事業の資金繰りを改善したい法人や個人事業主の多くは、融資制度の金利や審査の難しさに悩まされています。小規模企業共済は節税対策や退職金準備ができるうえに借り入れもできる制度として注目されています。
今回の記事では小規模企業共済の概要と、借り入れ制度についても詳細をまとめました。さらに、小規模企業共済の借り入れの特徴やメリット・デメリット、限度額のシミュレーションまで網羅的に解説します。
本記事を読めば小規模企業共済の全体像や借り入れ制度の詳細がわかり、キャッシュフロー改善に活かせるようになります。小規模企業共済のメリット・デメリットを把握し、条件を満たしているのを確認したうえで資金繰りの改善に利用しましょう。
小規模企業共済とは
小規模企業共済とは、中小企業庁が管轄している「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が運営する共済制度です。中小企業の経営者や個人事業主が積み立てるための退職金制度で、将来解約したときなどに掛金に応じた給付を受け取れます。
会社員には企業の退職金制度がありますが、経営者や個人事業主はありません。多くの事業者が小規模企業共済に加入して引退後の生活に備えています。掛金が全額所得控除になるため、節税と積み立てを同時に進められる点がメリットです。
福利厚生の恩恵がない経営者や個人事業主にとって、将来に備える有効な手段と言えるでしょう。
加入条件
小規模企業共済は経営者や個人事業主の退職金を準備できる魅力的な制度ですが、加入するにはいくつかの条件を満たさなければいけません。加入条件として、以下のいずれかに該当したうえで、従業員数が業種ごとの上限を下回る必要があります。
【加入できる方の立場】
- 個人事業主
- 小規模企業の役員
- 共同経営者
いずれの立場の方でも、小規模企業共済に加入するには常時使用する従業員数が業種により以下の条件を満たす必要があります。
| 業種 | 従業員数の上限 |
| 建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業・サービス業(宿泊業や飲食業に限る) | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
| 商業(卸売業、小売業)・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く) | 常時使用する従業員の数が5人以下 |
※組合等・士業法人の役員の場合を除く
なお、加入時点で条件を満たしていれば、その後に従業員数が上限を超えても継続加入できます。
小規模企業共済の掛金
小規模企業共済の掛金は月々1,000円から7万円までの範囲内なら500円単位で自由に設定できます。
掛金の納付方法は口座振替で、以下のいずれかから選択できます。
- 毎月納付する「月払い」
- あらかじめ届け出た月(年1回)に12ヶ月分の掛金を納付する「年払い」
- あらかじめ届け出た月(年2回)に6ヶ月分の掛金を納付する「半年払い」
口座振替日は毎月18日ですが、土日祝日は翌営業日となります。
共済金の受け取り条件
小規模企業共済で積み立てた掛金は、経営者や個人事業主が退職する際に共済金として受け取るのが基本です。また、請求事由に該当すれば退職のときでなくても受け取れます。
小規模企業共済の請求事由と受け取り条件について以下にまとめました。
| 共済金等の種類 | 請求事由 |
| 共済金A | 【個人事業主】
廃業 契約者の死亡 【法人の役員】 法人の解散 |
| 共済金B | 【個人事業主】
老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上の掛金を払い込んだ場合) 【法人の役員】 病気やけが、65歳以上での役員の退任 共済契約者の死亡 老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ場合) |
| 準共済金 | 【個人事業主】
法人成りでの加入資格喪失による解約 【法人の役員】 法人の解散、病気、けが以外の理由、65歳未満での役員の退任など |
| 解約手当金 | 【個人事業主】
任意解約 機構解約(掛金を12ヶ月以上滞納した場合) 法人成りによる加入資格がなくならなかった後の解約 【法人の役員】 任意解約 機構解約(掛金を12ヶ月以上滞納した場合) |
小規模企業共済の借り入れ(貸付制度)とは
小規模企業共済には、退職金を準備する機能以外に、掛金の借り入れができる「貸付制度」があります。小規模企業共済の貸付制度は、掛金の納付期間に応じた限度額の範囲内で、事業資金などを借り入れできる制度です。
