国や地方自治体にはさまざまな補助金や助成金が用意されています。
補助金や助成金には返済の義務がないので、上手に活用することで低コストで設備投資などを行えます。
しかし「補助金と助成金の違いが分からない」「どんな資金を利用できるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
補助金と助成金では受給できる基準や目的や金額が大きく異なるので、適切に使い分けて受給しなければ、場合によっては法令違反になることもあるので注意が必要です。
この記事では補助金と助成金の違いを解説します。
中小企業や個人事業主などのスモールビジネスに向いている資金も紹介しますので、補助金や助成金による資金調達を検討されている方はぜひご覧ください。
補助金と助成金の4つの共通点
まずは補助金と助成金の共通点から理解していきましょう。
主には次の4つの共通点があります。
- 国や自治体などの公的機関から支給される
- 支払いは後払い
- 返済義務はない
- 受け取った金額は所得になる
簡単に言えば、公的機関が支給する返済義務のない資金ですが、支払いは後払いで受け取った金額は所得になります。
補助金と助成金の4つの共通点について、詳しく見ていきましょう。
国や自治体などの公的機関から支給される
補助金も助成金も国や自治体などの公的機関から支給されるものです。
国や自治体が、政策目標を叶えるために必要な資金を、民間事業者に対して支給します。
日本財団などの民間団体も補助金の支給を行ってはいますが、民間団体が支給する補助金は基本的には福祉関係などの非営利事業者に支給するものに限られています。
営利企業が受け取れる補助金や助成金は基本的に国や自治体などの公的機関から支給されるものだと理解しておきましょう。
支払いは後払い
補助金の支払いは後払いが原則です。
そのため、補助事業に必要な経費はあらかじめ手元に用意して、支払いを先に済ませておかなければなりません。
例えば、補助率80%の補助金を使って500万円の事業を行う場合は以下のような流れになります。
- 500万円の事業にかかる経費を支払う
- 支払済の経費の領収書を使用して補助金の支給を申請する
- 500万円の80%である400万円が後から支給される
補助金も助成金も後払いですので、あらかじめ事業に必要な経費の全額を手元に用意しなければなりません。
補助されない分だけ手元に用意すればよいわけではないので注意しましょう。
返済義務はない
補助金も助成金も返済義務はありません。
借入とは異なるので、支給されたお金は全額使用できます。
ただし、何に使ってもよいわけではなく、補助金や助成金を申請した際に目的とした事業にしか使用できません。
返済義務はないので補助金や助成金を利用すると、財務状況を毀損することなく必要な設備投資等を行えるのがメリットです。
ただし、受け取った後、事業の実施状況などについて報告を求められることがあります。
受け取った金額は所得になる
補助金や助成金を受け取った金額は所得になります。
雑所得に分類されるので、所得に対して課税されるので注意してください。
なお、補助金や助成金を受け取った際の仕訳は以下の通りになります。
例)補助金1,000万円の支給が決定した
借方 | 貸方 |
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未収入金 1,000万円 | 雑収入 1,000万円 |
例)補助金1,000万円が行政から支給された
借方 | 貸方 |
---|---|
預金 1,000万円 | 未収入金 1,000万円 |
補助金や助成金は、支給決定から支給までのタイムラグがあるのが一般的です。
そのため、支給決定から支給の間に決算を跨いでしまうことも珍しくありません。
このような場合、まだ入金になっていない補助金や助成金については「未収入金」という勘定科目を使用して資産計上し、貸借対照表に記録しておきます。
補助金と助成金の7つの違い
補助金と助成金は返済義務のない公的な資金で、後払いで支給される点は同じです。
しかし、次の7つの点では大きな違いがあります。
- 目的
- 管轄
- 財源
- 支給金額
- 資金使途
- 公募期間
- 支給基準
補助金と助成金の7つの違いについて詳しく解説していきます。
補助金と助成金の違い①目的
補助金と助成金では支給目的が以下のように異なります。
補助金 | 新規事業・起業・研究開発 |
---|---|
助成金 | 労働環境改善や人材育成 |
補助金の目的は新規事業や起業支援、さらに研究開発の後押しをすることが主な目的です。
例えば、伝統産業支援からクールジャパン振興、IoT・ロボット開発などを支援するために支給される補助金も存在します。
また、新規市場開発、地域での起業支援などの、特定の政策目標を叶えるために支給されることが多くなっています。
一方、助成金は主に人に対して行われるものが多くなっています。
会社の労働環境を改善したり、若い従業員や外国人労働者を育成するための支援も行われます。
