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売掛金がマイナスになってしまう原因と修正手順、未然に防ぐ方法を解説

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帳簿を作成していると、売掛金の額がマイナスになってしまっていることに気づくことがあります。資産であるはずの売掛金が、マイナスになるとはどういうことなのでしょうか。

この記事では、売掛金のマイナスは仕訳のミスによって起こることを解説し、具体的にどのようなミスが原因となるのか、および修正手順や未然に防ぐ方法などを解説します。

売掛金がマイナスになるとはどういうこと?

売掛金は、取引先から後日支払いを受ける権利なので、資産の一種であり原則プラスになるはずです。よって、売掛金がマイナスになるということは、仕訳のどこかにミスがあることを意味します

まずこの章では、売掛金のマイナスは仕訳のミスによって起こることを理解するために、売掛金は正しく仕訳すればマイナスにならないこと、および売掛金の未払いなどはマイナスの原因にならないことを解説します。

売掛金は正しく仕訳すればマイナスになることはない

売掛金は、正しく仕訳ができていればマイナスになることはありません。

例として、取引先に商品を納品して請求書を発行し、1ヶ月後に代金10万円を受け取る場合を考えてみましょう。まず、請求書の発行により売掛金が発生し、以下のような仕訳が行われます。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売掛金 10万円 売上 10万円

将来お金を受け取る権利である売掛金は、借方(資産)に計上されます。「売掛金がプラスである」というのは、「売掛金が資産に計上されている」ということです。この例では、売掛金はプラス10万円になります。

そして、1ヶ月後に代金が入金されると、以下のような仕訳が行われます。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 10万円 売掛金 10万円

代金が借方(資産)に計上され、貸方(負債)に売掛金が計上されます。結果として、先ほどの仕訳で計上された借方の売掛金と、この仕訳で計上された貸方の売掛金が相殺されて、売掛金はゼロとなり取引は完了します。

このように、売掛金による取引は、「納品時にプラスの売掛金が発生する」→「代金が支払われて売掛金がゼロになる」というプロセスなので、売掛金がマイナスになることはありません。つまり、売掛金がマイナスになったというのは、仕訳のどこかにミスがあることを意味します。

基本的には、何らかのミスで入金額を売掛金より多く計上してしまっている時に、売掛金がマイナスになる可能性があります

「売掛金の未払い」などはマイナスの原因にはならない

売掛金の未払いなどが、売掛金がマイナスになる原因だと誤解されることがあります。

しかし、前節で解説したように、売掛金のマイナスは仕訳のミスで起こるものであり、未払いなどの取引状況が原因でマイナスになることはありません

売掛金の未払いの他にも、「納品物の返品」「入金が年度をまたぐ」「入金時に源泉徴収される」といったことも、売掛金がマイナスになる原因と誤解されることがあります。

以下の節では、これらの取引状況が売掛金のマイナスの原因にならないことを解説します。

売掛金の未払い

売掛金の未払いは、納品時にプラスの売掛金を計上した後、その売掛金が支払いによってゼロにならずプラスのまま残るということです。よって、売掛金の未払いによってマイナスの売掛金が発生することはありません。

納品物の返品

納品物の返品も、売掛金がマイナスになる原因にはなりません。

例として、取引先に商品を納品し、1ヶ月後に代金10万円を受け取る予定だったが、4万円分が返品され、6万円だけ入金された場合を考えてみましょう。

まず、納品した時点でプラス10万円の売掛金が発生します。仕訳は以下のとおりです。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売掛金 10万円 売上 10万円

そして4万円分が返品されると、以下の仕訳で4万円分の売掛金が相殺され、プラス6万円の売掛金が残ります。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売上 4万円 売掛金 4万円

そして1ヶ月後に6万円が入金され、以下の仕訳を行い売掛金はゼロになります。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 6万円 売掛金 6万円

各プロセスにおいて、売掛金は常にプラスかゼロです。よって、納品物の返品は売掛金のマイナスの原因にはなりません。

入金が年度をまたぐ

入金が年度をまたぐとは、納品時にプラスの売掛金が計上され、その状態でその年度の決算が行われるということです。プラスの売掛金は翌年度に持ち越され、支払いが終わるとゼロになります。

