの資金調達が可能ですが、注文書買取は最大で180日前倒しで調達が可能なため、入金サイクルを大幅に短縮できます。
申込から売掛金入金までの流れ
注文書買取の申込から取引完了までの一連の流れを解説します。
- 申込・審査
仕事受注時に交わした注文書(発注書)と各業者ごとに必要な審査書類等を用意します。注文書がない場合は、取引先からのメール等による仕事の指示でも審査してもらえる場合もあります。 - 資金の入金
買取手数料を差し引かれた金額が、注文書買取業者から支払われます。 - 仕事上必要な経費に充てられる
得られた資金を仕事上必要な経費(人件費や設備費等)に充てられます。 - 仕事完了
サービス・商品を納入して仕事が完了します。 - 売掛金の回収後、注文書買取業者へ送金
売掛先から売掛金が支払われたら、注文書買取業者へ送金して完了です。
2社間契約であることが基本
注文書買取の契約形態は、利用者と注文書買取業者間で完結する2社間契約が基本です。
通常ファクタリングには、2社間契約と3社間契約の2種類の契約形態があります。
3社間契約とは「利用者」と「注文書買取業者」と「取引先」の3社でおこなわれ、ファクタリング利用の事実を取引先に通知する、もしくは承諾を得て取引をします。
一方で、2社間契約は「利用者」と「注文書買取業者」のみで契約するため、取引先に知られずに利用可能です。
注文書買取は、基本的に2社間契約で行われます。
取引先に承諾を得るステップが不要なため、最短で即日の資金調達が可能なうえに、資金繰りがうまくいっていないのでは?と取引先から勘繰られる心配もありません。
しかし、取引先に承諾を得ないということは、注文書買取業者にとってはリスクが高くなるため手数料が高く設定される場合があります。
償還請求権がないノンリコース契約である
注文書買取は、償還請求権がないノンリコース契約が基本です。
償還請求権はリコースとも呼ばれ、取引先が倒産等の理由によって売掛金が回収できなかった場合に、注文書買取業者から利用者へ回収金額を請求する権利のことをいいます。
償還契約(リコース)がない、つまりノンリコース契約とは、売掛先が倒産するなどの理由で売掛金を回収できなかった場合でも、利用者は責任を一切負わない契約です。
利用者としては、万が一売掛金を回収できなかったとしても返済義務がないため安心して取引できます。
注文書買取のメリット
注文書買取の最大のメリットは、なんといっても資金化のタイミングが非常に早い点です。
仕事の受注段階で発生する注文書を買い取るため、仕事に取り掛かる前に資金を得て、サービス・商品納入に必要な人件費や設備費等に充てられます。
さらに最大で180日先の発注書が買い取り対象であるため、最大半年かかる入金サイクルを最短即日に受け取れるのです。
これまで資金不足で諦めざるを得なかった大型案件も受注できるようになるため、事業拡大の一助となります。
注文書買取のデメリット
注文書買取のデメリットは「未回収リスク」が高いため、通常ファクタリングよりも手数料が高く審査が厳しいことです。
未回収リスクとは、売掛先の倒産等の理由により、売掛金が回収できなくなるリスクをいいます。
通常ファクタリングは仕事完了後の請求書を買い取り、売掛金の入金を1〜2カ月ほど待つのみです。
しかし注文書買取は仕事が未完了状態の注文書を買い取った後、売掛金が入金されるまで長い期間を待たなければなりません。
売掛金の入金を待つ期間が長ければ長いほど、売掛先が倒産したり資金ショートに陥ったりするリスクが高まります。
注文書買取業者はこうした未回収リスクに備えるために、注文書買取の手数料を高く設定し、厳しく審査をしています。
注文書買取利用時の注意点
注文書買取を利用する時の注意点は主に以下の2点です。
- 主な審査対象は取引先
- 取り扱い業者が少ない
主な審査対象は取引先
注文書買取業者が主に審査するのは、利用者よりも取引先です。
注文書買取業者としては、確実に資金を回収できることを重視します。
そのため利用者よりも売掛金の支払元である取引先の財務状況を厳しく審査されるのです。
業績が安定していない取引先や設立して間もない取引先、個人等は審査落ちする可能性が高まります。
確実に審査通過するためには、国や地方団体、大手企業などの業績が安定している企業との注文書を提出すると審査通過の確率が高まるでしょう。
取り扱い業者が少ない
注文書買取は2020年頃から始まり、まだまだ取り扱い業者が少ないサービスです。
取り扱い業者が少ないため、安心できるだけの利用実績がなかったり、サービス内容の比較検討が難しかったりと、利用者にとっては不安に感じる部分も多くなります。
まだまだ発展途中のサービスであることを理解したうえで利用するようにしましょう。
各資金調達方法との違いを比較
通常ファクタリング・銀行融資との違いを比較していきます。
注文書買取 | 通常ファクタリング | 銀行融資 | |
---|---|---|---|
調達方法 | 売掛債権の売買 | 売掛債権の売買 | 融資 |
業者 | 民間事業者(貸金業登録不要) | 民間事業者(貸金業登録不要) | 銀行・貸金業者 |
資金化のタイミング | 仕事着手前 | 仕事完了後 | 申込から約1週間~1か月後 |
申込から資金化までのスピード | 最短即日~数日 | 【2社間】最短即日
【3社間】数日~1週間 |
2週間~1か月 |
主な審査対象 | 取引先 | 取引先 | 利用企業 |
手数料または借入金利 | 【手数料】通常ファクタリングの手数料プラス2~5% | 【手数料】約5~20% | 【借入金利】約2%(返済期間等によって変動) |
通常ファクタリングと比較
通常ファクタリングとの最大の違いは資金化のタイミングです。
通常ファクタリングは「請求書」を買い取るため、資金化のタイミングは仕事完了後となります。
一方で注文書買取は「注文書(発注書)」を買い取るため、仕事の受注段階で資金化が可能です。
ただし、注文書買取業者にとっては売掛金回収までの期間が長い注文書買取の方が未回収リスクが高いと判断されます。
そのため手数料は注文書買取の方が高く設定される傾向にあるのです。
銀行融資と比較
銀行融資との最大の違いは「借りる」か「借りない」かです。
銀行融資は銀行からお金を借りることで資金を調達する方法ですが、注文書買取を含むファクタリングサービスは売掛債権の売買であるため、お金を借りずに調達できます。
注文書買取は借りない資金調達方法であることから、信用情報を傷つけることなく利用可能です。
設立直後の企業や、すでに銀行融資を受けている場合でも安心して利用できます。
注文書買取は大型案件受注時に向いている
注文書買取は、高い手数料以上の利益を見込める大型案件、もしくは通常ファクタリングでは資金調達が間に合わない大型案件に出会ったときに利用しましょう。
注文書買取は仕事の受注段階で利用できるため、非常に早いタイミングでの資金化が可能です。
しかし、手数料は通常ファクタリングよりも高く設定されています。
便利なサービスだからといって、やみくもに利用していては手数料で大きく損してしまうケースもあります。
したがって、手数料以上の利益を確実に見込める案件であったり、通常ファクタリングでは対応しきれない場合であったりと、状況を冷静に見極めて利用するようにしましょう。
まとめ
注文書買取は通常ファクタリングとは違い、注文書を買い取ってもらうことで早期の資金化が可能です。
これまでは資金不足で諦めざるを得なかった案件も受注できるようになり、事業拡大の一助となります。
注文書買取を利用するときは、仕組みや注意点を理解したうえで活用しましょう。