手形や小切手の債務不履行を意味する「不渡り」は、金融機関や取引先の信用を大きく損ねるだけでなく、銀行取引停止による倒産の原因にもなります。よって、不渡りとは何か、不渡りを出すとどうなるかなどをきちんと理解しておくことが重要です。
この記事では、不渡りとは何かについて、その種類や金融機関がとる対応、振出人・受取人に及ぼす影響などを解説します。また、不渡りを未然に防止する方法や、不渡りが出てしまいそうな時の回避方法なども併せて解説します。
不渡りとは
不渡りとは、手形や小切手が何らかの理由で換金できなくなることをいいます。
ここで手形・小切手とは、金融機関で現金と交換できる有価証券のことです。手形は支払期日が来ないと現金化できないのに対して、小切手は発行後すぐに現金化できる違いがあります
取引の際に相手方から手形や小切手を受け取った時は、それを金融機関に持っていけば、記載されている金額を受け取ることができます。そして、手形や小切手を発行した事業者の当座預金口座から、相当する金額が引き落とされます。
手形や小切手を使うと、手元に現金がない時でも取引ができるのが利点です。手形による取引は近年は減少傾向ですが、業種によってはまだ利用されています。
手形や小切手は、それを発行した者(振出人)の口座残高が不足していると、金融機関に持って行っても換金してもらえず、不渡りとなります。
不渡りの種類
不渡りは振出人の口座残高が不足している時に起こることが多いですが、それ以外の理由で起こることもあります。
そのため、不渡りは発生する原因によって「0号不渡り」「1号不渡り」「2号不渡り」の3種類に分類されており、種類によって金融機関がとる対応が違ってきます。
ここでは、これら3種類の不渡りについて解説します。
0号不渡り
0号不渡りとは、振出人の信用力とは関係のない理由で発生する不渡りです。
例えば、手形・小切手の記載内容の不備や、支払期日がまだ来ていないのに換金しようとした場合、または呈示期間が過ぎてしまった場合などが該当します。
ここで呈示期間とは、手形・小切手の換金を銀行に請求できる期間のことです。手形は支払期日の翌2営業日まで、小切手は振出日の翌日から10日間までとなっています。
呈示期間を過ぎても、手形や小切手がすぐさま紙切れになるわけではありませんが、換金の手続きが面倒になることがあります。
1号不渡り
1号不渡りとは、振出人の支払い能力の不足などで起こる不渡りのことです。口座残高が足りない場合や、口座を解約してしまった場合などが該当します。
単に「不渡り」と言う時は、1号不渡りを意味することが多いです。
2号不渡り
0号不渡り、1号不渡りいずれにも該当しない不渡りは、全て2号不渡りに分類されます。
2号不渡りの典型例は、手形・小切手の紛失・盗難・偽造などで換金できないケースです。他にも、取引先に手形・小切手を発行したが、契約通りの納品物が納品されなかった場合なども該当します。
不渡りを出した時の金融機関の対応
不渡りを出した時に金融機関がどう対応するかは、不渡りの種類によって違ってきます。特に、不渡届が提出されるか、銀行取引停止になるかは重要なポイントです。
ここで不渡届とは、手形や小切手の不渡りがあった時に、金融機関が電子交換所(旧「手形交換所」)にその旨を報告する書面です。
そして電子交換所とは、各金融機関の手形・小切手の決済をまとめて取り扱う機関のことです。電子交換所の運営ルールは「電子交換所規則」で定められており、不渡届をいつ提出するか、いつ銀行取引停止になるかもこの規則に従います。
不渡届が提出されると、ほぼすべての金融機関に不渡りの事実が知らされます。よって、たとえ銀行取引停止にならなくても、資金繰りに大きな悪影響を及ぼすことは避けられません。
ここでは、0号不渡り、1号不渡り、2号不渡りそれぞれの場合について、金融機関がとる対応を解説します。
0号不渡りの場合
0号不渡りは振出人の信用と関係がないため、金融機関が不渡届を出すことはなく、取引も停止されません。
1号不渡りの場合