よって、このプロセスで売掛金がマイナスになることはありません。

入金時に源泉徴収される

入金時に源泉徴収されることも、売掛金がマイナスになる原因にはなりません。

例として、代金10万円の商品を納品し、10,210円が源泉徴収され89,790円が入金された場合を考えましょう。

まず、納品時点で以下の仕訳が行われ、プラス10万円の売掛金が発生します。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売掛金 10万円 売上 10万円

そして、10,210円が源泉徴収され89,790円が入金されると、以下の仕訳が行われます。源泉徴収は「事業主貸」という勘定科目で借方に計上され、売掛金は貸方に10万円計上され相殺されてゼロになります。

借方(資産) 貸方(負債)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 89,790円 売掛金 10万円
事業主貸 10,210円

このように、源泉徴収はあってもなくても売掛金の仕訳のプロセスは同じなので、源泉徴収が原因で売掛金がマイナスになることはありません。

売掛金がマイナスになる主な原因

売掛金のマイナスは、仕訳のどこかにミスがあり、売掛金の額より入金額のほうが大きくなっている時に起こります

ミスが起こる主な原因としては、以下のようなものがあります。

  • 金額の入力ミス
  • 仕訳のミス
  • 支払いの過入金
  • 複数の支払いが同時入金されたのを分けずに計上している
  • 売掛金の期首残高がマイナスになっている
  • 税抜経理と税込経理が混在している

ここでは、これらのミスがどのように起こるかについて解説します。

金額の入力ミス

仕訳時の金額の入力ミスで、売掛金を少なく計上してしまう、または入金額を多く計上してしまった時に、売掛金がマイナスになる可能性があります。

例えば、「100万円」を「10万円」と入力してしまったり、「21万円」を「12万円」と入力してしまうといった、単純なミスが原因となります。消費税の端数処理を間違えるのもあり得るケースです。

手入力で金額を打ち込む場合、ヒューマンエラーを完全に排除するのは困難です。また、仕訳を複数人で行っている場合、お互いの齟齬で入力ミスが起こる可能性があります。

仕訳のミス

仕訳の単純なミスによって、売掛金のマイナスが発生するケースがあります。例えば以下のようなミスは、借方(資産)より貸方(負債)の売掛金が多くなり、マイナスの原因となります。

  • 売掛金発生時の仕訳を忘れたまま、入金時の仕訳だけを行ってしまう。
  • 売掛金を誤って別な勘定科目で計上してしまい、そのまま入金の仕訳を行ってしまう。
  • 売掛金発生時に、借方に計上すべき売掛金を誤って貸方に計上してしまう

支払いの過入金

取引先が誤って売掛金より多い額を入金してしまい、それに気づかず仕訳してしまうと売掛金がマイナスになります。

もし過入金があった場合は、取引先に対して返金や次回取引での相殺を持ちかける必要があります。

複数の支払いが同時入金されたのを分けずに計上している

売掛金と、売掛金以外の何らかの支払いが同時に入金され、その全額を売掛金の入金として計上してしまうと、売掛金がマイナスになります。売掛金の支払いを仕訳する際は、入金額と請求額が合っているか確認することが大切です。

売掛金の期首残高がマイナスになっている

今期分の仕訳にミスはないが、期首残高がマイナスになっているケースも考えられます。期首残高のマイナスは、前期の仕訳にミスがあるということです。前期のミスを修正したうえで、修正申告を行う必要があります。

また、期首残高の入力忘れも、売掛金がマイナスになる原因になります。

税抜経理と税込経理が混在している

仕訳における消費税の取扱いには、税抜経理と税込経理があります。税抜経理とは、売掛金を税抜価格で仕訳し、消費税は別に仕分けする方法です。そして税込経理とは、売掛金を税込価格で仕訳し、消費税のための独立した仕訳はしない方法です。

税抜経理か税込経理かは統一する必要がありますが、何らかのミスで混在してしまった時に、売掛金がマイナスになる可能性があります。例えば、売掛金の発生を税抜価格で仕訳し、入金を税込価格で仕訳してしまうと、入金額のほうが高くなり売掛金がマイナスになります。

売掛金がマイナスになった時の修正手順

売掛金のマイナスは仕訳のミスにより発生するので、どこにミスがあるか特定して修正するのが基本的な手順になります。具体的な手順の例としては、以下のようなものが考えられます。

