会社設立時に自己資金が不足している不安を解消したいと思っても、資本金を借り入れで調達できるのか迷う人も少なくありません。結論から言うと、借り入れや融資で調達した資金は、会社設立時の資本金として利用できません。
本記事では、資本金の定義や借入金との違い・資本金を調達する方法などをわかりやすく解説します。さらに、増資の方法や資本金の金額を決めるポイント・注意点についてもまとめました。
本記事を読めば、借入金に頼らない資金調達の方法が分かり、融資や税負担の軽減に役立ちます。自分に合った資本金の調達方法を把握して、資金繰りの改善や会社の信用力を向上させていきましょう。
借入金を会社設立時の資本金に充てられる?
結論として、借入金は会社設立時の資本金として計上できません。資本金は会社の資産の一部で、会計上も法的にも返済の義務がある借入金の資本扱いが認められていないためです。
借入金を資本金に含めた場合に想定されるリスクや、借入金を正しく資本へ振替する方法を以下で解説します。
- 借入金の資本金への組み入れは違法
- 借りたお金を資本金に組み入れる3つのリスク
- DESを利用すれば資本金に振替できる
借入金を資本金に含めるリスクを理解したうえで、適正な手続きを踏んで資金調達を行いましょう。
借入金の資本金への組み入れは違法
借入金を会社設立時の資本金へ組み入れる行為は違法であり「公正証書原本不実記載等罪」の罪に問われる可能性があります。会社法52第条の2では、出資を仮装した場合は発起人や役員に責任が問われます。
公正証書原本不実記載等罪や会社法第52条の2の違反の対象となるのが「見せ金」です。見せ金とは、会社設立時に発起人が第三者から資金を調達して、資本金があるかのように見せる行為を指します。
会社設立時に自己資金が少なくて融資が受けにくい場合、見せ金が行われるケースがあります。実際に見せ金が発覚した場合は、資本金の全額を会社へ支払わなければなりません。
借りたお金を資本金に組み入れる3つのリスク
借りたお金を資本金に組み入れると、次の3つのリスクが生じます。
- 金融機関からの融資が受けられなくなる
- 見せ金が課税対象になる
- 会社設立が無効になる
金融機関が融資の審査を行う際には、自己資金の有無を確認するために通帳の内容をチェックします。金融機関の担当者が通帳の内容を確認した際に「出資金に借入金を使った見せ金」があると、不審な入出金として特定されるケースが多いです。審査の結果から、資本金を偽装していると判断され、融資が受けられなくなります。
見せ金は会計上、役員貸付金として出資した代表者等にお金を貸し付けるという処理を行います。そのため、実際に出資者が貸し手に借入金を返済しても、帳簿上は会社が出資者にお金を貸したままの状態です。結果として、見せ金の金額がそのまま出資者の所得とみなされ、所得税が課税されます。
会社法では、設立時に定款で定めた金額を実際に出資するように義務付けられています。見せ金の場合は、定款で定めた金額を出資したと認められず、資金不足により会社設立が無効です。結果として、見せ金を使わず、実際の資金の範囲内で会社設立の手続きをやり直さなければなりません。
DESを利用すれば資本金に振替できる
DES(債務の株式化)を利用すれば、借入金などの債務を資本金に振替できます。DESとは、企業が抱える借入金などの負債を株式に転換し、借金の返済義務を解消する手法です。代わりに債権者が株主となり、持ち株割合に応じて企業の経営に関わります。
借入金を資本金への変換により、返済や利息の支払いが不要になり、キャッシュフローの正常化が可能です。借入金が減少し資本金が増えれば、取引先や金融機関からの信頼が高まり、ビジネスチャンスが広がるメリットもあります。
信用力が向上すれば、金融機関からの追加融資を受けやすくなり、事業拡大や新たな投資を進めやすくなります。
資本金とは?借入金との違いを解説
資本金とは、一般に会社を運営する際の元手となる資金です。出資者が会社に提供するお金であり、会社の財力や信用力、経済的な基盤を示すうえでも重要な要素です。
資本金は、主に創業者の自己資金や増資時に募った出資者からの資金によって構成されます。資本金が多くなると、金融機関から資金を借り入れる際に有利に働きます。
以下に資本金と借入金の違いをまとめました。
| 項目 | 資本金 | 借入金 |
| 定義 | 会社設立時や増資時に株主が拠出するお金 | 銀行や金融機関、取引先などから借りたお金 |