例えば、雇用維持、新規採用、中途雇用、人材育成、Uターン・Iターン・Jターン雇用、障害者の定着支援の他、就業規則改善や介護・育児休暇の取得などの目的に支給されます。
コロナ禍で多くの事業者が従業員の雇用を維持するために使用した「雇用調整助成金」などが代表的です。
補助金と助成金の違い②管轄
補助金と助成金では管轄も異なります。
補助金 | 経済産業省や自治体 |
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助成金 | 厚生労働省 |
補助金は主に事業者育成や研究開発などの経済や産業の発展を目的として支給されるので、基本的な管轄は経済産業省です。
経済産業省管轄の独立行政法人や中小企業庁も補助金の支給や管理を行っています。
この他、自治体が実施している補助金の場合には、地方自治体が支給や管理を行います。
一方、主に労働者のために支給されることが多い助成金は厚生労働省が支給します。支給先は厚生労働省が管轄している地方自治体の労働局となっています。
補助金と助成金の違い③財源
補助金と助成金の3つめの違いは税源です。
補助金 | 税金 |
---|---|
助成金 | 雇用保険料 |
補助金は特定の政策目標を叶えるために、国や地方自治体で予算を編成して支給されます。
補助金は税金を使用して支給されるものです。
一方、助成金は事業者が支払っている雇用保険料を財源として支給されています。ただし一部の助成金には税金が使用されることもあります。
補助金と助成金の違い④支給金額
補助金 | 100万円〜数億円 |
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助成金 | 10万円〜100万円程度 |
補助金と助成金は支給金額はかなり異なります。
補助金や新規事業支援や市場開拓や研究開発など、大きな設備投資などが必要になる事業に対する補助を行うので支給額も高額です。
そのため支給金額は補助金によっては上限が1億円を超えるような場合もあります。
事業規模によって補助額は異なりますが、一般的にスモールビジネスが受け取れる補助金は数百万円〜数千万円程度になると理解しておきましょう。
一方、助成金は人材開発や雇用支援など、従業員1人に対して支給されるものですので、従業員1人あたり数十万円〜100万円程度と、それほど高額になることはありません。
ただし、多くの従業員を雇用している場合は、会社全体として高額な助成金を受け取れる場合もあります。
補助金と助成金の違い⑤資金使途
補助金と助成金は、支給されたお金の使い道についても以下のように異なります。
補助金 | 事業に必要な経費に幅広く使用できる |
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助成金 | 人材関連の使い道に狭く分類されている |
補助金は補助対象になる事業を支援するものですので、資金使途も非常に幅広く、補助対象事業の広告宣伝費や機械設備費、人件費、外注費など、あらかじめ申請しておけば幅広く利用が可能です。
一方、助成金は労働者の賃料、スキルアップのための研修費、資格取得費用、外部講師への謝金、生産性向上のための設備投資など、目的がかなり詳細に決められています。補助金のように幅広く使用することはできません。
補助金と助成金の違い⑥公募期間
補助金と助成金は公募期間(資金の支給に応募できる期間)にも違いがあります。
補助金 | 1週間~1か月程度の短期間限定 |
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助成金 | 通年 |
補助金は申請期間が定められており、一般的には1週間〜1ヶ月程度の申請期間の間に申請しなければなりません。
予算が余れば第2回、第3回と公募を受け付けますが、予算が終了次第公募はできなくなるので、早めに申請する必要があります。
一方、助成金は基本的にいつでも受け付けています。
補助金のように経済情勢や時代に合わせて常に制度が新設されるものではなく、助成金は基本的に恒常的に支援する制度としていつでも用意されているためです。
そのため、必要性が生じた時にいつでも申請できます。ただし、助成金も年度内の予算がなくなったら受付終了で、次の申請は翌年度以降になることも多いので、早めに申請した方がよいでしょう。
補助金と助成金の違い⑦支給基準
補助金と助成金は支給されるかどうかの基準も異なります。
補助金 | 採択されなければ支給されない |
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助成金 | 条件に合致すれば必ず支給される |
補助金は申請した後に採択されるかどうかが決まります。
申請した事業や投資の内容に実現可能性があり、政策目的に適ったものであれば採択される可能性がありますが、そうでない場合は採択されないこともあります。
また補助金の予算が大きな場合には、採択率が高くなりますが、予算が限られているのであれば採択率は低くなり、場合によっては10%未満しか採択されない補助金もあります。