個人事業主や小規模企業経営者が利用できる資金調達の手段として利用されています。
小規模企業共済の借り入れには2種類ある
小規模企業共済で借り入れができる貸付制度には、以下の2種類があります。
- 一般貸付
- 特別貸付け
それぞれの違いや特徴を把握し、自社の資金繰りの改善に役立てられるか検証してみましょう。
両者の概要を表にまとめると、以下の通りです。
| 一般貸付 | 特別貸付け | |
| 限度額 | 2,000万円 | 1,000万円 |
| 借り入れ期間 | 6ヶ月・12ヶ月・24ヶ月・36ヶ月・60ヶ月
※借り入れ金額によって異なる |
36ヶ月・60ヶ月 |
| 貸付利率 | 年1.5% | 年0.9% |
| 延滞利子 | 年14.6% | 年14.6% |
| 返済方法 | ・期限に一括で返済
・6ヶ月ごとに元金均等方式で返済 ※借り入れ期間によって異なる |
6ヶ月ごとの元金均等方式 |
| 利子の返済 | ・借り入れ時に前払い
・半年ごとの返済時に前払い ※償還方法によって異なる |
借り入れ時または半年ごとの返済時に前払い |
一般貸付
一般貸付は、簡易・迅速に事業資金などを借り入れできる制度です。借り入れできる限度額は掛金の納付月数に応じて算定され、通常は「掛金の7~9割の範囲内で最大2,000万円」での借り入れが可能です。
返済方法は借り入れしている期間ごとに異なりますが、以下の2つのいずれかになります。
- 借り入れ期日到来までに全額返済する「期限一括償還」
- 元金を均等に分割して返済する「6ヶ月ごとの元金均等割賦償還」
など、金利は年1.5%と低水準で、担保・保証人なしで利用できます。
特別貸付け
特別貸付けは、特別な事情がある場合に限って利用できる貸付制度です。貸付条件などは制度によって異なりますが、無担保かつ保証人なしで利用でき、限度額は50万円以上1,000万円になっています。
特別貸付けには以下の6つの制度があり、制度の特徴をまとめると以下の通りです。
| 制度名 | 概要 |
| 傷病災害時貸付け | 傷病の罹患による入院や災害などを理由に経営難に陥った際の貸付制度 |
| 廃業準備貸付け | 廃業や、それに伴う設備の処分、事業債務の清算などのための貸付制度 |
| 福祉対応貸付け | 福祉機器の購入や住宅の改造費用などを支払うための貸付制度 |
| 事業継承貸付け | 株式の取得や事業継承の費用などのための貸付制度 |
| 創業転業時・新規事業展開等貸付け | 新しく事業を創設・展開・転業などをするための貸付制度 |
| 緊急経営安定貸付け | 一時的な売り上げの減少などで経営難に陥った際に安定させるための貸付制度 |
小規模企業共済の借り入れ期間
小規模企業共済の借り入れ期間は、貸付のタイプや借り入れ金額などに応じて変動します。
一般貸付と特別貸付け、それぞれの借り入れ期間は以下の通りです。
| 貸付タイプ | 借り入れ期間 |
| 一般貸付 | ・100万円以下:6ヶ月、12ヶ月
・105~300万円:6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月 ・305~500万円:6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月 ・505万円以上:6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月、60ヶ月 |
| (以下、特別貸付け)傷病災害時貸付け | ・500万円以下:36ヶ月
・505万円以上:60ヶ月 |
| 福祉対応貸付け | |
| 事業承継貸付け | |
| 創業転業時・新規事業展開等貸付け | |
| 廃業準備貸付け | ・12ヶ月 |
小規模企業共済の返済方法
小規模企業共済の返済方法には、以下の2つがあります。
- 期限一括償還
- 元金均等割賦償還
返済方法の違いまで目を向けて、小規模企業共済で借り入れするかを検討しましょう。
期限一括償還
期限一括返済は、返済期日にまとめて一括で返済する方法です。利子は借り入れしたときに一括で前払いになります。
一括での返済が求められるため、返済用の元金を全額用意できる目途が立ってから申し込み手続きを始める必要があります。
期限一括償還での返済が必要なのは、借り入れ期間が6ヶ月または12ヶ月の一般貸付制度と、特別貸付けのなかの「廃業準備貸付け」です。
元金均等割賦償還
元金均等割賦償還は、返済金額のうち元金だけが均等になる返済方法です。利子は貸付時および、償還時に6ヶ月分を前払いで支払います。
毎月の返済が進んで元金の残高が減るほど支払う利子が少なくなるため、少しずつ返済負担が小さくなっていく点に特徴があります。