1号不渡りは振出人の資金不足で起こるため、金融機関は電子交換所規則に従って対処をとります。1号不渡りへの対応は、1度目の不渡りと2度目の不渡りで違ってきます。
1度目の1号不渡り
1度目の1号不渡りが出た場合、金融機関はその旨を不渡届で電子交換所に報告します。不渡届は電子交換所に加盟している金融機関に通知され、信用に問題がある事業者であることが周知されます。
電子交換所はたいていの銀行や信用金庫などが加盟しているため、不渡届の提出は資金繰りに大きな悪影響を及ぼします。ただし、1度の不渡りでは銀行取引は停止されず、口座も引き続き使うことができます。
2度目の1号不渡り
1度目の1号不渡りを出した後、6ヶ月以内に2度目の1号不渡りを出すと、2年間の銀行取引停止処分となります。
銀行取引停止処分になると、当座預金口座を使うことができなくなり、融資も受けられなくなります。もちろん、手形や小切手の振出しもできません。
ほとんどの事業者は銀行取引なしで事業を営むのは困難なため、2度目の1号不渡りは「事実上の倒産」と呼ばれることもあります。
1度目の不渡りから6ヶ月以上経っている場合は、銀行取引停止にはなりません。しかし、何度も不渡りを出していることが加盟金融機関に知られるため、新たな融資を受けるのが難しくなります。
2号不渡りの場合
2号不渡りは必ずしも振出人の信用の問題ではありませんが、不渡届の作成は行われます。ただし2号不渡りの場合は、作成した不渡届を電子交換所に提出しないように、金融機関に異議申し立てを行うことができます。
不渡りが及ぼす影響
不渡りは振出人だけでなく、受取人にも大きな影響が及ぶことがあります。特に、1号不渡りは受取人の事業継続が困難になるケースもあるため、不渡りが発生しないように注意することが大切です。
ここでは、主に1号不渡りが出た場合について、振出人、受取人にどのような影響が及ぶのかを解説します。
振出人に及ぶ影響
1号不渡りを出すと、口座を開設している金融機関、および受取人に対する信用が大きく低下します。
金融機関は、不渡届などの規定に沿ったペナルティに加えて、新規融資の制限を始めとする対応の変化が生じるのが一般的です。
そして受取人からは、取引の停止や取引量の減少、または支払いサイトの短縮や現金取引への変更などを持ちかけられる可能性があります。
特に、2回目の1号不渡りは銀行取引停止となるため、事業の継続が困難となる可能性が高いです。さらに、上場企業は銀行取引停止処分を受けると上場廃止となります。
また、納品物を受け取ったにもかかわらず不渡りを出すのは契約違反になるため、取引先から損害賠償請求などを受ける可能性もあります。
さらに、契約違反を犯すと多くの場合取引継続は困難になるため、仕入先の変更なども検討しなければなりません。
受取人に及ぶ影響
振出人が不渡りを出すと、受取人は本来受け取るはずだった金銭を受け取れなくなるため、資金繰りに大きな悪影響を及ぼします。
特に、その金銭を他の支払いに充てる予定だった場合は、受取人も連鎖的に不渡りを出してしまう恐れもあります。
他の支払いに充てる予定ではなくても、不渡りにより在庫の確保や設備投資などが行えなくなる可能性もあります。すると、既存事業の縮小を余儀なくされたり、新規事業への進出を断念するといったケースも出てくるでしょう。
不渡りの金銭を回収するために法的手段を取ることもできますが、法的手段は時間的・金銭的コストがかかるため、必ずしもメリットのある手段とは限りません。
不渡りを未然に防ぐには
不渡りは一度出してしまうと大きな悪影響が避けられないため、不渡りを出さないように未然に防ぐことが大変重要です。
不渡りを未然に防ぐ対策には、自分が不渡りを出さないようにする振出人側の対策と、不渡りを出す取引先を避ける受取人側の対策があります。
ここでは、振出人側・受取人側それぞれについて、不渡りを未然に防ぐ方法を解説します。
振出人側の対策
振出人側が不渡りを防ぐための主な対策としては、以下のようなものが考えられます。これらの対策をきちんと行って、不渡りの発生リスクをできるだけ抑えることが大切です。