| 財務上の位置づけ | 純資産 | 負債 |
| 資金提供者 | 株主 | 金融機関・取引先など |
| 返済義務 | なし | あり |
| 利息 | 発生しない | 発生する |
| 経営への影響 | 出資比率に応じて議決権を持つ | 議決権なし |
| 信用力への影響 | 資本金が多いほど会社の安定性を示しやすい | 借入金が多すぎると財務リスクが高まる |
資本金は返済不要で会社の基盤を作るお金、借入金は返済義務を伴う他人からの資金調達という大きな違いがあります。また、以下のような返済義務があるのは、資本金に計上できません。
- 銀行融資
- カードローン
- 親族や知人からの借り入れ
資本金を調達する4つの方法
資本金を調達する方法は、以下のとおりです。
- 自己資金を充当する
- 出資者から資金を調達する
- クラウドファンディングで出資を募る
- DESを利用して資金を調達する
資本金の調達方法を理解したうえで、自分のビジネスに最も適した資金調達方法を選びましょう。
自己資金を充当する
資本金の調達方法としては、自分が所有しているお金である自己資金を充当するのが最も理想的です。
自己資金の例として、以下のような資産が挙げられます。
- 預貯金
- 退職金
- 株式などの資産の売却益
- 贈与されたお金
他者からの出資とは異なり、自己資金であれば経営権を握られる心配がなく、資金の使い道も自由に決められます。また、自己資金をどのくらい準備できるかによって、受けられる融資の上限も変わります。
そのため、事業を始める前にできるだけ多くの自己資金を準備しておくのがおすすめです。
出資者から資金を調達する
資本金を増やすための代表的な手段は、出資者からの出資を受け入れ、新しい株式を発行する方法です。
調達した資金は経営資源として自由に使用でき、事業拡大や新分野への進出、設備投資など幅広い用途に活用できます。株式の発行によって得られた資金は、借入金とは異なり、返済する必要がありません。
ただし、出資者から資金を調達する場合は、次の点に注意が必要です。
- 原則として、出資してもらうと相手に議決権が生じる
- 出資割合によっては会社の決定権を握られる可能性がある
- 複数人で出資すると自分の議決権割合が低くなる
経営者は、全体の株式の3分の2超、または少なくとも過半数を保有しておくのが望ましいです。
クラウドファンディングで出資を募る
クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の人々から資金を集める仕組みです。群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語であり、近年注目を集めています。
クラウドファンディングの出資の形式は、以下の3つがあります。
- 商品やサービスを受け取る購入型
- お金を寄付する寄付型
- 株式の購入を通じて出資する投資型
クラウドファンディングのうち、投資型に関しては資本金や資本準備金として計上されます。クラウドファンディングの場合、資金調達と同時に宣伝効果も期待できるため、顧客獲得も見込める点が魅力です。
ただし、クラウドファンディングには、次のような注意点もあります。
- 魅力的な事業内容でなければ資金を集めるのは難しい
- 資金調達までの期間が長く、管理コストが高くなる恐れがある
- 事業内容や商品を競合他社に模倣されるリスクがある
クラウドファンディングで資金調達を考える場合、事業の目的や将来のビジョンを具体的に整理して伝えましょう。
DESを利用して資金を調達する
借入金などの債務を資本と交換する方法であるDESを利用して、資本金を増やすのも一つの方法です。
負債が減少し資本金が増えると、資金繰りの改善が期待でき、取引先や金融機関からの信頼度が向上するためビジネスチャンスが広がります。
ただし、株式を債権者が保有するため、持ち株比率によっては経営に干渉されるリスクがあります。新株発行により既存株主の持ち株比率が薄まり、将来の株主としての利益を一部犠牲にするため、慎重な判断が必要です。
また、資本金が1,000万円以上になると、設立初年度から消費税の納税義務が発生する点にも注意しましょう。
参考:企業再生税制適用場面においてDESが行われた場合の債権等の評価に係る税務上の取扱いについて|国税庁
会社設立後でも資本金は増やせる