「一般貸付(借り入れ期間が6ヶ月または12ヶ月)」「廃業準備貸付け」の2つを除き、6ヶ月ごとの元金均等割賦償還が適用されます。
小規模企業共済で借り入れするメリット
小規模企業共済で借り入れするメリットは、以下の通りです。
- 審査が必要ない
- 返済期限に間に合わせなくても借り換えできる
- 借り入れの利率は0.9%または1.5%と低金利
- 追加融資は何度でも可能
- 借り入れの準備をしながら節税が可能
単にお金が借りられるだけでなく、審査が不要だったり節税が可能だったりと、多面的なメリットを活用しましょう。
審査が必要ない
小規模企業共済の貸付制度を利用するときは、審査を受ける必要がありません。自身が毎月積み立てた掛金の範囲内でお金を借りるため、必要な書類を準備して所定の手続きをすれば基本的に融資を受けられます。
審査がないため、小規模企業共済以外で債務を抱えていたとしても、問題なく借り入れできます。
一方、銀行のビジネスローンや消費者金融のカードローンは審査があります。審査に通らないと融資を受けられず、通っても希望金額を借り入れできるとは限りません。
また、他社からの借り入れ金額が多かったり延滞した記録があったりすると、審査に通らない可能性があります。
返済期限に間に合わせなくても借り換えできる
小規模企業共済の返済が間に合わないときは利息を支払って「借り換え」が可能です。
借り換えを利用するには新規の借り入れのときと同じ書類を準備し、新規に貸付を申し込む形で利用できます。利子を再度支払う必要こそありますが、その分だけ借り入れ期間を延ばして返済までの猶予を確保できます。
借り入れの利率は0.9%または1.5%と低金利
小規模企業共済の借り入れの金利は、以下の設定になっています。
- 一般貸付:年1.5%
- 特別貸付け:年0.9%
上記の金利は銀行や消費者金融で事業用資金を借りられるビジネスローンなどと比較して低金利な傾向です。可能な限り利息負担を抑えて現金を用意したい場合も、小規模企業共済の借り入れは有効です。
追加融資は何度でも可能
小規模企業共済は、「増額借換」を利用した追加融資が可能です。現在の借り入れ金額を全額返済する手続きと、貸付限度額の範囲内で増額した金額を新たに借り入れる手続きを同時に行う方法を指します。
また、増額借換の回数には制限がなく、お金が必要になった都度で少額ずつの借り入れが可能です。
例えば掛金月額3万円で小規模企業共済に10年間加入していた場合、掛金総額360万円の7~9割の範囲内なら追加融資を受けられます。
現在の残高を知りたい場合は、「貸付限度額のお知らせ」または「掛金納付状況などのお知らせ」などの資料を確認しましょう。
借り入れの準備をしながら節税が可能
小規模企業共済の貸付制度の原資は加入者が払い込む「掛金」であり、利用するには掛金の納付が必要です。小規模企業共済で納付した掛金は小規模企業共済等掛金控除として、全額が所得控除の対象になります。
所得控除の金額分だけ課税所得金額が抑えられ、算出される所得税と住民税が安くなって節税につながります。小規模企業共済のシミュレーションによれば、課税所得1,000万円の方が毎月3万円を積み立てた場合、年間で以下の節税が可能です。
| 所得税 | 住民税 | 合計 | |
| 加入前 |
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| 加入後 |
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| 節税額 |
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小規模企業共済の借り入れのデメリット
小規模企業共済の借り入れのデメリットは、以下の通りです。
- 一般貸付で借り入れするには掛金の納付期間が1年以上は必要
- 延滞利子は年14.6%と利息より高くなる
- 利子は前払いになる
- 返済は手動による振込のみ対応
納付期間による制限や利子の前払いなどのデメリットを理解したうえで、自社の資金繰りの現状に合った利用ができるか検討しましょう。
一般貸付で借り入れするには掛金の納付期間が1年以上必要
小規模企業共済の一般貸付を利用するには、掛金の納付期間が1年以上必要です。小規模企業共済は以下の両方の条件を満たした場合に利用できます。
- 納付した掛金の総額が10万円以上
- 掛金の納付期間が1年以上
小規模企業共済に加入したての方の場合、一般貸付制度を利用できません。
延滞利子は年14.6%と利息より高くなる