- 健全なキャッシュフローを維持する
- 小切手・手形以外の決済手段を使う
- 決済期日を統一する
- 手形管理システムを導入する
健全なキャッシュフローを維持する
不渡りは主に口座の残高不足で起こるため、健全なキャッシュフローを維持することが重要になります。
ここでキャッシュフローとは、会社に入ってくる現金と出ていく現金の流れのことです。キャッシュフローをみることで会社の手元にある現金が分かるため、残高不足による不渡りを防止しやすくなります。
会社が十分な現金を手に入れるためには売上を多くすることが重要ですが、売上は売掛金などの形で現金化されていないこともあります。よって、会社にどれくらい現金があるか把握するためには、売上は必ずしも有用な指標にはなりません。
売上はもちろん重要ですが、不渡りの防止という点では、健全なキャッシュフローを維持することがより重要になります。
小切手・手形以外の決済手段を使う
不渡りは小切手や手形の決済時に起こるものなので、それ以外の決済手段を使えば不渡りになることはありません。
小切手・手形以外の主な決済手段には、請求書払いや現金払いがあります。また、手形に代わる新しい決済手段である「でんさい」も、盗難や紛失による不渡りを防止できます。
・請求書払い
請求書払いは、取引先から請求書を発行してもらい、支払期日に取引先の口座に入金する決済方法です。手形による支払いと同じ「つけ払い」の一種で、帳簿には「買掛金」として計上されます。
請求書払いは、未払いが起きても銀行取引停止になる規定がないため、手形の不渡りに比べて未払いリスクが低くなる場合があります。
ただし、請求書払いの未払いも信用を大きく損う点は変わらないため、あくまで未払いを起こさないように心がけることが大切です。
・でんさい
でんさいとは、手形の代わりの決済手段として国が推奨している、ネット上で決済できる電子債権です。紙の手形より安全性と利便性が高く、コストが安いメリットがあります。
でんさいは2回の不渡りで銀行取引停止になるのは手形と同じですが、紙を使わないため盗難や紛失などによる不渡りを防止できます。
・現金払い
手元に十分な現金があるなら、納品時に現金で決済するのは最も安全な方法です。現金払いなら支払いが遅れることもなく、不渡りなどのトラブルも起こりません。
ただし、現金払いは支払いのための現金を常に用意しておく必要があり、さらに取引のたびに決済しなければならず面倒なのが欠点です。
決済期日を統一する
決済期日を統一するのは、うっかりミスによる不渡りの防止に役立ちます。
多くの取引先と取引していると、決済期日がバラバラになってしまうのはよくあることです。しかし、決済期日がバラバラだと、いつ、どれくらいの金額を口座に入れておけばよいか把握しにくくなります。
すると、うっかり入金を忘れて残高が不足し、不渡りが起こってしまうリスクが出てきます。
一方、決済期日を統一しておけば、口座に十分な残高が必要な時期が毎月同じになるため、うっかりミスが起こりにくくなります。
ただし、決済期日は取引先の都合も考慮する必要があるため、全ての決済期日を統一するのは難しいのが一般的です。それでも、決済期日を変更してくれそうな取引先に話を持ちかけるなどして、できるだけバラバラにならないように対処することはできます。
手形管理システムを導入する
手形管理システムとは、手形取引に関連する業務を自動化・効率化できるシステムです。主にクラウド上で提供され、支払手形・受取手形それぞれについて、発行・受領や決済業務などを行えます。
手形管理システムを導入すれば、自社が振出した支払手形を把握しやすくなるため、入金忘れなどによる不渡りを防止するのに役立ちます。
また、たいていの手形管理システムはプリンタで手形を発行できるので、記載内容の不備による0号不渡りの防止にも役立ちます。
受取人側の対策