資本金は会社設立後でも増資によって増やせます。本章では、増資について以下のポイントを整理します。
- 増資をする方法
- 増資をする3つのメリット
- 増資をする3つのデメリット
増資のメリットやデメリットを把握したうえで、自社の成長段階や目的に合った最適な資金調達方法を検討しましょう。
増資をする方法
増資をする方法は、以下の3種類があります。
| 種類 | 内容 |
| 株主割当増資 | 既存の株主に持ち株割合に応じて新たな株式を購入する権利を与える方法 |
| 第三者割当増資 | 会社が選んだ特定の第三者に対して新株を発行する方法 |
| 公募増資 | 不特定多数の投資家に対して株式を公開募集し、広く一般から資金を集める方法 |
比較的少額な資本金で会社を設立し、事業が軌道に乗ってから増資を行うのも一つの方法です。
ただし、公募増資や第三者割当増資を行う場合は、議決権の割合が減少するため、会社の経営に影響を与えます。特に、株主総会の普通決議に必要な過半数や、特別決議に必要な3分の2といった持ち株比率には注意しておきましょう。
増資をする3つのメリット
増資をするメリットは以下のとおりです。
- 返済の義務がない
- 企業としての信用力が向上する
- 事業の資金繰りが改善される
増資とは新たに株式を発行し、投資家に購入してもらい、資金を調達する方法です。増資による資金調達は、返済義務を負わずに資金を確保できるため、資金繰りに余裕が生まれます。銀行融資と異なり、利息の支払いも不要なため、資金調達後の経営を圧迫する心配がありません。
資本金の額は、企業の信用力を判断するうえで重要な指標の一つです。増資によって資本金が増えると金融機関や投資家から信用度が高いと評価され、資金調達がよりスムーズになります。会社の信用度が向上すれば、新規取引先の獲得や業績の向上も期待できます。
また、増資は融資と異なり負債が増えないため、事業の資金繰りが改善されるのもメリットの一つです。経営破綻のリスクを抑えながら、将来の成長を見据えた設備投資も積極的に行えます。
増資をする3つのデメリット
増資をするデメリットは以下のとおりです。
- 税制上の優遇措置が受けられなくなり、課税負担が増える
- 配当金の支払い義務がある
- 増資の手続きのコストがかかる
増資を行うと、税制上の優遇措置が受けられなくなり、結果として課税負担が増える場合があります。
例えば、会社設立から2年間は、原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし、資本金が1,000万円以上の会社は免除措置の対象外となり、設立初年度から消費税を納めなければなりません。また、資本金が1,000万円を超えると、法人住民税の均等割額が上がるデメリットもあります。
また、事業で利益が生じた場合には、配当という形で株主に利益を還元する必要があります。配当金は保有株式数に応じて支払われるため、発行した株式数が増えるほど多くの配当金を支払わなければなりません。
さらに、増資によって登記事項に変更が生じた場合は、変更登記の手続きが必要になります。資本金の額は登記事項に含まれるため、増資により金額が変わった場合は、法務局への変更登記が義務付けられています。
変更登記の手続きは通常、司法書士に依頼するための費用や登録免許税も別途必要です。登録免許税は、以下のいずれか高い方の金額です。
- 増資した資本金 × 0.7%
- 3万円
資本金の金額を決める際のポイント
資本金の金額を決める際のポイントは、以下のとおりです。
- 初期費用と3ヶ月~6ヶ月分の運転資金を基準に決める
- 節税のために1,000万円未満にする
- 融資を受けるなら100万円以上にする
- 実店舗を持つ銀行で口座開設するなら100万円以上にする
上記のポイントを参考にしながら、事業規模や資金計画に合わせて無理のない資本金額を設定しましょう。
初期費用と3ヶ月~6ヶ月分の運転資金を基準に決める
資本金の金額は、初期費用と3ヶ月~6ヶ月分の運転資金を基準に決めましょう。起業当初は売上が安定するまでに時間がかかる場合が多く、当面は資本金が運転資金になるためです。
初期費用や運転資金は、具体的に以下のような費用です。
| 区分 | 費用項目 |
| 初期費用 |
|
| 運転資金 |
|
少なくとも3ヶ月~6ヶ月間は事業を継続できるだけの運転資金と初期投資を資本金に設定しましょう。
節税のために1,000万円未満にする