小規模企業共済は、返済日に返済ができないと年14.6%の延滞利子が発生します。延滞利子の利率は通常の借り入れ利率0.9%~1.5%と比較して高めの設定になっており、延滞が長期化すると利息負担が大きくなります。
例えば年間利率1.5%で100万円を借りると年間の利息は15,000円ですが、14.6%では146,000円もかかる計算です。一般的なローンの遅延損害金の年20.0%と比べて控えめな水準ではありますが、延滞利子が発生しないように計画的な返済が必要です。
利子は前払いになる
小規模企業共済で気をつけなければいけないのが、「利子が前払いになる」という点です。
小規模企業共済の貸付制度でお金を借りると、基本的に借り入れ希望額から利子が先に差し引かれてお金が振り込まれます。実際に受け取れる金額と、自身が融資を希望する金額に利子分の差異がある点に注意が必要です。
借り入れしたい金額が明確に決まっている場合、差し引かれる利子分を見越した金額を借り入れましょう。
なお、利子の支払い方法は、融資の種類と返済期間によって異なります。例えば一般貸付の場合は以下の通りです。
- 借り入れ期間が6ヶ月・12ヶ月:借り入れ時に利子の全額を支払う
- 借り入れ期間が24ヶ月・36ヶ月・60ヶ月:借り入れ時と返済時に6ヶ月分の利子を支払う
返済は手動による振込のみ対応
小規模企業共済の借り入れのデメリットとして、返済方法の種類が少ない点があります。例えばビジネスローンやカードローンの場合、基本的な返済方法として口座振替を選択でき、口座に入金しておけば返済は自動的に行われます。
一方、小規模企業共済では口座振替を利用できません。期日までに手動で振り込む必要があるため返済忘れに注意が必要です。
小規模企業共済の借り入れの限度額シミュレーション
小規模企業共済で借り入れできる金額には、掛金ごとに上限額が設定されています。ここでは掛金が1万円から7万円のときのそれぞれの限度額を解説します。
掛金が1万円の場合の借り入れ限度額
掛金が1万円の場合、借り入れできる限度額の計算式は以下の通りです。
- 1万円×掛金納付期間(月換算)×0.7〜0.9
小規模企業共済の掛金が月1万円の場合は1年で10万円、10年で84万円~108万円程度の借り入れができます。
掛金納付期間ごとに借りられる限度額は以下の通りです。
| 掛金納付期間 | 掛金総額 | 借り入れできる限度額 |
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掛金が3万円の場合の借り入れ限度額
掛金が3万円の場合、借り入れできる限度額の計算式は以下の通りです。
- 3万円×掛金納付期間(月換算)×0.7〜0.9
小規模企業共済の掛金が月3万円の場合は1年で25.2万円~32.4万円、10年で252万円~324万円程度の借り入れができます。
掛金納付期間ごとに借りられる限度額は以下の通りです。
| 掛金納付期間 | 掛金総額 | 借り入れできる限度額 |
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掛金が5万円の場合の借り入れ限度額
掛金が5万円の場合、借り入れできる限度額の計算式は以下の通りです。
- 5万円×掛金納付期間(月換算)×0.7〜0.9
小規模企業共済の掛金が月5万円の場合は1年で42万円~54万円、10年で420万円~540万円程度の借り入れができます。
掛金納付期間ごとに借りられる限度額は以下の通りです。
| 掛金納付期間 | 掛金総額 | 借り入れできる限度額 |
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掛金が7万円の場合の借り入れ限度額
掛金が7万円の場合、借り入れできる限度額の計算式は以下の通りです。
- 7万円×掛金納付期間(月換算)×0.7〜0.9
小規模企業共済の掛金が月7万円の場合は1年で58.8万円~75.6万円、10年で588万円~756万円程度の借り入れができます。
掛金納付期間ごとに借りられる限度額は以下の通りです。
| 掛金納付期間 | 掛金総額 | 借り入れできる限度額 |
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小規模企業共済に加入する流れ
小規模企業共済に加入するための大まかな流れは以下の通りです。
- 申し込み資格の確認
- 必要書類の準備
- 窓口に提出
- 書類の受け取り
流れを把握しておき、実際に小規模企業共済に加入する手続きをする際の参考にしましょう。
申し込み資格の確認
小規模企業共済に加入する前に、申し込み資格の確認をしておきましょう。例えば、常時使用している従業員の数が一定以下でなければいけません。個人事業主と会社役員、それぞれの常時使用する従業員の数は以下の通りです。
