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経営資源集約化税制とは?制度の内容や申請の流れなどを分かりやすく解説

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経営資源集約化税制は、設備投資やM&Aを行う中小企業に対して税を優遇する制度です。上手に活用することで企業の成長を促すことができます。

この記事では、経営資源集約化税制の内容、メリットと注意点、申請の流れを解説します。加えて、以前は経営資源集約化税制の一部だった「賃上げ促進税制」についても解説します。

経営資源集約化税制とは

経営資源集約化税制(正式名称は「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」)とは、以下の2つの制度の総称です。

  • 設備投資減税(正式名称は「中小企業経営強化税制」)
  • 準備金の積立(正式名称は「中小企業事業再編投資損失準備金」)

これらはともに、経営資源の集約化によって生産性の向上を目指す中小企業を支援する制度となっています。

以下の節では、これら2つの制度の内容について解説します。

1.設備投資減税(中小企業経営強化税制)

設備投資減税(中小企業経営強化税制)は、設備投資をした中小企業の税を優遇する制度です。一定の条件を満たす設備投資を行った中小企業は、以下の2つのどちらかの優遇が受けられます。

  • 設備投資にかかった費用をその年度に全額減価償却できる(即時償却)
  • 設備の取得価額の一部(10%または7%)を税額控除できる

減価償却は普通は耐用年数に従って何年かに分けて行いますが、設備投資減税を利用すれば、耐用年数に関係なく1年目に全額減価償却できます。

全額減価償却できれば、設備投資を行った年度の法人税・所得税を大きく抑えることができます。また、減価償却費はプラスのキャッシュフローとなるため、キャッシュフローの健全化という点でも有利です。

即時償却と税額控除はどちらを選んでもよいですが、税額控除しても減価償却は通常どおり行うため、長い目で見ると税額控除のほうが得になると考えられます。しかし、直近では即時償却のほうが有利になることが多いため、ケースバイケースで判断する必要があります。

設備投資減税は、投資の目的によって4つの類型があります。取得する設備に対応した類型で申請する必要があるため、各類型について理解しておくことが大切です。

以下の節では、設備投資減税の4つの類型をそれぞれ解説します。

生産性向上設備(A類型)

生産性向上設備(A類型)とは、生産性が年平均1%以上向上すると認められる設備投資に適用される類型です。最低取得価額と販売開始時期の条件があり、一定以上の金額で比較的新しい設備が対象となります。

最低取得価額と販売開始時期の具体的な条件は以下のとおりです。ちなみに、最低取得価額はA~D類型全てに共通の条件で、販売開始時期はA類型のみに課せられる条件になります。

設備の種類 最低取得価額(A~D類型共通) 販売開始時期(A類型のみ)
機械装置 160万円 10年以内
工具 30万円 5年以内
器具備品 30万円 6年以内
建物附属設備 60万円 14年以内
ソフトウェア 70万円 5年以内

収益力強化設備(B類型)

収益力強化設備(B類型)とは、年平均の投資利益率が5%以上になると認められる設備投資に適用される類型です。

投資利益率は以下の式で算出されます。

  • (営業利益と減価償却費の増加額)÷設備投資額

デジタル化設備(C類型)

デジタル化設備(C類型)とは、事業のデジタル化のための設備投資に適用される類型です。この類型では、以下の3つのデジタル化設備が対象となります。

  1. 遠隔操作(リモートでの業務など)
  2. 可視化(デジタル技術を用いたデータ分析など)
  3. 自動制御化

また、単に3つのいずれかに該当するだけでなく、経営資源の集約化に関連した設備投資である必要があります

経営資源集約化設備(D類型)

経営資源集約化設備(D類型)は、M&Aを行った際に導入する設備投資に適用される類型です。

単に導入するだけでなく、「有形固定資産回転率」または「修正ROA(総資産利益率)」という指標の改善が見込まれる必要があります

2.準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)

準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)は、M&Aで取得した株式の取得価額の一部を「準備金」という名目で損金算入する制度です。

準備金を損金算入すると買い手側の法人税・所得税が少なくなり、コストを抑えてM&Aを実行できます。また、簿外債務などが発覚して減損処理をした時に、準備金を益金算入することで損失を軽減できます