会社設立時の資本金を1,000万円未満にすると節税効果があります。資本金の額が1,000万円未満であれば、原則として設立から2年間は、消費税の納税義務が免除されるためです。
資本金の額が1,000万円以上の場合は「新設法人」に該当し、設立初年度から消費税を納める義務が生じます。新設法人とは、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人を指します。例えば、一年決算法人の場合、設立1期目及び2期目が対象です。
また、資本金等の額が1,000万円以下、かつ、従業員が50人以下の場合の法人住民税は年額7万円です。一方、資本金等の額が1,000万円超だと法人住民税は18万円~になるため、少なくとも11万円の節税効果があります。資本金等の額には、資本金のみならず資本剰余金も含まれます。
そのため、特段の理由がない限り、会社設立時の資本金は1,000万円未満に設定するのがおすすめです。
参考:基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
参考:法人住民税|総務省
融資を受けるなら100万円以上にする
会社を設立する際に、公的機関や金融機関から融資を受けたい場合は、資本金を最低でも100万円以上に設定しましょう。資本金は企業の経営体力を示す指標の一つであり、金額の大きさによって返済能力が判断されるからです。
資本金が極端に少ないと「資金的な余裕がない」と判断されてしまい、希望する融資を受けられない可能性があります。また、資本金の額は信用調査の対象にも含まれるため、新しい取引先を増やしたいと考えている場合は注意が必要です。
例えば、全く同じ条件で取引を提案してきた2社があった場合、次のような比較が行われます。
- 資本金1万円の会社
- 資本金900万円の会社
上記の2社を比較した場合、多くの取引先は後者の方をより信頼できると判断するでしょう。
したがって、会社設立時に融資を希望する場合は、信頼性と安定感を示すためにも資本金を100万円以上に設定しましょう。
実店舗を持つ銀行で口座開設するなら100万円以上にする
会社を設立する際に、実店舗を持つメガバンクなどの銀行で法人口座を開設したい場合は、資本金を100万円以上に設定しましょう。資本金の額は、会社や事業の信用度に直接影響するためです。
特にメガバンクでは、一定の資本金がないと口座開設に時間がかかったり、断られたりする場合があります。ただし、資本金の額のみで口座開設の可否が決まるわけではなく、事業内容や代表者の経歴など、他の要素も判断基準となります。
そのため、実店舗を持つ銀行で口座を開きたい場合は、資本金を100万円以上に設定しましょう。
資本金を決める際の注意点
資本金を決める際の注意点は以下のとおりです。
- 出資比率によっては会社の経営に影響を与える
- 消費税の免税措置の対象外になる
- 法人住民税の均等割の税負担が増える
- 接待交際費が法人税法上の経費として認められなくなる
資本金の額は会社の信用力や税制上の取り扱いに大きく関係するため、慎重に設定する必要があります。
出資比率によっては会社の経営に影響を与える
資本金を出資でまかなう場合、出資比率によっては会社の経営に影響が及びます。第三者から出資を受ける際は、出資金額に応じて株式を割り当て、一度割り当てを行うと元には戻せません。
株主総会における重要な議案や意思決定では、株主の議決権が大きな影響力を持ちます。そのため、株式を割り当てる際は、議決権の分散によって株主間のバランスが適切に保たれるよう慎重に検討する必要があります。
出資金額が多いほど株式の割り当ても増え、持ち株比率が高まると株主が行使できる権利の範囲も広がる仕組みです。
持ち株比率ごとの株主の権利は以下の通りです。
| 持ち株比率 | 株主の権利 |
| 1株以上 |
|
| 1%以上 | 株主総会の議案を取締役に提案できる |
| 3%以上 |
|
| 1/3以上 | 単独で特別決議を否決できる |
| 過半数 |
|
| 2/3超 | 単独で特別決議を可決できる |
| 90%以上 | 他の株主の株式を強制的に買い上げ(スクイーズアウト)できる |
経営への影響力を維持するために、代表者が3分の2超の議決権を確保しておきましょう。特に創業期は、迅速な意思決定と柔軟な試行錯誤が求められるためです。