受取人側の受取手形の不渡りを防ぐためには、振出人の与信をきちんと調査することが大切です。そして、不渡りを出しそうな取引先とは、取引しない、または手形以外の決済手段を使うなどの対策をとることで、不渡りのリスクを軽減できます。
取引先の与信評価
与信評価とは、取引先の信用度を調査し、調査内容にもとづいて不渡りのリスクを評価することです。信用度の調査は与信調査といいます。
与信調査にはいくつかの種類があり、手間やコストとの兼ね合いでどの程度まで調査するか判断します。主な与信調査方法には以下のようなものがあります。
与信調査方法 | 調査内容 |
---|---|
自社内にある情報の調査 | 自社内にある過去の取引履歴などを調べる |
ネット情報の調査 | 取引先の公式サイトや口コミサイト、および調査会社(帝国データバンクなど)などの情報を調べる |
書類の調査 | 決算書、商業登記、不動産登記などを調べる |
ヒアリングによる調査 | 自社の営業担当者や調査担当者が、取引先に直接ヒアリングして調査する。 |
信用調査会社による調査 | 信用調査会社の調査員が、資料やヒアリングなどを通して与信を調査する。 |
与信調査と評価は、新規取引先だけでなく既存の取引先に対しても定期的に行い、評価をアップデートしておく必要があります。
与信評価にもとづく取引額・取引継続の判断
与信調査によって得られた評価をもとに、取引を継続すべきか、取引額の上限をいくらにするかなどを判断します。
例えば、信用が低いと判断した取引先に対しては、以下のような対応をとって不渡りのリスクを減少させます。
- 手形以外の決済方法(請求書払い、現金払いなど)に変更する
- 支払いサイトを短くする
- 取引額を減らす
- 取引を中止する
逆に、信用が高いと判断した場合は、取引額を増やすなどの対応を取ることもできます。
小切手・手形以外の決済手段を使う
小切手・手形以外の決済手段を使うのは、振出人だけでなく、受取人にとっても有用な対策となります。
現金払いにするのが最も確実ですが、それが難しい場合はでんさいを利用するのも有効です。でんさいは自動入金されるので入金ミスによる不渡りが防げるのに加えて、紙の手形を使わないため紛失や盗難による不渡りも防止できます。
請求書払いは必ずしも未払いリスクが減るわけではありませんが、手形より支払いサイトが短い傾向があるため、早く回収して不確定要素を軽減できるメリットがあります。
不渡りが出そうな時の回避方法
どうしても不渡りが出てしまいそうな時は、直近の不渡りを回避できる素早い措置をとらなければなりません。
不渡りが出そうな時に有効な回避方法としては、以下のようなものがあります。
- 過振り
- 手形のジャンプ
- ファクタリングによる資金調達
過振り
過振り(かぶり)とは、当座預金の残高より多い額の手形を振出すことです。例えば、現金払いの支払いがある時に、それを過振りによる手形決済に変更すれば、現金を余分に用意できます。
過振りは不渡りを回避する有用な手段の一つですが、金融機関に対して十分な信用があるか、担保がないと利用できないのが注意点です。
手形のジャンプ
手形のジャンプとは、受取人の許可を得て、手形の支払期日を延期してもらうことです。
あと少し待てば現金を用意できる見込みがある場合は、手形のジャンプは不渡りを回避する有効な手段となります。ただし、手形のジャンプは受取人の許可がないと行えないのが注意点です。
手形のジャンプは受取人に資金繰りが苦しいと思われる可能性が高いため、どのように現金を用意する予定なのかを受取人に明確に説明することが重要になります。
ファクタリングによる資金調達
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング業者に売却して、売却代金を受け取るサービスです。手数料を引かれる代わりに、支払期日前に売掛債権を現金化できます。
不渡りになりそうな手形があり、それとは別に売掛債権を持っている場合は、売掛債権をファクタリングで売却して、得た現金を手形の支払いに充てることで不渡りを回避できます。
倒産すると経営者はどうなる?