具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 株式を取得した年度:取得価額の70%以内を「準備金」という名目で損金算入する
  2. 取得した次の年度から5年間:準備金を据え置き、株式の売却や減損などがあった場合は、相当額の準備金を益金算入して取り崩す
  3. 据え置き期間終了後:残っている準備金を5年間かけて20%ずつ益金算入して取り崩す

ただし、以下のようなケースは対象外となります。

  • 取得価額が10億円を超える場合
  • グループ企業や親族間のM&A
  • 株式の取得を伴わないM&A(事業譲渡など)

経営資源集約化税制の対象となる事業者

経営資源集約化税制は中小企業を支援する制度のため、以下の2つの条件を満たす事業者のみが対象となります。

  • 租税特別措置法が定める「中小事業者等」に該当する
  • 中小企業等経営強化法が定める「特定事業者等」に該当する

また、制度を利用するには「経営力向上計画」という文書を作成し、認定を受ける必要があります。

以下の節で、経営資源集約化税制の対象となるために必要な、これらの要件について解説します。

1.租税特別措置法が定める「中小事業者等」に該当する

経営資源集約化税制は、租税特別措置法が定める「中小事業者等」に該当する事業者のみが利用できます

中小事業者等の主な要件は以下のとおりです。

  • 青色申告書を提出している
  • 資本金・出資金が1億円以下
  • 資本金や出資金のない事業者(個人事業主やNPO法人など)は、常時使用する従業員数が1000人以下
  • 協同組合等(農業協同組合や商工組合など)

ただし、グループ企業の子会社や、所得が一定額以上(平均15億円以上)ある事業者は対象外となることがあります。

2.「経営力向上計画」の認定を受けている

経営力向上計画とは、経営力の向上をどのように実施していくかを記載した文書で、認定を受けると税制・金融・法律に関するさまざまな支援措置を受けることができます経営資源集約化税制は、経営力向上計画の認定によって受けられる支援措置の一つです。

経営力向上計画は3枚程度の文書で、会社の概要や現状、経営力向上の内容や目標などを記載します。経営力向上計画の作成をサポートする「認定経営革新等支援機関」が全国にあり、支援を受けながら作成できます。申請から認定までにかかる期間はおおむね30日前後です。

3.中小企業等経営強化法が定める「特定事業者等」に該当する

中小企業等経営強化法が定める「特定事業者等」とは、従業員数が2000人以下の法人や個人事業主などのことです。

経営力向上計画の申請ができるのは、特定事業者等に該当する事業者のみです。経営資源集約化税制を利用するには経営力向上計画の認定が必要なので、中小事業者等であると同時に特定事業者等にも該当する必要があります。

経営資源集約化税制を導入するメリット

中小企業が経営資源集約化税制を導入すると、さまざまなメリットが得られます。メリットを理解して自社に導入すべきか判断しましょう。

経営資源集約化税制を導入する主なメリットは以下のとおりです。この章ではこれらのメリットについて解説します。

  • 設備投資の際に税金面で有利になる
  • M&Aのリスクを軽減できる
  • M&Aの際のキャッシュアウトを軽減できる
  • M&Aによる事業承継が行いやすくなる
  • 生産性向上による企業の成長が期待できる
  • 業態転換・ビジネスモデルの変革を行いやすくなる

設備投資の際に税金面で有利になる

設備投資は事業の成長に欠かせませんが、中小企業はコストの問題で実行できないことが少なくありません。しかし、設備投資減税を利用すれば、コストを抑えて設備投資を実行できます

M&Aのリスクを軽減できる

M&Aは事業の成長や新規事業への進出、事業承継などさまざまなメリットがありますが、リスクを伴うため実行を躊躇することもあります。特に中小企業M&Aは、大企業のM&Aに比べてリスクが高い傾向があるといわれています。

例えば、中小企業は大企業に比べてコンプライアンス意識が低いことが多く、M&A実行後に簿外債務が発覚するなどのトラブルが起こることがあります。通常はデューデリジェンスなどでリスクを極力排除しますが、中小企業はデューデリジェンスにあまりコストをかけられないことが多いです。