出資を受けて資本金を増やす際は、議決権の確保と経営権の維持を意識しながら出資比率を検討しましょう。少なくとも、議決権の過半数を確保するのが理想です。議決権の比率が半数を下回ると、代表取締役など役員の解任リスクを抱えた経営を強いられる可能性があります。
消費税の免税措置の対象外になる
資本金の額によっては、会社を設立した直後に受けられる消費税の免税措置が適用されない場合があります。資本金の額が1,000万円未満の会社を対象に、原則として設立から2年間は、消費税の納税義務が免除されます。
しかし、資本金1,000万円以上あると「新設法人の納税義務の免除の特例」が適用され、設立初年度から消費税を納めなければなりません。
例えば、設立1期目が売上高900万円、経費500万円だった場合の消費税の納税額は以下のとおりです。
- 売上高にかかる消費税額90万円
- 経費にかかる消費税額50万円
- 90万円ー50万円=40万円
「新設法人の納税義務の免除の特例」の対象外であれば、消費税40万円を納付する必要はありません。ただし、会社の資本金を1,000万円以上に設定すると、消費税40万円を納付する必要があります。
また、「新設法人の納税義務の免除の特例」において、資本金には資本準備金は含まれません。会社法第445条では、資本金のうち、2分の1を超えない金額は資本準備金として計上できると定められています。もし、資本金が1,000万円を超えそうな場合でも資本準備金を活用すれば、資本金を1,000万円未満に抑えられます。
法人住民税の均等割の税負担が増える
資本金の額によっては、法人住民税の均等割に影響を与える場合があります。法人が支払う税金の中で、会社の利益に関係なく一定額を納める必要があるのは法人住民税の均等割です。
例えば、従業員数が50人以下の中小企業では、住民税の均等割の税額が以下のように変わります。
- 資本金等の額1,000万円以下の場合は7万円
- 資本金等の額1,000万円超の場合は18万円
資本金等の額には資本剰余金も含まれるため、資本金700万円・資本準備金500万円でも住民税の均等割の税額は18万円です。
| 資本金等の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 従業者数50人超 |
市町村民税均等割 従業者数50人以下 |
| 1,000万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
| 1,000万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
| 1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
| 10億円超50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
| 50億円超 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
資本金の規模は、法人住民税に直接的な影響を及ぼすため、会社設立時には慎重な検討が求められます。
参考:法人住民税|総務省
接待交際費が法人税法上の経費として認められなくなる
資本金の額によっては、接待交際費が法人税法上の経費として認められなくなる場合があります。特に、資本金が1億円を超えるかどうかは制度の適用を分ける重要な基準です。
期末時点で資本金が1億円以下の中小法人であれば、年間800万円までの交際費を経費として認められます。一方、資本金が1億円を超える企業は、条件を満たしても接待飲食費の50%までしか経費として認められません。
| 資本金額 | 損金算入限度額 |
| 1億円以下 | 年間800万円 |
| 1億円超 | 飲食費の50%まで |
したがって、資本金の額は税務上の扱いに直結するため、設立時や増資時には十分な検討が必要です。
資本金の借り入れに関するよくある質問
資本金の借り入れに関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 資本金の借り入れがバレる理由は?
- 資本金が見せ金と判断されたら融資が通らなくなる?
- 独立資金はいくらまで借り入れできる?
- 資本金と借入金の適正比率はどれくらい?
会社設立の前に疑問を解消しておき、資本金の調達や会社の信用力向上に役立てましょう。
資本金の借り入れがバレる理由は?
