人件費が払えないと、会社や従業員に大きな悪影響を及ぼすだけでなく、罰金などの刑罰の対象となる可能性もあります。よって、人件費が払えない時に、どのように対応すればいいかを理解しておくことが重要です。
この記事では、人件費が払えない時の対応策や、どうしても人件費が払えない時に利用できる制度を解説します。
また、賃金支払いの際に会社が守らなければならない「賃金支払いの5原則」についても解説します。
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人件費が払えない時の対応策
人件費が払えない時に考えられる、主な対応策は下表のとおりです。資金を借りて調達する以外に、支払いサイトを調整して手元の現金を増やすなどいくつかの手段があります。
整理解雇は最終手段なので、まずはそれ以外の手段を尽くす必要があります。
| 入金が早い資金調達手段を使う | |
|---|---|
| 役員報酬を減額して人件費の支払いに充てる |
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| 売掛金や買掛金の支払サイトを調整する |
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| 経営者による貸し付け |
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| 従業員に事情を説明して待ってもらう |
|
| 整理解雇を行う |
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入金が早い資金調達手段を使う
人件費が払えない時は急ぎの資金調達が必要なため、銀行融資では間に合わない可能性があります。
よって、人件費が払えない時の資金調達としては、ビジネスローンやファクタリングといった入金が早い手段のほうが有用です。
ファクタリングとは、売掛金を受け取る権利(売掛債権)をファクタリング会社に譲渡して、譲渡代金を受け取るサービスです。ファクタリングは即日から数日程度で入金できることが多く、急ぎの資金調達に適しています。
ビジネスローンとファクタリングは性質の違う資金調達方法なので、自身の状況に適したほうを選ぶことが大切です。
両者の主な違いは下表のとおりとなります。
| 相違点 | ビジネスローン | ファクタリング |
|---|---|---|
| 返済の必要 |
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| 審査で重視される点 |
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| 調達できる金額 |
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| コスト |
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| 信用情報への影響 |
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役員報酬を減額して人件費の支払いに充てる
役員報酬の減額は、法人税法等が定める手順で行わないと、減額前に支払った減額相当分が損金算入できず税金面で不利になります。
法人税法等が定めるところによると、役員報酬の減額は、通常は事業年度の開始日から3ヵ月以内に、株主総会で決議して行わなければなりません。これに従わない場合は、減額前に支払った減額相当分が損金不算入となります。
しかし、経営状況が著しく悪化しており、役員報酬を減額せざるを得ない場合は、3ヵ月を過ぎて減額しても損金算入が可能です。
ただし、「法人税基本通達」によると、著しい業績の悪化について「一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれない」とされています。
よって、現在の状況が経営の著しい悪化にあたるかについては、慎重に判断する必要があります。
売掛金や買掛金の支払サイトを調整する
売掛金を早めに払ってもらったり、買掛金の支払いを延ばしてもらったりすると、一時的に手元の現金が多くなるため、これを人件費の支払いに充てることができます。
ただし、こういった支払サイトの調整は、取引先の都合も考慮しないと同意してもらえない可能性が高くなります。また、人件費が払えないことが知られると、取引先からの印象が悪くなるのも注意点です。
取引先に知られたくない場合は、ファクタリングや請求書カード払いを利用する手段もあります。
請求書カード払いとは、買掛金をカードで支払うことで、支払いをカードの引落日まで先延ばしにできるサービスです。手数料がかかりますが、取引先に知られずに支払いを後回しにできます。
経営者による貸し付け
経営者等から会社への借入(役員借入金)は利息がゼロでもよいので、金融機関から借りるより利息の面では有利になります。また、審査などの手間がかからないのも利点です。
ただし、あまり役員借入金に頼りすぎると債務超過になり、金融機関からの信用が下がる原因にもなります。
また、経営者からの借入といえど、会社側は返済義務があるのも注意点です。
従業員に事情を説明して待ってもらう
どうしても人件費が払えない時は、従業員に説明して一旦待ってもらわざるを得なくなります。
従業員に説明する時は、誠実な態度で謝罪したうえで、なぜ払えないのか、いつ払える見込みなのかを明確に説明することが大切です。
また、遅れてしまってから説明するのではなく、遅れる可能性が高くなった時点で、給料日前に説明したほうがトラブルが起こりにくくなります。
加えて、口頭での説明だけでなく、支払予定日などを明記した書面を作成したほうが、信頼が得やすくトラブル防止にもつながります。