| 営む事業の種別 | 従業員数の制限 |
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「常時使用する従業員」とは、共済加入時点で、次の従業員を除いて正社員として雇用されている方を指します。
- 個人事業主
- 共同経営者としての要件を満たす方(2人まで)
- 家族従業員
- パート従業員
- アルバイトなどの臨時に期間を定めて雇い入れている方
なお、従業員数の要件はあくまでも共済加入時点であり、加入後に従業員が増加して要件を満たさなくなっても共済契約は可能です。
2つ以上の事業を行っている場合、主たる事業の業種で加入できるか判断しましょう。
必要書類の準備
小規模企業共済の加入時に必要になる書類は以下の2点です。
- 契約申込書
- 預金口座振替申込書
また、個人事業主の場合は確定申告書の控えも必要です。事業を始めたばかりで確定申告書がない方は開業届の控えを提出します。
法人役員の場合は、法人登記されている事実が確認できる書類が必要です。
窓口に提出
小規模企業共済の加入手続きを窓口で行う場合、以下のいずれかでの手続きを進めます。
- 中小機構と業務委託契約を締結している団体
- 金融機関の本支店(代理店)
それぞれに対応する団体や代理店は以下のとおりです。
| 中小機構が業務を委託している団体 | 中小機構が業務を委託している金融機関(代理店) |
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なお、小規模企業共済の加入資格がある方の場合、オンラインでの加入手続きも可能です。ただし、以下の条件に合致する方のオンライン加入はできません。
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書類の受け取り
申し込み手続き後、中小機構から「小規模企業共済手帳」や「小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款」が送付されます。
小規模企業共済の借り入れ手続きの必要書類
小規模企業共済の貸付制度を利用して借り入れするには、必要書類を準備したうえで窓口に提出します。必要書類の詳細は以下の通りです。
- 共済契約者の印鑑証明書
- 共済契約者の実印
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート(2020年2月3日以前に申請・発行されたもの))
- 借り入れ金額に応じた収入印紙
- 共済契約者番号と氏名が掲載されている中小機構からの送付物
収入印紙の金額は、借り入れしたい金額に応じて以下の通りです。
| 借り入れ金額 | 収入印紙の額 |
| 10万円 | 200円 |
| 15万円~50万円 | 400円 |
| 55万円~100万円 | 1,000円 |
| 105万円~500万円 | 2,000円 |
| 505万円~1,000万円 | 10,000円 |
| 1,005万円~2,000万円 | 20,000円 |
上記にプラスして、以下の書類の用意も必要です。
- 貸付金借入申込書
- 中小機構からの送付物
共済契約者番号と氏名が記載された中小機構からの送付物としては、以下のいずれかの書類が該当します。
- 掛金納付状況及び貸付限度額等のお知らせ
- 借入資格取得通知書
- 返済期日到来のご案内
- 共済手帳 など
小規模企業共済で借り入れしたとき仕訳処理の方法
法人や個人事業主が小規模企業共済で借り入れした場合、借入金の経理処理が必要です。小規模企業共済では借入金総額から返済期日までの利息を引いた金額を借りるため、「借入金」と「支払利息」で仕訳を行います。
例えば借り入れ総額が100万円で利息が1万円、実際の借り入れ金額が99万円のときの仕訳は以下の通りです。
| 借方 | 貸方 |
| 普通預金 99万円 | 借入金 100万円 |
| 支払利息 1万円 |
小規模企業共済の借り入れ以外の資金調達方法
小規模企業共済以外に事業資金を借り入れする方法としては、以下の3つがあります。
- ノンバンクのビジネスローン
- クラウドファンディング
- ファクタリング
小規模企業共済の借り入れの条件を満たさなくても事業資金の用意ができるよう、別の借り入れ方法も検討を進めておきましょう。
ノンバンクのビジネスローン
ノンバンクは銀行のような預金業務を行わず、貸付のみ行う金融機関です。消費者金融や信販会社などが該当します。