一方、助成金は内容を審査されるということはありません。
助成金が支給される条件に合致していれば基本的に誰でも受給できます。
ただし、予算には限りがあるので早い者勝ちという側面もあります。
補助金と助成金では必ず受け取れるかそうでないかという大きな違いもあります。
補助金・助成金の利用時の注意点
補助金と助成金を利用する際にはいくつか注意点もあります。
- 補助金も・助成金も支払いは後払い
- 事業期間外の支出には支給されない
- 申請から支給まで時間がかかる
- 補助金・助成金の使い方を違反すると罰則がある
- 書類を完備しないと支給されないことがある
- 受給すると行政機関の検査が入ることがある
後払いで支給されるためあらかじめ資金の用意が必要になるという以外にも、使い方や書類の用意には十分注意する必要があります。
補助金や助成金を利用する際の6つの注意点について詳しく解説していきます。
補助金も・助成金も支払いは後払い
補助金も助成金も支払いは後払いです。
最初に会社の方で補助や助成対象になる経費を支払い、支払った金額の全部または一部に対して補助や助成を受ける流れになります。
そのため、補助対象経費を支払う現金はあらかじめ用意しておかなければなりません。
例えば、150万円の補助対象経費に100万円の補助を受ける場合、最初に150万円の支払いを済ませ、後から100万円の補助金が振り込まれる流れです。
手元に自己負担分の50万円だけ用意しておけばよいわけではないため注意しましょう。
事業期間外の支出には支給されない
補助金や助成金には事業開始日と事業終了日という期間が設けられています。
補助や助成対象になるのはこの期間内に支出した経費のみで、期間前に支出したものや期間を過ぎて支出したものに対しては支給を受けられません。
つまり、補助金を申請して採択され、事業の実施期間が決まってからの支出でないと補助対象にはなりません。
中小企業や個人事業主などのスモールビジネス事業者は、この期間を間違えて支出してしまい「補助金が支給されなかった」というミスがよくあります。
必ず「補助対象期間はいつか」を確認し、期間内に支出するようにしてください。
申請から支給まで時間がかかる
補助金や助成金は申請から支給まで時間がかかります。
補助金は厳しい採択が行われるので、申請から採択まで2ヶ月〜3ヶ月程度かかり、支給は事業完了後になるので1年程度先になることもあります。
また助成金もハローワーク等に申請してから6ヶ月〜8ヶ月程度の時間がかかり中には1年以上の時間がかかることも珍しくありません。
補助金や助成金の審査には膨大な書類が必要になり、これらの書類に不備があると、差し戻しとなり、手続きに時間がかかってしまうこともしばしばです。
補助金や助成金の受給には時間と手間がかかることをしっかりと認識し、根気強く丁寧に申請を行うことが大切です。
補助金・助成金の使い方を違反すると罰則がある
補助金や助成金を申請した内容とは異なる用途に使用すると法律違反となり、罰則が課されることもあります。
補助金を不正受給すると「補助金適正化法」に抵触するので、交付後であっても決定取り消しや返還を求められることがあります。
また、悪質な場合には、詐欺罪で告発されて逮捕されることもあるので、絶対に補助金や助成金の不正受給をしないでください。
書類を完備しないと支給されないことがある
補助金も助成金も申請に必要な書類を用意しないと支給されません。
採択された後に給付申請を行う際には「確かに申請した事業に支払った」ということを証明するために「事業の報告書」や「振込票の控え」などの提出が求められます。
これらの書類を用意できない場合には、補助金の支給が受けられないことがあります。
あらかじめ給付申請に必要な書類を確認し、不備のないように用意しましょう。
受給すると行政機関の検査が入ることがある
補助金や助成金を受給すると、会計検査院などの行政機関の検査が入ることがあります。
税金や労働保険料を原資に支給される補助金や助成金ですので、給付したお金が適正に使用されているか会計検査院は確認を行っています。
ルール通りに諸経費の支払いを行い、適正な事務処理が行われているかのチェックを行い、もしもルールに違反していると判断される場合には、指摘が入ることもあるでしょう。
補助金や助成金を受給したら、行政機関のチェックが入るかもしれないことを念頭に置いて、ルール通りに適切に処理を行いましょう。
なお、補助金や助成金関係の資料や帳票類は5年間の保存が義務付けられているので、必ず保管しておくようにしてください。
事業者が助成金を受給できない原因とは
助成金は基本的に条件に合致さえしていれば、誰でも受給できるものです。
しかし労働保険を受給するには「当該事業者が労働関係の法令を遵守していること」が条件です。
そのため、次の3点のいずれかに該当してしまうと受給できない可能性が非常に高いため注意しましょう。
- 過去3年以内に不正受給をした
- 労働保険料を滞納している
- 過去1年以内に労働関連法令に違反している