  1. いつから売掛金がマイナスになっているか確認する
  2. 預金通帳の残高と帳簿の額が一致しているか確認する
  3. 各取引を請求書や入出金詳細と照らし合わせて確認する
  4. 記載漏れ、記載間違いを修正する

ここでは、これらの各手順について解説します。

1.いつから売掛金がマイナスになっているか確認する

どこに仕訳のミスがあるか特定するために、まずいつから売掛金がマイナスになっているかを確認します期首残高と期中の月ごとの売掛金残高を見て、どの月からマイナスになっているかを特定します

もし、期首残高がマイナスになっていた場合は、前年度の仕訳をさかのぼって確認します。

2.預金通帳の残高と帳簿の額が一致しているか確認する

売掛金がマイナスになっている月を特定したら、次は預金通帳残高と帳簿の額が一致しているか確認しましょう通帳残高と帳簿の額が合っているかを見ることで、仕訳のどこにミスがあるのかを特定しやすくなります

もし一致していた場合は、入金時の仕訳には問題がなく、売掛金発生時の仕訳を忘れている、または間違っている可能性があります。そして一致していなかった場合は、入金時の仕訳で金額入力をミスしている可能性があります。

3.各取引を請求書や入出金詳細と照らし合わせて確認する

どこにミスがあるか見当がついたら、各取引を請求書や入出金詳細と照らし合わせて確認します。売掛金が関係する取引について以下の3つを確認していくと、仕訳が間違っている箇所が特定できるはずです。

  1. 売掛金に計上した額と請求書の請求額が合っているか
  2. 入金時に計上した額と通帳の振込額が合っているか
  3. 売掛金の額と入金額が合っているか

4.記載漏れ、記載間違いを修正する

仕訳をミスしている箇所を特定したら、記載漏れや記載間違いを修正します。仕訳の修正方法には、間違えた仕訳を直接書き直す方法と、間違えた仕訳はそのまま残して修正仕訳を入れる方法の2つがあります

さらに、修正仕訳の方法には、「差額補充方式」と「洗い替え方式」の2つがあります。差額補充方式とは、間違えた差額分を修正仕訳として計上する方法です。そして洗い替え方式とは、間違えた仕訳を相殺する修正仕訳を計上した後、あらためて正しい仕訳を計上する方法です。

売掛金のマイナスを未然に防ぐには?

売掛金がマイナスになった時にきちんと修正することも大切ですが、そもそもマイナスにならないように未然に防ぐことも重要です。売掛金のマイナスは仕訳のミスで起こるので、日頃からきちんと帳簿を作成することが防止につながります。

以下のような点に日頃から注意して、売掛金がマイナスにならないように心がけましょう。

  • 仕訳の際に金額をきちんと確認する
  • 仕訳は後回しにせずすぐ行う
  • こまめに売掛金残高をチェックする
  • 売掛帳を作成する
  • 会計ソフトを導入する
  • チェック体制をシステム化する
  • 外部監査を行う

仕訳の際に金額をきちんと確認する

ここまでで解説してきたように、売掛金のマイナスは単純な入力ミスで起こることが少なくありません。仕訳の際に金額をきちんと確認してから入力するのは、当たり前のことではあるものの、売掛金のマイナスを防ぐためには重要です。

売掛金の仕訳では、以下の2つが基本的な確認事項となります。

  • 売掛金の計上時:請求書と、注文書・発注書の金額が合っているか
  • 入金時:入金額と売掛金の額が合っているか

仕訳は後回しにせずすぐ行う

忙しい時などに仕訳を後回しにしてしまうと、計上忘れで売掛金がマイナスになる原因になります。売掛金の発生や入金があったら、すぐに仕訳を行うことが大切です。

こまめに売掛金残高をチェックする

売掛金残高をこまめにチェックすることで、売掛金のマイナスを早く発見できます。

フリーランスや、経営者が経理も兼ねている小規模な会社では、確定申告時くらいしか売掛金残高をチェックしないこともあるかもしれません。しかしこれでは、マイナスが見つかった時に仕訳の間違いを特定するのが面倒になってしまいます。