不渡りを出して銀行取引停止になると、事業の継続は困難となり事実上の倒産となります。この時経営者がどうなるかを知っておくと、倒産後の具体的な対策を練りやすくなるとともに、どうなるか分かっていることで安心感も得られます。
ここでは、不渡りなどで会社が倒産した場合、経営者がどうなるかについて解説します。
経営者個人も破産することがある
原則として会社が倒産しても経営者個人の財産は守られますが、融資の際に経営者保証をしている場合は、経営者も自己破産する可能性があります。もちろん、個人事業主の場合は事業の破綻が個人の破産につながります。
自己破産しても最低限の生活は保証される
自己破産すると、経営者の財産の多くは弁済のために処分されます。しかし、完全に無一文になるわけではなく、最低限の生活に必要な財産や権利は保護されます。
・財産
以下の財産などは、自己破産しても処分されずに残されます。
- 99万円以下の現金
- 生活に必要な最低限の家具・家電・衣類など
- 時価20万円未満の車・バイク
・住宅
住宅は持ち家は処分されますが、新たに賃貸住宅を借りることはできます。ただし、信用情報にはキズがついているため、家賃保証会社の審査などに通りにくくなる可能性はあります。
もともと賃貸住宅に住んでいる場合は、その住宅に引き続き住むことが可能です。ただし、滞納した家賃を破産によって免責した場合は例外となります。
・携帯電話
携帯電話は、通話料金の滞納がなければ破産後も引き続き使用可能です。ただし、信用情報にキズがついているため、新規の契約は断られる可能性もあります。また、本体の代金を破産によって免責した場合は、その携帯は使えなくなります。
・就職
自己破産した後に就職することは可能です。面接の際に自己破産したことを申告する必要はなく、会社側が官報などを調べて破産の事実を知る可能性もほとんどありません。
・ローンやクレジットカード
自己破産すると信用情報にキズがつくため、ローンを組んだりクレジットカードを作ることはできません。ただし、信用情報の登録期間は5年から10年のため、この期間を過ぎれば可能となります。
・生活保護
生活保護は自己破産しても受給できます。
・親族や近隣住民に知られる?
自己破産の事実は官報に掲載されるだけなので、親族や近隣住民に知られる可能性はほとんどありません。
再起業は可能だが資金調達は制限される
破産した後に再起業することは可能です。ただし、信用情報にキズがあるため、金融機関からの融資は当面の間は難しくなります。また、業界内では破産したことが知れ渡っていることが多いため、同業種での再起業は難しいこともあります。
破産した人でも可能な資金調達
破産した人は金融機関からの融資は難しくなりますが、日本政策金融公庫や自治体の融資の中には、破産した人でも借りられるものがあります。
破産した人でも借りられる融資の例としては、以下のようなものがあります。
日本政策金融公庫の融資 |
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自治体の融資 |
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不渡りで倒産した時の会社の再建・清算方法
不渡りを出して倒産した場合は、支払えない債務を免除してもらいながら、会社を再建または清算することになります。再建・清算方法にはいくつかの種類があり、状況によって適切な手段を選ぶことが大切です。
再建・清算方法には、法律にもとづいて手続きを進めていく法的整理と、債権者との話し合いで進めていく私的整理があります。また、会社を存続したまま債務整理する再建型と、債務整理したうえで会社を清算する清算型があります。
倒産した時の会社の再建・清算方法は以下のとおりです。
再建・清算方法 | 私的整理・法的整理の分類 | 再建型・清算型の分類 |
---|---|---|
特定調停 | 私的整理 | 再建型 |
任意整理 | 私的整理 | 再建型および清算型 |
民事再生 | 法的整理(民事再生法) | 原則として再建型(清算型も可能) |
会社更生 | 法的整理(会社更生法) | 原則として再建型(清算型も可能) |
特別清算 | 法的整理(会社法) | 清算型 |
破産 | 法的整理(破産法) | 清算型 |
特定調停
特定調停とは、裁判所の仲介のもとで、債務者と債権者が返済条件を話し合う手続きです。法律にもとづかない私的整理の一種ですが、裁判所が仲介するため公平性を保ちやすいのが特徴です。
法人の特定調停の場合、弁護士などと相談して再生計画案を策定したうえで、調停を行い債権者から合意を得ることを目指します。
特定調停は民事再生や会社更生と違い、調停を行っている事実が債権者以外に広く知られることはないため、調停後も事業を継続しやすいのが利点です。また、費用も安く期間も比較的短いため、中小企業の再建に向いています。