事業者が助成金を受給できない3つの原因について詳しく解説していきます。
過去3年以内に不正受給をした
過去3年以内に助成金の不正受給をしたことがある場合には、いくら助成金の受給条件に合致していたとしても、助成金の支給対象にはなりません。
不正受給が指摘されて、取り消しや返還を行ってから3年超経過後であれば、再度受給できる可能性があります。
労働保険料を滞納している
労働保険を滞納している事業者も助成金は支給されません。
厚生労働省が管轄している助成金の原資は労働保険料です。
そのため原資になる保険料をおさめていない事業者は、助成金の支給は受けられません。
いざという時に確実に助成金を受給できるよう、労働保険料は必ず納めておきましょう。
過去1年以内に労働関連法令に違反している
過去1年以内に労働関連法に違反して処分を受けている事業者も助成金の受給はできません。
助成金の目的は「労働環境の整備」です。
そのため、労働関連法令に違反している事業者は、労働環境をむしろ乱していると判断できるので、そのような事業者に対して助成金の支給は行っていません。
なお、労働関連法令には次のようなものがあります。
- 労働基準法
- 労働契約法
- 次世代育成支援対策推進法
1年以内にこれらの法令に違反したことがある事業者は助成金を受給できないので注意しましょう。
小規模事業者が使いやすい補助金・助成金
中小企業や個人事業主など、スモールビジネスでも利用しやすい補助金や助成金を具体的にご紹介していきます。
小規模事業者におすすめの補助金3選
中小企業や個人事業主におすすめの補助金は次の3つです。
- IT導入補助金
- 持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)
- 事業承継・引継ぎ補助金
それぞれの補助金の概要や利用条件を詳しく解説していきます。
IT導入補助金
IT導入補助金とは企業が生産性向上などを目的としてIT機器を社内に導入する際の経費の一部を補助するものです。
事業の概要は以下の通りです。
目的 | 事業者が抱える業務上の課題やニーズに合ったITツールを導入する際の経費の一部を補助 |
---|---|
補助率 | 通常枠・セキュリティ対策推進枠:1/2以内
デジタル化基盤導入枠:3/4以内(50万円以下)2/3以内(50万円超) ハードウェア購入費:1/2以内 |
補助金額 | 通常枠A型:5万円~150万円未満
通常枠B型:50万円~450万円以下 セキュリティ対策推進枠:5万円~100万円 デジタル化基盤導入枠:350万円以下 ハードウェア購入費:20万円以内 |
ソフトウェア、クラウドサービス導入にかかる経費のほか、パソコンやタブレットなどの購入費用も対象になります。
持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)
中小企業が販路開拓や生産性向上など、持続化に向けた新たな取り組みを行う際にかかる経費を補助するものです。
目的 | 小規模事業者の持続的な経営への取り組みを支援 |
---|---|
補助率 | 2/3以内
賃金引上げ枠のうち赤字事業者:3/4 |
補助金額 | 通常枠:50万円
賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠:200万円 |
申請の際には自社の経営を見直した経営計画を作成し、販路開拓や生産性向上を実現する事業を行う必要があります。
持続化補助金では、販路開拓や生産性向上を実現する事業の経費を2/3または3/4補助します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継を行う際に必要な経費を補助する補助金です。
目的 | 事業承継のタイミングで、新しい事業を行う場合や、M&Aや再編などを行う事業者を支援する |
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補助率 | Ⅰ型:2/3
Ⅱ型:2/3 |
補助金額 | Ⅰ型:50万円〜200万円
Ⅱ型:50万円〜650万円 |
新たな事業を行う場合にかかる経費である外注費やシステム利用料などに使用できますし、古い会社を廃業する際の費用である廃業登記費、在庫処分費、解体費なども補助対象経費に含まれ、事業承継にかかる幅広い支出が補助対象となっています。
小規模事業者におすすめの助成金5選
中小企業や個人事業主には次の5つの助成金もおすすめです。
- 雇用調整助成金
- キャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金
- 働き方改革推進支援助成金
- 業務改善助成金
これらの助成金はスモールビジネスでも条件に合致さえすれば比較的容易に受け取れます。
小規模事業者におすすめの5つの助成金の概要を詳しくご紹介していきます。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経営悪化などによって雇用の継続が難しい場合に、一定期間、人件費の一部の助成を受け、雇用を継続させる制度です。