準備金の積立制度は、通常は費用にできない株式の取得価額を費用計上することで、M&Aにともなうリスクを軽減できます。

M&Aの際のキャッシュアウトを軽減できる

M&Aは株式の取得に多額の資金が必要になるため、中小企業は実行が難しいことが少なくありません。M&Aによって経営力向上が期待できるにもかかわらず、資金面の問題で実行できないとすれば大きな機会損失だといえます。

準備金の積立制度は、株式の取得価額の一部を損金算入することで、その年度の法人税・所得税を抑えることができます。結果として、M&Aの際のキャッシュアウトが軽減されるため、資金力に不安のある中小企業でもM&Aが行いやすくなります

M&Aによる事業承継が行いやすくなる

2020年代は、団塊世代の経営者が高齢になり引退していく時期です。しかし、帝国データバンクの調査によると、2023年時点で約54%の経営者が後継者未定というデータが出ています。

後継者がいない中小企業が廃業していくと、雇用やGDPの喪失に加え、中小企業が培った技術やノウハウなども失われかねません。

かつては親族が家業を継ぐことが多かったですが、近年は親族間の事業承継が減少傾向です。そのため、M&Aによる事業承継が、中小企業を存続させる手段として重要性が高まっています。

準備金の積立および設備投資減税のD類型は、M&Aによる株式取得や設備投資を支援する制度です。これらの制度を活用することで、M&Aによる事業承継が行いやすくなります。

生産性向上による企業の成長が期待できる

経済産業省の調査によると、M&Aを行った企業は、行わない企業に比べて生産性が向上するというデータが出ています。もちろん、設備投資も生産性向上に不可欠な要素です。

経営資源集約化税制は、生産性向上による成長を目指す中小企業を支援する制度です。経営力向上計画の認定が必須なため、具体的な事業計画や目標設定ができるのも利点だといえます。

業態転換・ビジネスモデルの変革を行いやすくなる

M&Aや設備投資は、業態転換・ビジネスモデルの変革に有効な手段です。特にポストコロナ社会においては、新たな日常に対応した業態転換やビジネスモデル変革の重要性が高まっているといえます。

M&Aや設備投資を支援する経営資源集約化税制は、業態転換やビジネスモデル変革を目指す中小企業にとって有用な制度です。

経営資源集約化税制を導入する際の注意点

経営資源集約化税制にはさまざまなメリットがありますが、注意点もあります。メリットと注意点を理解したうえで、制度を利用するか検討しましょう。

主な注意点は以下のとおりです。この章ではこれらの注意点について解説します。

  • 設備投資減税で導入できる設備には条件がある
  • M&Aを行う場合はM&Aと同時進行で申請する必要がある
  • 準備金の積立は免税になるわけではない
  • 適用期間に期限がある

設備投資減税で導入できる設備には条件がある

設備投資減税には最低価額が設けられており、それ以下の価額の設備は対象外となります。また、D類型は設備の販売開始時期の条件もあり、古い設備は対象外です。

実際はこれ以外にも細かい条件があるので、申請の際は確認しておく必要があります。詳細な条件は、「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」などを参照するか、認定経営革新等支援機関に問い合わせるなどして確認しましょう。

一例として、設備投資減税の詳細条件の一部を紹介しておきます。

  • 発電機器は電力の販売を主目的とするものは対象外となることがある
  • 医療機器は対象外となることがある
  • 研究開発用のソフトウェアは対象外

M&Aを行う場合はM&Aと同時進行で申請する必要がある

経営資源集約化税制のうち、「準備金の積立」と「設備投資減税D類型」はM&Aの際に利用するものです。つまり、M&Aのスケジュールをこなしながら、同時進行で経営資源集約化税制の申請も行うことになります

