手元に受取手形が残っている。期日はまだ先だが、紙の手形は廃止されると聞いた。いつまでに現金化すればいいのか分からない。そうした状況で調べている方が多いと思います。
電子交換所での手形の交換は2027年度初に廃止されます。それまでに取り立てか割引を済ませる必要があります。多くの銀行では、新たに手形を振り出すこと自体が2026年9月30日で終わっています。
手形割引の仕組みと手数料、審査で見られる5項目、不渡りになったときに起きること、仕訳の方法、そしてファクタリングとの使い分けが分かります。
手形をあつかう2記事の役割
| 記事 | わかること |
|---|---|
| この記事手形割引 | 手形を銀行で現金化する方法。手数料、審査の5項目、不渡り時の買い戻し、仕訳、廃止までの期限 |
| 回し手形(裏書譲渡) | 受け取った手形を支払いに使う方法。裏書の仕組みと、譲渡した後に残る責任 |
手形を現金に換えたいならこの記事、受け取った手形を別の支払いに充てたいなら下の記事です。
手形割引はいつまでできるのか
紙の手形は廃止が決まっています。金融庁の資料によると、2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにすることが最終目標とされ、2027年度初から交換が廃止されます。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 2026年1月1日 | 中小受託取引適正化法が施行。手形による支払いが禁止され、支払期日は受領日から60日以内と定められた |
| 2026年9月30日 | 多くの銀行がこの日を手形用紙の最終的な交付・振出の期限に設定した |
| 2026年度末 (2027年3月) |
電子交換所での交換枚数をゼロにすることが目標 |
| 2027年度初 | 電子交換所での手形・小切手の交換が廃止される |
出典:金融庁|手形・小切手の電子化(2026年10月9日確認)。最終振出期限は金融機関ごとに異なります。
期日が2027年3月を越える手形を持っている場合
交換が廃止されたあとの取り扱いは、金融機関ごとに案内が出ています。期日が2027年3月を越える手形が手元にあるなら、取引銀行に取り扱いを確認する時期です。割引で先に現金化するか、振出人と支払方法を協議するかの判断になります。
手形割引とは|期日前に手形を買い取ってもらう取引
手形割引は、支払期日前の手形を銀行や手形割引業者に買い取ってもらい、現金を受け取る取引です。期日までの日数に応じた割引料が差し引かれます。
割引料の目安は、銀行で年1.5〜5%程度、手形割引業者で年3〜15%程度です。これは年率なので、期日までの残り日数が短いほど差し引かれる額は小さくなります。
| 項目 | 銀行 | 手形割引業者 |
|---|---|---|
| 割引料の目安 | 年1.5〜5%程度 | 年3〜15%程度 |
| 審査 | 厳格 | 銀行より柔軟 |
| 初回の所要日数 | 1週間から数週間 | 最短即日の場合もある |
| 借入枠 | 割引枠を使うため、他の借入枠を圧迫する | 銀行の枠には影響しない |
手形割引の審査で見られる5項目
手形割引は融資に近い審査を受けます。中心に見られるのは手形を振り出した相手の信用力で、自社の状況だけで決まるわけではありません。
| 項目 | 見られる内容 | 通りやすくする手立て |
|---|---|---|
| 振出人の信用 | 最も重視される。債務超過でないか、赤字が続いていないかを企業情報のデータベースで確認される | 手形が複数あるなら、経営状態の良い企業の手形から出す |
| 手形の金額 | 自社の売上規模から見て適正か。年商3,000万円の会社が3,000万円の手形を出すと不自然と見られる | 売上規模に見合った金額の手形を選ぶ |
| 振出人との取引歴 | 取引が継続しているか。初めての相手の手形は慎重に見られる | 取引実績が通帳に残っている相手の手形を選ぶ |
| 手形の期間 | 期日までが長いほど、途中で振出人の状況が変わるリスクが高いと見られる | 期日が近い手形から割り引く |
| 自社の信用 | 不渡りになったときに買い戻せるかが見られる | 決算書と資金繰り表を整えておく |
不渡りになったら買い戻しを求められる
ここが手形割引で最も重い点です。割り引いた手形が不渡りになった場合、割り引いた側が手形を買い戻す義務を負います。受け取った現金を返すことになります。
これは償還請求権と呼ばれる権利が手形割引には付いているためです。振出人が倒れたときのリスクは、銀行ではなく自社に残ります。
買い戻したあとは、自社が振出人へ請求することになります。回収できなければ損失です。
不渡りが振出人に与える影響
手形が不渡りになると、振出人は電子交換所に不渡り情報が通知されます。6か月以内に2回不渡りを出すと銀行取引停止処分となり、2年間は当座取引と貸出取引ができなくなります。事実上の倒産に近い状態です。この重さがあるため、手形は支払われる前提で流通してきました。
手形割引の仕訳
額面100万円の手形を、割引料2万円で割り引いた場合の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 当座預金 98万円 手形売却損 2万円 |
受取手形 100万円 |
割引料は「手形売却損」として処理します。営業外費用にあたります。
なお手形割引は貸借対照表に残ります。不渡りになれば買い戻す義務があるため、偶発債務として注記するか、保証債務として計上する扱いになります。借入と同じく、銀行から見れば負債性のある取引です。
手形割引とファクタリングの違い
どちらも期日前に資金化する方法ですが、責任の行き先が逆になります。