ノンバンクでは法人または個人事業主が事業資金を借り入れるための「ビジネスローン」を提供しています。ノンバンクのビジネスローンのメリットは融資実行までの期間が短い傾向にある点です。
また、保証人や担保を必要とせず、審査も銀行融資と比較すれば柔軟な傾向にあります。急いで融資を受けたいと考えている事業者に向いている商品と言えるでしょう。
一方、金利は年3.0%~18.0%程度と個人向けのカードローンに近い水準で、銀行融資よりも高い点がデメリットです。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットで不特定多数の第三者から資金を募る方法です。事業内容やプロジェクトに魅力を感じた支援者から資金を集めます。
クラウドファンディングには大きく以下の3つの種類があり、目的に応じて使い分けます。
- リターンが不要の「寄付型」
- 商品やサービスで返礼する「購入型」
- 投資や融資を募る「融資型」
融資型のクラウドファンディングを利用すると、資産運用を考える投資家や支援者から小口の資金を集められます。金融機関ではない個人から融資を受けられる点が特徴で、金融機関からの融資が受けられない場合でも資金調達が可能です。
ファクタリング
ビジネスローンや融資型のクラウドファンディングは借金である以上、利息をつけて元金を返済する必要があります。無計画に利用すると返済が苦しくなるため、借り入れ以外の方法も検討しましょう。
借り入れせずに資金調達できる代表的な手段が「ファクタリング」です。ファクタリングは、企業が持っている売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に買い取ってもらう手法を指します。
ファクタリングは売掛債権の信用を主に審査され、利用者の信用が低くても利用できる点がメリットです。また、借り入れではないため、信用情報にも影響がありません。
ただし、ファクタリング会社への手数料が発生するため、本来の売掛金よりも受取金額が少なくなるデメリットがあります。また、売掛金を一括でファクタリング会社に振り込む必要がある点などにも注意が必要です。
小規模企業共済の貸付にもファクタリングにも双方にメリットがあるため、適切に使い分けると資金繰り改善に役立つでしょう。
小規模企業共済の借り入れについてよくある質問
小規模企業共済の借り入れの際によくある質問は多岐にわたりますが、代表的な例は以下の通りです。
- 一般貸付と特別貸付けの併用は可能ですか?
- コロナウイルス感染症の特例措置とはなんですか?
小規模企業共済の借り入れに関する不安を解消しておき、資金調達を成功させましょう。
一般貸付と特別貸付けの併用は可能ですか?
一般貸付を利用している共済契約者でも、特別貸付けの併用が可能です。ただし、「一般貸付の残高を含む総額が貸付限度額の範囲内である」という条件を満たす必要があります。
また、一般貸付と特別貸付けを併用して限度額いっぱいまで借り入れする場合、返済の延滞にならないよう注意が必要です。貸付金を期日までに返済できないと、延滞利子が発生したり、掛金から取り崩しが行われたりする可能性があります。
延滞利子の割合は、滞納した元金に対して年14.6%です。さらに、貸付金の返済期日から12ヶ月を経過しても貸付金や延滞利子、約定利子の未返済がある場合は掛金残高から取り崩されます。
小規模企業共済の一般貸付のメリット・デメリットは?
小規模企業共済の一般貸付のメリットは、「審査が不要」「迅速な融資」「低金利で借りられる」「担保・保証人不要」などがあります。一方、1年以上の掛金納付がないと借り入れできない点がデメリットです。
借り入れできる金額は自分が積み立てた範囲内かつ、掛金納付月数によって掛金の7~9割までの制限があります。また、借り入れ期間によって返済方法が異なる点にも注意が必要です。
借り入れ期間が6ヶ月または12ヶ月の場合、返済期日到来までに一括で返済する「期限一括償還」で返済する必要があります。また、借り入れ期間が24ヶ月、36ヶ月、60ヶ月の場合、「6ヶ月ごとの元金均等割賦償還」をしなければいけません。
小規模企業共済の借り入れは審査不要!低金利での借り入れも可能!
小規模企業共済では、共済契約で積み立てた掛金の範囲内でお金の借り入れが可能です。「審査不要で借り入れる」「金利が0.9%または1.5%と低金利」とさまざまなメリットがあります。
通常のローンでは審査に通らない可能性がある方や、利息負担を抑えながら借り入れしたい方にとって有力な候補になるでしょう。掛金は全額が所得控除になるため、将来の資金不足の対策をしながら節税できる方法として事業者に有益です。
小規模企業共済を有効活用し、事業の資金繰りに役立てましょう。