経営力向上計画の認定には30日程度かかるので、うまくスケジュール管理しないとM&Aの手続きに影響が出る可能性もあります。

準備金の積立は免税になるわけではない

準備金の積立制度は株式取得した年度の税金を抑えられますが、積立金は据え置き期間後に益金算入して取り崩すので、免税になるわけではありません

あくまで税金の一部を後の年度に繰り延べて、株式取得時の負担を抑える制度であることを理解しておきましょう。

適用期間に期限がある

経営資源集約化税制には適用期限があり、期限内に申請しないと利用できません。各制度の適用期限は以下のとおりです。

設備投資減税 令和7年3月31日まで
準備金の積立 令和6年3月31日まで

ただし、経営資源集約化税制の期限は過去に延長されているので、今回も延長される可能性もあります。

所得拡大促進税制は「賃上げ促進税制」に引き継がれ継続

賃上げ促進税制とは、従業員の給与を上げた事業者に対して、増加分の一部を税額控除する制度です。かつて経営資源集約化税制には「所得拡大促進税制」という制度がありましたが、令和4年4月1日からは「賃上げ促進税制」に引き継がれ、経営資源集約化税制とは独立した制度として継続しています。

賃上げ促進税制は、所得拡大促進税制に比べて税額控除率の増加などの改善が行われています。さらに、経営力向上計画の認定も不要となったため、中小事業者等や特定事業者等に該当しない事業者も利用できるようになりました。

賃上げ促進税制には「大企業向け」「中堅企業向け」「中小企業向け」の3種類があり、さらに「教育訓練費」「子育てとの両立・女性活躍支援」という2つの上乗せ要件があります。

この章では、これらの制度の内容を解説します。なお、ここで解説する内容は令和5年12月政府決定時点のもので、今後の国会審議等で内容が変更される可能性もあります。正式決定は令和6年5月頃の予定で、決定次第経済産業省や中小企業庁のHPなどで公表されます。

1.大企業向け

賃上げ促進税制の「大企業向け」は、中小事業者等と特定事業者等に該当しない事業者に適用される制度です。青色申告書を提出している企業や個人事業主なら誰でも申請できます。

前年度と比較した給与の増加率によって、下の表に示す税額控除が受けられます。

給与総額の増加率(前年度比) 税額控除率
+3% 10%
+4% 15%
+5% 20%
+7% 25%

2.中堅企業向け

賃上げ促進税制の「中堅企業向け」は、従業員2000人以下の事業者に適用される制度です。給与総額の増加率と税額控除率は下の表のとおりで、大企業向けより有利な内容になっています

給与総額の増加率(前年度比) 税額控除率
+3% 10%
+4% 25%

3.中小企業向け

賃上げ促進税制の「中小企業向け」は、中小企業者等に該当する事業者に適用される制度です。給与総額の増加率と税額控除率は下の表のとおりで、中堅企業向けよりさらに有利な内容になっています

給与総額の増加率(前年度比) 税額控除率
+1.5% 15%
+2.5% 30%

中小企業は控除の繰越が可能

中小企業向けの賃上げ促進税制は、控除しきれなかった分を最大5年間繰り越すことができます。例えば、申請した年度が赤字で控除できなくても、その後5年間で黒字が出た年度に控除できます。

上乗せ要件1. 教育訓練費の上乗せ要件

前節で解説した基本の控除に加えて、上乗せ要件を満たすことでさらに控除率が上がります。

上乗せ要件の一つ目は、教育訓練費の上乗せ要件です。教育訓練費を前年度より一定以上増加させると、税額控除率が上乗せされます

要件を満たす教育訓練費の増加率と、上乗せ控除率は下の表のとおりです。大企業向け・中堅企業向けと中小企業向けで異なり、中小企業向けのほうが有利になっています。

対象となる費用は、従業員に研修や技術指導などを行う際の、講師への報酬や施設利用料などです。

ちなみに、上乗せ要件は基本となる賃上げ要件を満たした場合のみ適用されるもので、給与総額を増やしていない状態で教育訓練費だけを増やしても適用されないので注意しましょう。

類型 教育訓練費の増加率(前年度比) 上乗せ控除率
大企業向け・中堅企業向け +10% +5%
中小企業向け +5% +10%

上乗せ要件2. 子育てとの両立・女性活躍支援の上乗せ要件

厚生労働省が推進している、子育てとの両立(くるみん認定)や女性活躍支援の要件(えるぼし認定)を満たすことで、控除率が+5%上乗せされます

くるみんとえるぼしはそれぞれ2段階・4段階のランク分けがあり、一定以上のランクの認定を受ける必要があるのが注意点です。大企業向け・中堅企業向け・中小企業向けそれぞれで必要になるランクは下の表のとおりです。