| 項目 | 手形割引 | ファクタリング |
|---|---|---|
| 対象 | 受取手形 | 売掛債権・注文書 |
| 不渡り・倒産時 | 自社が買い戻す | 原則として自社の負担はない |
| コスト | 年1.5〜15%程度(年率) | 2社間5〜20%、3社間1〜5%(1回あたり) |
| 資金化までの期間 | 初回は1週間から数週間 | 2社間は最短即日 |
| 審査の中心 | 振出人と自社の両方 | 主に売掛先 |
| 貸借対照表 | 残る(偶発債務) | 負債は増えない |
| 一部だけの資金化 | できない | 債権を選んで申し込める |
| 契約方法 | 来店が必要な場合が多い | オンラインで完結する会社がある |
コストだけを比べれば手形割引が有利です。年率で計算されるため、期日が近い手形ほど負担は小さくなります。
一方で振出人が倒れたときの損失は自社に残ります。ファクタリングは原則としてその責任が移るかわりに、手数料が高く設定されています。
どちらを選ぶかの目安
| いまの状況 | 向いている方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 手形があり、振出人の経営も安定している | 手形割引 | コストが低い。期日が近ければ負担はさらに小さい |
| 振出人の支払いに不安がある | ファクタリング | 買い戻しの義務がなく、回収不能のリスクを負わない |
| 今日か明日に現金が必要 | ファクタリング | 2社間なら最短即日。手形割引は初回に時間がかかる |
| 銀行の借入枠を空けておきたい | ファクタリング | 手形割引は割引枠を使うため、他の借入を圧迫する |
| 手形がなく、請求書だけがある | ファクタリング | 手形割引は対象にならない |
| 受注済みだが請求書もまだ出せない | 注文書ファクタリング | 注文書・発注書を対象にする会社がある |
ファクタリング会社の手数料や入金スピードを並べて比べる場合は優良会社26社の比較にまとめています。でんさいに切り替えた後の資金化はでんさいとファクタリングの違いで整理しています。
電話での相談は 0120-927-565(平日10時〜19時)
手形が使えなくなった後の資金調達
手形の廃止で影響を受けるのは、支払う側と受け取る側の両方です。
支払う側は、手形で確保していた支払いまでの猶予がなくなります。中小受託取引適正化法により支払期日は受領日から60日以内となるため、手形で120日先まで延ばしていた企業ほど、資金繰りの組み直しが必要になります。
受け取る側は、手形割引という資金化の手段を失います。代わりになるのは次の3つです。
| 手段 | 対象 | 手形割引との違い |
|---|---|---|
| でんさい割引 | 受け取ったでんさい | 最も近い。ただし双方がでんさいを利用登録している必要がある。譲渡した側が保証人になる点も手形と同じ |
| ファクタリング | 請求書 | 買い戻しの義務がない。コストは高い。売掛先の信用力が審査の中心 |
| 注文書ファクタリング | 注文書・発注書 | 受注した段階で使える。請求書を待つ必要がない |
でんさいの仕組みと導入手続きはでんさいとはにまとめています。
手形割引についてよくある質問
手形売却損とは何ですか
手形割引の際に差し引かれる割引料を処理する勘定科目です。営業外費用にあたります。額面と受取額の差額がこれにあたります。
手形割引に消費税はかかりますか
かかりません。手形割引は金銭の貸付に準じるものとして、消費税は非課税です。
割り引いた手形に不渡りのおそれがある場合、保証債務を計上すべきですか
手形を割り引いた時点で、買い戻しの可能性に備えて保証債務を計上する処理があります。不渡りのおそれが具体的になった場合は、引当の要否を含めて顧問税理士に確認する項目です。
割引手形に貸倒引当金は必要ですか
割り引いた手形は自社の資産から外れているため、原則として貸倒引当金の対象にはなりません。ただし買い戻しの可能性が高いと判断される場合は、保証債務としての処理を検討することになります。
一部の金額だけ割り引くことはできますか
できません。手形は額面のまま割り引くことになります。分割して使えるのはでんさいの特徴です。
手形がもう手元にない場合、何で資金化できますか
請求書があればファクタリング、受注段階で請求書がまだ出せない場合は注文書ファクタリングが選択肢になります。どちらも手形割引と違い、売掛先が払えなかったときの買い戻し義務は原則としてありません。
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| でんさいとファクタリングの違い | 受け取った債権を資金化したいときの比較 |
| 優良会社26社の比較 | 手数料・入金スピード・買取額を同じ条件で並べた比較 |
まとめ:期限が決まっているので、手元の手形は先に処理する
手形割引は、期日前の手形を銀行などに買い取ってもらう取引です。コストは年率で計算されるため、期日が近いほど負担は小さくなります。
最も重い点は、不渡りになったときに自社が買い戻す義務を負うことです。振出人が倒れたときの損失は、銀行ではなく自社に残ります。
そして紙の手形は、2027年度初に電子交換所での交換が廃止されます。多くの銀行では新たな振出がすでに終わっています。手元に手形が残っているなら、取り立てか割引を済ませる期限が決まっている状態です。
手形が使えなくなった後の資金化は、でんさい割引、請求書のファクタリング、注文書ファクタリングのいずれかになります。でんさい割引は買い戻しの責任が残り、ファクタリングは残りません。この違いで選ぶことになります。