もし、会社が倒産する可能性が高い、または今後も払える見込みが低い場合は、未払賃金立替払制度があることを従業員に周知することも大切です。
なお、給与を遅延して支払った場合は、遅れた日数分の遅延損害金も支払う必要があります。
整理解雇を行う
解雇は労働契約法によって濫用してはならないと定められているため、慎重に行わなければなりません。
整理解雇については、「整理解雇の4要件」を満たすことが、妥当な解雇かどうかの判断基準となっています。4要件は下表のとおりです。
| 要件 | 概要 |
|---|---|
| 解雇の必要性 |
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| 解雇回避努力 |
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| 人選の合理性 |
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| 手続きの妥当性 |
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人員削減の必要性
人員削減の必要性は、財務諸表などの客観的資料で示すことが重要です。単にコスト削減したい、生産性を上げたいなどの理由では、要件を満たさない可能性が高くなります。
解雇回避努力
以下のような解雇回避の努力を、すでに尽くしている必要があります。
- 役員報酬の減額
- 希望退職者の募集
- 出向・配置転換などによる解雇回避の試み
人選の合理性
解雇される者を選ぶ際は、会社側の都合や主観を排除することが重要です。
例えば、下記のような判断基準は、合理性があるとみなされやすいといわれています。
- 欠勤・遅刻・早退の少なさといった勤怠状況
- 共働きの有無や扶養家族の多さといった家計への影響の大きさ
手続きの妥当性
従業員や組合との協議においては、以下のような対応をすることで、妥当な手続きとみなされやすくなるといわれています。
- 決算書などの資料を従業員や組合に公開する
- 一回だけではなく複数回の説明・協議を行う
- 整理解雇する直前ではなく十分な時間的余裕を持って説明・協議を行う
会社が守らなければならない「賃金支払いの5原則」とは
人件費の支払いには、労働基準法第24条で定められている通称「賃金支払いの5原則」と呼ばれるルールがあります。賃金は単に払えばよいのではなく、この5原則に従って支払わなければなりません。
賃金支払いの5原則は下表のとおりです。なお、月1回以上の支払いと一定期日での支払いを1つとみなして「4原則」と呼ばれることもあります。
| 通貨払い |
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|---|---|
| 直接払い |
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| 全額払い |
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| 月1回以上の支払い・一定期日での支払い |
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通貨払い
賃金は原則として日本円で支払わなければなりません。現物支給は換金しづらいことがあるのに加えて、価値が不安定であるなどの理由から原則禁止されています。
現物支給の主な例は、自社製品・株式・商品券などです。
ただし、労働組合と経営者が合意して労働協約を結べば、例外的に現物支給も可能になります。
デジタル払いは4サービスのみ利用可能
デジタル払いについては、2026年2月時点では下表の4サービスのみ利用可能です。ただし、サービスごとに上限額が10万円から30万円に制限されています。
国は賃金のデジタル払いに新規参入したい業者を受け付けているため、利用可能なサービスは今後増えていくと考えられます。
| サービス名 | 運営会社 | 上限額 |
|---|---|---|
| PayPay給与受取 | PayPay株式会社 | 20万円 |
| COIN+(スタンダード) | 株式会社リクルートMUFGビジネス | 30万円 |
| 楽天ペイ給与受取 | 楽天Edy株式会社 | 10万円 |
| au PAY 給与受取 | auペイメント株式会社 | 10万円 |
直接払い
中間搾取を防止するなどの理由から、賃金は原則として本人に直接支払わなければならないと定められています。
例えば、学生アルバイトの給与を親の口座に振り込むといったことは原則禁止です。
ただし、入院中などで本人がどうしても直接受け取れない時に、家族が代わりに受け取ることは例外的に認められます。
また、未払い賃金で法的措置を取った時に、担当弁護士が代理で受け取ることも可能です。加えて、給与の差押えも例外となります。
全額払い
労働者の生活資金を十分に確保するなどの理由から、賃金は原則として一度に全額を支払わなければなりません。
よって、人件費が払えないからといって、分割払いにしたり、来月まとめて2ヶ月分支払うといったことはできません。
なお、社宅費や労働組合費などの天引きについては、会社と従業員が合意して労使協定を結べば可能となります。
月1回以上の支払い・一定期日での支払い
定期的な支給により労働者の生活を安定させるなどの理由から、賃金は月1回以上かつ一定期日に支払う必要があります。
一定期日とは、例えば「毎月25日」のように同じ日に支払うことです。「毎月第三月曜日」などの支払い方法は、月によって日が変わるのでNGとなります。
ただし、月末払いについては、月によって日が変わるものの例外として認められています。
人件費が払えない時に受ける可能性がある罰則
人件費の支払いについては労働基準%