大企業向けが一番条件が厳しく、2番目が中堅企業向け、一番ゆるいのが中小企業向けとなっています。

類型 必要なくるみん・えるぼしの認定ランク
大企業向け 「プラチナくるみん」または「プラチナえるぼし」
中堅企業向け 「プラチナくるみん」または「えるぼし3段階目以上」
中小企業向け 「くるみん以上」または「えるぼし2段階目以上」

くるみんとえるぼしの認定ランクは以下のとおりです。

【くるみんの認定ランク】

  1. プラチナくるみん
  2. くるみん

【えるぼしの認定ランク】

  1. プラチナえるぼし
  2. えるぼし3段階目
  3. えるぼし2段階目
  4. えるぼし1段階目

経営資源集約化税制申請の流れ

経営資源集約化税制の申請手続きは、経営力向上計画の認定や確認書の取得などいくつかのプロセスがあり、初めて利用する方には分かりにくい部分もあります。申請を行う前に、流れをきちんと把握しておきましょう。

ここでは、設備投資減税と準備金の積立それぞれの場合について、申請の流れを解説します。

基本的なM&Aの流れ

設備投資減税D類型と準備金の積立は、M&Aの手続きと同時進行で申請します。よって、まずはM&Aの基本的な流れを理解しておくことが大切です。この節では、基本的なM&Aの流れを解説します。

1.M&Aを行う相手の選定と交渉

M&A仲介会社などを通して、M&Aを行う相手の選定を行います。仲介会社以外にも、M&Aマッチングサイトや事業承継・引継ぎ支援センターなど、相談先としていくつかの選択肢があります。

仲介会社などを通して希望に合う相手企業を選定し、相手企業の経営者と面談してM&Aの大まかな条件を交渉していきます

2.基本合意締結

相手企業の経営者と面談して大まかな契約内容が固まった時点で、基本合意契約を締結するのが一般的です。

基本合意契約は最終決定ではないので、後で内容を変更することができます。しかし、デューデリジェンスへの協力義務や、これ以降は他の企業と交渉しないことを約束する独占交渉権を付与するため、M&Aの不可欠なプロセスの一つとなっています。

3.デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業の財務状況などを調査し、本当にM&Aを行っても大丈夫か確認することです。経営力向上計画では、デューデリジェンスのことを「事業承継等事前調査」と表記しています。

一般にM&Aでは、基本合意締結後にデューデリジェンスを実施します。

4.最終契約締結

デューデリジェンスの結果を踏まえて最終条件交渉を行い、買い手・売り手両者が合意すれば、最終契約を締結してM&Aが成立します

5.M&Aの実行

最終契約締結後は、契約内容に従って株式取得などを行い、実際にM&Aを実行していきます。このM&Aの実行プロセスは「クロージング」と呼ばれます。

設備投資減税(中小企業経営強化税制)申請の流れ

設備投資減税(中小企業経営強化税制)申請の流れは以下のとおりです。

  1. 事前確認
  2. 確認書または証明書の取得
  3. 経営力向上計画の申請・認定
  4. 設備の取得・事業での使用
  5. 税務報告

1.事前確認

B,C,D類型では、確認書・証明書を取得する前に「事前確認」という作業を行います。事前確認先の機関は、B,D類型が税理士または公認会計士、C類型が認定経営革新等支援機関です。

認定経営革新等支援機関は、中小企業庁HPの「経営革新等支援機関認定一覧について」で確認できます。

2.確認書または証明書の取得

申請する設備が設備投資減税の各類型に該当しているかについて、審査を受け証明書または確認書という文書を取得します。

確認書・証明書の取得先は、A類型が各工業会等、B,C,D類型が経済産業局です。工業会等が発行するものを証明書、経済産業局が発行するものを確認書と呼びます。

工業会等の証明書は、設備を導入する企業(設備投資減税を申請する企業)が、設備を販売しているメーカーに依頼して、メーカーが工業会等に証明書の発行を申請しなければならないのが注意点です。