資本金を借り入れて用意した場合、融資審査の際に以下の理由で必ずバレてしまいます。
- 口座の入出金履歴に不自然な動きがある
- 口座に突然多額の振り込みが確認される
- 振込名義が個人名になっている
会社設立後に融資を申し込むと、審査では、金融機関から会社の預金通帳の提出を求められます。会社設立前後の入出金を確認し、不自然な入金があれば、見せ金と判断されます。
例えば、個人から大きな金額が振り込まれ、すぐに同額が出金されるような不自然な動きがあった場合です。巨額の振り込みがあった場合、金融機関から入金を行った個人との関係を詳しく尋ねられる可能性が高いです。多額の入金に明確な理由を示せなければ、見せ金と判断され、融資審査に不利になる恐れがあります。
資本金が見せ金と判断されたら融資が通らなくなる?
資本金が見せ金と判断された場合、見せ金を使った事実が金融機関に記録されるため、しばらくの間は融資が受けられません。融資が受けられないうえに、次のようなリスクもあります。
- 見せ金が課税対象となる
- 会社設立が無効になる
- 刑事罰の対象となる
見せ金は法律に違反する行為であり、発覚した際には金融機関や取引先からの信頼を失います。また、見せ金と認められた場合は、刑法に基づき5年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されます。
独立資金はいくらまで借り入れできる?
独立時に受けられる融資の金額は、事業計画の内容や金融機関によって大きく異なります。
例えば、日本政策金融公庫の主な融資制度は、次のとおりです。
| 融資制度 | 融資限度額 | 運転資金の上限 | 特定設備資金の上限 |
| 新規開業 スタートアップ支援資金 |
7,200万円 | 4,800万円 | ― |
| 一般貸付 | 4,800万円 | ― | 7,200万円 |
上記のように、制度によって融資限度額や用途が異なります。ただし、融資限度額の範囲内であっても、希望する融資額を借りられるかどうかは審査の結果によって決まります。
資本金と借入金の適正比率はどれくらい?
資本金と借入金の適正な比率は、業種によって異なり、資本金と借入金の比率を判断する際に用いられる指標が自己資本比率です。自己資本比率とは、総資本に対して新株予約権を除く純資産が占める割合を示す指標で、計算式は次のとおりです。
計算式:自己資本比率 = (純資産-新株予約権) ÷ 総資本 × 100%
以下は、経済産業省の調査結果に基づき、2023年度の自己資本比率を業種ごとに示した表です。
| 業種 | 自己資本比率(%) |
| 鉱業、採石業、砂利採取業 | 67.3% |
| 情報通信業 | 51.5% |
| 製造業 | 51.4% |
| サービス業(その他サービス業) | 46.1% |
| 小売業 | 45.9% |
| 飲食サービス業 | 42.9% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 42.5% |
| 卸売業 | 42.1% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 37.8% |
| 電気・ガス業 | 23.5% |
| 物品賃貸業 | 15.1% |
参考:「2024年企業活動基本調査速報(2023年度実績)」(経済産業省)
経済産業省の調査によると、2023年度の全業種平均の自己資本比率は42%です。
自己資本比率が高い業種は、安定した収益基盤を持ち、自己資本を積み上げやすい特徴があります。一方、自己資本比率が低い業種では、設備投資や資産購入のために金融機関からの借り入れが多い点が影響しています。
まとめ
借入金や融資など返済義務のある他人からの資金は、会社設立時の資本金として利用できません。そのため、自己資金で準備するか、出資などの方法で用意する必要があります。
出資によって資金調達した場合は、持ち株比率によって会社の意思決定権が左右されます。創業期は、迅速な意思決定を行うため、代表者が特別決議を単独で可決できる3分の2超の株式を保有しておくのが賢明です。
資本金の金額が多いと会社の信用力が高まるため、融資を受けやすくなり、資金繰りの改善も期待できます。ただし、資本金の金額によって税負担が変わるため、事前に税率が上がる基準を確認しておきましょう。
資本金の金額を決める際のポイントや注意点を正しく理解し、健全な資金計画のもとで経営を進めましょう。