コロナ禍においてはよく利用された助成金です。
通常時の受給額は次の通りです。
助成内容と受給できる金額 | 上限額 | 助成率 |
---|---|---|
休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額 | 対象労働者1人あたり8,490円 | 中小企業:2/3
中小企業以外:1/2 |
キャリアアップ助成金
有期労働者、短時間労働者、派遣労働者など非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するための助成金です。
具体的には非正規雇用の従業員の、正社員化や処遇改善を行った場合に、その経費の一部を補助します。
キャリアアップの内容によって次の7つのコースに分かれています。
- 正社員化コース:有期雇用労働者等を正社員化
- 障害者正社員化コース:障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換
- 賃金規定等改定コース: 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額
- 賃金規定等共通化コース:有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を
- 賞与・退職金制度導入コース:有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し支給 または積立てを実施
- 短時間労働者労働時間延長コース:有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用
- 社会保険適用時処遇改善コース:有期雇用労働者等に新たに社会保険を適用させるとともに、労働者の収入を増加させる
人材開発支援助成金
従業員の能力向上を実現するための必要な事業を行う際に助成される資金です。
具体的には、正社員の職業能力、キャリアアップを図り生産性の向上などを支援する目的があります。
次のようなコースに分かれています。
- 人材育成支援コース:雇用する被保険者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
- 教育訓練休暇等付与コース:有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
- 人への投資促進コース:デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
- 事業展開等リスキリング支援コース:新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
- 建設労働者認定訓練コース:認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成
- 建設労働者技能実習コース:雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
- 障害者職業能力開発コース:障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるため、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う場合に、その費用を一部助成
働き方改革推進支援助成金
企業が働き方改革を実践する場合にかかる費用を助成するものです。
労働時間を短縮したり、有給休暇の取得促進などを実現すると補助を受けられ、具体的には次のいずれかの取り組みを実施すると補助を受けられます。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
業務改善助成金
従業員の賃金アップを目的として、設備導入や賃金引き上げなどによる業務改善を図る中小規模の事業者に対して助成する制度です。
生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」が補助対象経費となり、事業所内の最低賃金の引き上げ額が大きいほど多くの助成を受けられます。
補助金・助成金は後払い!つなぎ資金を確保する方法
補助金も助成金も後払いです。
そのため、支給されるまでは自社で必要経費を支払わなければなりません。
補助金や助成金が支給されるまでのつなぎ資金を確保する方法は次の4つです。
- 銀行融資
- 自己資金
- ファクタリング
- 補助金によっては前払い制度を利用できるものも
それぞれ、具体的にどのようにして必要資金を確保すべきなのか詳しく解説していきます。
銀行融資
銀行から補助金や助成金が支給されるまでのつなぎ資金を借りることは可能です。
補助金や助成金は、一度採択されると支給される可能性が非常に高い資金です。