申請する工業会等は、取得する設備の種類によって変わります。例えば飲食業の設備なら、「日本食品機械工業会」「日本厨房工業会」などです。申請先の工業会等の一覧は、中小企業庁の「対象資産区分及び対応工業会等リスト」で確認できます。

証明書の取得は数日から最大2ヶ月程度かかるので、早めに申請しておくことが大切です。特にD類型では、基本合意締結前に確認書を取得できるように準備する必要があります。

2.経営力向上計画の申請・認定

確認書・証明書を取得したら、経営力向上計画を作成し、申請する業種を管轄する主務大臣から認定を受けます

D類型では、M&Aの基本合意締結後から最終契約締結までの間に、経営力向上計画を申請し認定を受ける必要があります。認定には30日程度かかるので、早めに準備することが大切です。

3.設備の取得・事業での使用

経営力向上計画の認定を受けたら、実際に設備を取得し、計画に従って事業で使用します。

4.税務報告

事業年度が終了したら、設備の取得および設備投資減税について税務申告します。

申請の手順はある程度柔軟な対応が可能

設備投資減税の申請は原則として先ほど解説した流れで行いますが、手順に関してはある程度柔軟な対応が可能です。

例えば、経営力向上計画を作成する前に設備を取得したり、確認書・証明書の取得と経営力向上計画の申請を同時進行で行うことができます

具体的にどのような手順が可能かは、中小企業庁の「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」に詳細が記載されています。

準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)申請の流れ

準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)の申請は以下の手順で行います。M&Aと同時進行で行う必要があるので、流れをよく理解しておくことが大切です。

順序 手続きを行うタイミング 手続きの内容
1 基本合意締結後~最終契約締結前 経営力向上計画の申請・認定
2 M&Aの実行後 デューデリジェンスの内容を報告し確認書の交付を受ける
3 事業年度終了後 準備金の損金算入を税務申告
4 毎事業年度終了後(最大5年間) 「事業承継等状況報告書」を提出

1.基本合意締結後~最終契約締結前:経営力向上計画の申請・認定

基本合意締結後から最終契約締結前までの間に、経営力向上計画の申請と認定を行います。

準備金の積立を申請する際は、経営力向上計画と一緒に、デューデリジェンスの内容を記した「事業承継等事前調査チェックシート」を提出します。

設備投資減税のD類型を併用する場合は、設備投資に関する内容も一緒に記載して申請します。別々に経営力向上計画を作成する必要はありません。

2.M&Aの実行後:デューデリジェンスの内容を報告し確認書の交付を受ける

最終契約を締結してM&Aを実行したら、M&Aを実行したことおよびデューデリジェンスの内容を主務大臣に報告し、確認書の交付を受けます

設備投資減税のD類型を併用している場合は、確認書の交付後に設備を取得します。前節で設備投資減税の手順はある程度柔軟な対応が可能と解説しましたが、D類型は確認書交付後に設備を取得しなければなりません。

3.事業年度終了後:準備金の損金算入を税務申告

事業年度が終了したら、準備金の損金算入を税務申告します。設備投資減税のD類型を併用している場合は、設備投資に関する内容も同様に申告します。

4.毎事業年度終了後(最大5年間):「事業承継等状況報告書」を提出

次年度以降は、経営力向上計画に記載した実施時期(3年から5年)が終了するまで、毎事業年度終了後に「事業承継等状況報告書」という文書を提出します

まとめ

経営資源集約化税制は、中小企業の設備投資やM&Aを支援する有用な制度です。制度の内容や申請の流れを理解して有効活用しましょう。また、所得拡大促進税制は経営資源集約化税制から独立し、より有用な「賃上げ促進税制」として継続しているので、こちらも積極的な活用が期待されます。

経営資源集約化税制は、適用期限が令和7年3月31日または令和6年3月31日までとなっているので、期限を過ぎないように注意しましょう。ただし、過去に期限の延長が行われているので、今後も延長されるかについては国のアナウンスをHPなどで適宜チェックしてください。

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