一方、こまめに残高をチェックしておけば、マイナスを早く見つけて修正できます。できれば、毎月末にその月の売掛金残高をチェックしておくのが理想です。

売掛帳を作成する

売掛帳(得意先元帳)とは、売掛金の発生と入金を取引先ごとにまとめた帳簿です。売掛金は仕訳帳や総勘定元帳でも把握できますが、売掛帳があったほうが売掛金の管理がしやすくなります

会計ソフトを導入する

会計ソフトを導入していない場合は、導入すると売掛金の管理がしやすくなります。会計ソフトは売掛帳が自動で作成されるものが多く、効率的に売掛金の管理ができます。

チェック体制をシステム化する

仕訳のミスを減らすには、きちんとしたチェック体制を作ることが大切です。いつ・誰が・何をチェックするのかをルール化しておくと、チェック忘れを防ぐことができます。

外部監査を行う

外部監査とは、社外の公認会計士などに、決算書が正しく作成されているかチェックしてもらうことです。社外の者が第三者視点でチェックすることで、不正を防ぎ財務情報の正確性を担保できます。

上場企業や規模の大きい非上場企業は、法律で外部監査が義務づけられています。一方、小規模な事業者は義務はありませんが、任意で行うことができます

外部監査は、売掛金のマイナスを始めとするミスを防ぐ非常に良い方法です。しかし、監査人の選任に株主総会決議が必要で、監査人への報酬も発生するため、手間とコストがかかります。

売掛金管理のポイント

売掛金のマイナスが発生しないように仕訳を正しく行うことも大事ですが、売掛金を適切に管理しキャッシュフローの健全性を保つことも同様に重要です。売掛金を適切に管理するには、以下のポイントを押さえておくことが大切になります。

  • 「売上債権回転率」などの指標を参考にする
  • 与信管理を徹底する
  • 売掛保証を利用する
  • ファクタリングを利用する

ここではこれらのポイントについて解説します。

「売上債権回転率」などの指標を参考にする

売掛債権回転率とは、売上高を売上債権額で割ったもので、売掛金がどれくらい効率的に回収できているかを示す指標です。このような指標を参考にすると、自社のキャッシュフローを客観的に評価しやすくなります。

売上債権回転率は、一般的に数値が高いほうがよいとされます。自社の売上債権回転率が同業他社に比べて低い、または過去の自社に比べて低くなっている時は、何か問題が生じている可能性があります。

与信管理を徹底する

与信管理とは、取引先の信用度に応じて取引額を調整するなどして、未払いリスクの最小化を目指すことです。信用の低い取引先に対して、売掛金の上限を設けたり、支払いサイトを短くするなどの対応をします。

与信管理を行うためには、取引先の信用度を評価する与信調査が必要です。与信調査は信用調査会社に依頼することもできますが、帝国データバンクなどのデータベースを用いるなどして自社内で行うこともできます。

売掛保証を利用する

売掛保証とは、売掛金が未払いになった時に、保証会社が補償してくれるサービスです。未回収リスクを解消できるため、売掛金管理がしやすくなります。

ただし、売掛保証の利用には手数料がかかるので、コストとメリットを比較することが大切です。例えば、少数の取引先と金額の大きい取引をしている、信用度の低い小規模事業者を主な取引先としている場合は、売掛保証のメリットが大きくなります。

また、売掛保証の利用に際して信用会社が取引先の与信審査を行うため、与信審査を代行してもらえるのもメリットの一つです。

ファクタリングを利用する

ファクタリングとは、支払い期日前の売掛債権をファクタリング業者に売却し、業者から売却代金を受け取るサービスです。売掛金の未回収リスクを解消するとともに、回収サイトを短縮し売掛債権回転率を上げることができます。

ただし、ファクタリングの利用には手数料がかかるため、あまり利用しすぎるとコストが高くなるデメリットがあります。

まとめ

売掛金のマイナスは仕訳のミスで発生するもので、正しく仕訳していればマイナスになることはありません。売掛金のマイナスが発生したら、仕訳のどこにミスがあるのか特定して、できるだけ早く修正しましょう。

仕訳時には金額や勘定科目などをきちんと確認して、日頃からミスが起きないように心がけることも大切です。売掛帳の作成や会計ソフトの導入など、売掛金を正しく管理できる体制を整備しておきましょう。

 

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