再生計画案(経営改善計画)の策定費用は国の補助もあるため、こういった制度を利用すればさらに費用が安く済むでしょう。
特定調停は債権者の合意を得ないと成立しないため、債権者に納得してもらえるかが重要です。そのため、再生計画案を作る段階で債権者と事前に話し合い、計画案の了承を得てから調停を行うとスムーズに進みます。
法人の特定調停にかかる期間は、事前協議が1,2ヶ月程度、調停が月一回開催で1,2回程度、合計3,4ヶ月程度が平均とされています。
任意整理
任意整理とは、裁判所は関与せず、債務者と債権者が直接話し合う私的整理の一種です。個人の借金の整理で使われることが多いですが、法人でも利用できます。
直接話し合うといっても、実際は弁護士を代理人に立てて、さらに税理士や公認会計士のサポートを受けるのが一般的です。
任意整理は法的整理に比べると、手続きが簡便でコストが安く、ケースバイケースで柔軟な対応ができます。また、対象となる債権者以外には任意整理を行っていることが知られないため、事業を継続しやすいのもメリットです。
一方、任意整理は法律にもとづいた手続きではないため、債権者間の公平性を保つのが難しいこともあります。ただし、私的整理の手続きの方針を定める「私的整理ガイドライン」というものがあり、これに従うことである程度公平性を担保できます。
任意整理は、再建型・清算型どちらも可能です。ただし、清算型の任意整理は、破産手続きに比べてコストや公平性の面でメリットが少ないといわれています。
民事再生
民事再生とは、民事再生法に従って会社を再建する手続きです。再生計画を策定して債権者の承認を得たうえで、計画に従って債務を減免して返済します。
民事再生は会社更生に比べると手続きが簡便で費用も安く、中小企業の主要な再建方法の一つだといえます。
私的整理に比べて法律にもとづいた厳格な手続きができますが、倒産した事実は取引先などに広く知られてしまうのがデメリットです。
会社更生
会社更生とは、会社更生法に従って会社を再建する手続きです。民事再生と同様、再生計画に従って債務を減免して返済します。会社更生は、民事再生に比べて手続きが大掛かりでコストも高いため、大企業の再建で利用されるのが一般的です。
会社更生は民事再生より、法律による強い強制力があるのが特徴です。例えば、経営陣は原則として退陣して管財人に経営権が移り、管財人の主導で手続きが進められます。
また、再建のためのスポンサーが新たな株主となり、既存株主は権利を失うのが一般的です。さらに、担保権のある債権も減免の対象となり、担保権の行使はできなくなります。
特別清算
特別清算とは、債務超過の会社を会社法の規定に従って清算する手続きです。株主総会で清算人を選任し、清算人と裁判所の主導で財産を処分して法人格を消滅させます。
特別清算は破産に比べると法律による強制力が小さく、比較的柔軟で簡便な手続きができます。また、破産に比べると「会社が潰れた」というイメージが小さい傾向があり、社会的なイメージダウンを抑えられることもあります。
ただし、特別清算は債権者の3分の2以上の合意がないと利用できないため、必ず利用できるとは限らないのが注意点です。もし合意が得られなかった場合は、破産手続きに移行することになります。
さらに、株主総会で3分の2以上の賛成を得る必要もあるため、株主や債権者が権利関係で争っているような状況では、実行が難しいことが多いです。
債権者の合意を得て特別清算を実行するためには、破産手続きより債務を多く弁済できる協定案を提示することなどが重要になります。
破産
破産とは、破産法にもとづいて債務の減免と財産の処分を行い、法人格を消滅させる手続きです。
破産は、株主や債権者の合意がなくても実行できるなど、特別清算に比べてより強い強制力があるのが特徴です。また、手続きは裁判所が選任する破産管財人の主導で行われ、特別清算のように会社の意思で清算人を立てることはできません。
破産の申立ては会社側だけでなく、債権者側からも行えるのが特徴です。債権者側から申し立てるケースは多くありませんが、例えば会社が財産を隠匿しようとしている場合などで、債権者による申立てが行われることがあります。
まとめ
手形や小切手の現金化ができなくなる不渡りは、会社の信用を大きく損ねるとともに、銀行取引停止による倒産にもつながります。キャッシュフローを健全に保つ、手形や小切手以外の決済手段を利用するなどして、不渡りが起こらないようにすることが大切です。
どうしても不渡りが出てしまいそうなときは、過振りや手形のジャンプ、ファクタリングによる資金調達などでしのぐことも可能です。
不渡りで倒産した場合、経営者保証をしている経営者も自己破産する可能性があります。しかし、自己破産後も経営者の最低限の生活は保証され、制限はあるものの再起業も可能です。
不渡りの意味や防止方法などを理解して、健全な経営を維持するようにしましょう。