つまり、銀行にとっては融資金を回収できる可能性が非常に高い資金と判断できるため、補助金や助成金の採択さえ通っていれば審査に通過できる可能性はかなり高いでしょう。
申し込みの際には、補助金や助成金の採択通知書、事業計画書などを持参してください。
なお、補助対象にならない自己負担分の融資を受けることも可能です。
つなぎ資金は短期資金、自己負担分は長期資金で借り入れて、長期間かけて返済していくのが一般的です。
補助金や助成金のつなぎ資金は銀行にとって回収可能性が非常に高いため、1%台の低金利で借りられる可能性があります。
資金調達コストが低いのも銀行融資の魅力です。
また、銀行は補助金や助成金の申請段階からサポートをしてくれる場合があります。
補助金や助成金を受給したい場合には、銀行に「事業計画などをどうすればいいか」と相談するのもよいでしょう。
自己資金
手元に資金がある場合には自己資金を使用して、補助対象経費を支払うこともできます。
利息はかかりませんし、銀行との借入の手続きも必要ないので、最もスムーズな方法です。
同じく、経営者や役員に預金があるのであれば、役員借入金などで補助対象経費を支払うことでも負担や手間を抑えてつなぎ資金の支払いができます。
ただし、補助金や助成金は申請から支払いまでに1年以上の時間がかかることもあるので、必要な資金を支払いに回すことは避けましょう。
余裕資金のみをつなぎ資金の支払いに充てるようにしてください。
ファクタリング
ファクタリングとは売掛債権の売却です。
期日前の売掛債権をファクタリング業者へ売却して早期に資金化を図ることができます。
補助対象経費を超えるような金額の売掛債権を手元に持っているのであれば、ファクタリングによって資金調達して補助対象経費を支払うこともできます。
ファクタリングは売掛先企業の業況が審査対象になります。そのため自社の業況が悪く銀行からつなぎ資金の融資を受けられない場合にも資金調達できる可能性が高い方法です。
また、ファクタリングは最短即日で資金調達できるので、銀行融資が遅れて「事業期間内の支払いに間に合わない」という急ぎの場面でも、ファクタリングであれば必要資金を調達して期間内に支払いができる可能性があります。
ただし、ファクタリングの手数料は2社間の場合は、10%〜20%程度と非常に高額になるので、銀行融資でつなぎ資金を調達できない場合のみ利用した方がよいでしょう。
補助金によっては前払い制度を利用できるものも
補助金によっては先に補助金を前払いで受給できるものもあります。
例えば、事業再構築補助金には「概算払い」という制度があります。
概算払いとは、補助金の一部を先に支払ってもらえる制度で、事務局が必要があると認めた経費に限っては前払いで受け取れます。
事業再構築補助金のように、金額が大きくなる補助金については、概算払いが認められるものも多いので、前払いできる資金が手元にない場合などは概算払いができないか補助金事務局などに確認してください。
補助金と助成金の違いについてのQ&A
補助金と助成金の違いや概要について、よくある質問をご紹介していきます。
給付金・交付金・負担金・委託金との違いを教えてください
それぞれの違いは次の通りです。
- 給付金:国や自治体が主に個人へ支給するもの補助金・助成金のように事業者へは給付しない
- 交付金:国などが特定の目的のもとに交付する金銭を広く指す言葉。補助金も交付金の1つ
- 負担金:特定の事業について、地方公共団体が当該事業から特別の利益を受けることに対して一定の金額を支出するもの
- 委託金:行政が実施主体の事業を民間業者などに委託する際の対価として給付するもの
補助金や助成金を受け取った時の会計処理の方法を教えてください
補助金や助成金を受け取った際には、「雑収入」という収益として計上します。
補助金や助成金の採択が決まった段階で借方には「未収金」という資産を計上し、貸方に「雑収入」という収益を計上します。
実際に補助金や助成金が入金になった時には、借方に「預金」貸方に「未収金」を計上し、未収金を取り崩します。
補助金や助成金は個人事業主でも受け取れますか?
基本的には開業届を提出し、法律に基づいている個人事業者であれば受け取れます。
ただし、補助金にはそれぞれの要件があり、資金によっては「資本金〇〇万円以上の法人」などと支給条件が決まっている場合があります。
補助金によっては個人事業主では受け取れないものもあるので、申請する前に要件を確認しましょう。
まとめ
補助金と助成金の違いは主に次の7点です。
- 目的
- 管轄
- 財源
- 支給金額
- 資金使途
- 公募期間
- 支給基準
利用する事業者にとっての最も大きな違いは支給基準で、助成金は制度の条件に合致さえしていれば必ず支給されますが、補助金は採択に通過しないと受給できません。
また、双方ともに基本的には支払いは後払いですので、補助対象経費は全額自己資金や借入によって用意しておかなければなりません。
補助金も助成金も返済不要ですので、上手に活用することで財務的な負担なく、企業経営が円滑化して業績アップが期待できます。
まずは補助金や助成金の制度の該当を理解して、適切に活用することを心がけましょう。