ファクタリングは、売掛債権の支払い期日前に資金化できるので資金繰りに有効です。
しかし、ファクタリングは金融機関の融資や貸付とは異なり、違法ではないかと不安に思っている中小企業の経営者や個人事業主も多いでしょう。ファクタリングという名称を利用して、違法な取引をしている業者が存在するためです。
そんな不安を解決してファクタリングを有効活用するために、この記事では、ファクタリングの法的根拠や違法な取引の事例などを解説します。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、企業や個人事業主などが取引先に対して商品やサービスを提供することによって発生した売掛債権をファクタリング会社が買い取る金融業務のことです。買い取った債権の管理・回収も、ファクタリング会社自らが行います。
ファクタリングは、売買契約に基づく指名債権の譲渡で貸付ではないので、貸金業の登録は必要ありません。
ファクタリングは違法ではない
ファクタリングは、事業者が持っている売掛債権を支払期日前に手数料を差し引いて買い取るサービスです。法律上は債権の売買(債権譲渡)契約であり、違法ではありません。
経済産業省も、中小企業などの資金調達手法としてファクタリングを推奨しています。
ファクタリングの法的根拠
ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があり、それぞれ法的根拠があります。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、利用者(売掛債権の債権者)とファクタリング会社のみで契約を結ぶファクタリングです。利用者がファクタリング会社に売掛債権(売掛金)を譲渡し、その対価として金銭を得る仕組みで、法的根拠は民法第555条です。
民法第555条
(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
売買契約とは、売主が持つ「財産権」を買主に売却して、売主がその代金を受け取る契約のことで、2社間ファクタリングは売買契約に該当します。
2社間ファクタリングの取引の流れは、次のとおりです。
- 利用者(受注企業)が売掛先企業(発注企業)に商品・サービスを納品し、代金を請求する
- 利用者とファクタリング会社の間で、債権譲渡契約・集金業務委託契約を締結する
- ファクタリング会社が、債権譲渡登記をする
- ファクタリング会社が利用者に、売掛債権の代金から手数料を差し引いた金額を支払う
- 売掛先企業が利用者に、売掛金を支払う
- 利用者がファクタリング会社に、支払われた売掛金を渡す
この取引の流れは民法上合法で、売掛債権の価格については2社間で合意すれば自由に決めることができます。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングとは、利用者(債権者)とファクタリング会社と売掛先企業の3社間で契約するファクタリングです。売掛先企業の同意を得たうえで、利用者からファクタリング会社に債権譲渡が行われます。
3社間ファクタリングの法的根拠は、民法第466条です。
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
民法第466条では、第1項で「債権は譲り渡すことができる。」と定められています。しかし、2020年の民法改正前は第2項で「当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。」と定められていました。
そのため、債権譲渡禁止特約付きの売掛債権は、自由に売買するのが難しかったのです。債権譲渡禁止特約とは、債権譲渡における債権の譲渡人と債務者の間で交わされる契約で、債権譲渡が禁止または制限されます。
民法改正によって、民法第466条第2項が上記のように変更され、債権譲渡禁止特約付きの売掛債権であってもファクタリングによって現金化することが可能になったのです。
3社間ファクタリングの取引の流れは、次のとおりです。
- 売掛債権が発生する
- 利用者がファクタリング会社に買取を申し込む
- 売掛先企業にファクタリングを承諾してもらう
- ファクタリング会社に売掛債権を売却する
- ファクタリング会社から手数料を差し引いた金額が入金される
- 売掛先企業からファクタリング会社に売掛金が入金される
ファクタリングは弁護士法違反でもない
ファクタリングは確かに民法に規定された債権譲渡を根拠に実施していますが、「弁護士法違反なのではないか?と言われることがあります。
弁護士法では弁護士以外には業としておこなうことができない非弁行為が明記されており、ファクタリングは非弁行為に該当するのではないかと考えられているためです。
結論的にいえばファクタリングは弁護士法違反ではありません。
ファクタリングが弁護士法違反ではない根拠について検討していきます。
ファクタリングは弁護士法違反?
弁護士法には弁護士以外にはおこなうことができない非弁行為が規定されています。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索|弁護士法
ファクタリング業者は債務者に対して請求をおこなったり、未回収になった場合には法的な手段で回収を図ります。
これらは弁護士法第72条で規定されている「法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」に該当する可能性が高いので、ファクタリング会社は弁護士法に規定されている非弁行為をしているのではないか?違法なのではないか?と言われるのです。
ファクタリングは弁護士法違反ではない
ファクタリングは弁護士法違反ではないかと言われますが、弁護士法違反には該当しません。
弁護士法第72条には「ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」という一文があるためです。
債権回収には特定金銭債権(不良債権等)の回収を弁護士以外の回収業者がおこなうことができるとする債権管理回収業に関する特別措置法が定められています。
そのため、債権回収については非弁行為の例外だとされています。
ただし、ファクタリングで買い取る債権は期日前の正常な債権ですので、特定金銭債権ではありません。
このため、ファクタリングは債権管理回収業に関する特別措置法違反なのではないか?という指摘もあります。
衆議院におけるファクタリングの法的解釈についての答弁
ファクタリングが債権管理回収業に関する特別措置法違反なのではないか?という点については衆議院で次のような質問と答弁がなされています。
債権回収会社は、法務省の営業許可を受けて不良債権の処理等を行っている。債権の処理に関して、特定金銭債権に当たらない不良債権となる前の決済期日前の売掛債権をファクタリングで現金化した場合、債権管理回収業に関する特別措置法の適用対象とはならない。
しかしながら、ファクタリング業者が債権者への遡求権なしで買い取り、前払い金融、回収リスク負担、回収代行など売掛債権に関する管理一切を総合的に行っていることに鑑みると、実態として債権回収会社が行う債権管理回収と変わらない状態である場合には、これに対して債権管理回収業に関する特別措置法の趣旨に沿った規制を設けるべきではないか、政府の見解を問う。
引用:衆議院|ファクタリングの法規制に関する質問主意書
ファクタリングは特定金銭債権ではない正常な債権を買い取ることになるので、「債権管理回収業に関する特別措置法」と同じような規制を設けるべきではないのか?という質問です。
これに対して政府は以下のように回答しています。
御指摘の「債権管理回収業に関する特別措置法の趣旨に沿った規制」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
引用:衆議院|衆議院議員丸山穂高君提出ファクタリングの法規制に関する質問に対する答弁書
実質的に国は回答を避けている状況ですので、ファクタリングは「債権管理回収業」には該当しないものの違法行為ではないグレーゾーンと判断できるでしょう。
総務省の特定金銭債権の事例
さらに総務省は特定金銭債権の事例として次のように明記しています。
(1) 特定金銭債権の定義(取扱債権の範囲)
「特定金銭債権」とは次に掲げるものをいう。(2条1項関係)
<1> 金融機関等(金融機関の連合会、政府系機関、保険会社、貸金業者、政令で定めるものを含む。)の有する貸付債権
<2> 金融機関等の有していた貸付債権
<3> 金融機関等の貸付債権の担保権の目的となっている金銭債権
<4> リース契約に基づいて生じる金銭債権
(中略)
<15> いわゆるファクタリング業者が有する金銭債権(その業務として買い取ったものに限る。)
引用:総務省|債権管理回収業に関する特別措置法の概要
総務省が「ファクタリング業者が有する金銭債権(その業務として買い取ったものに限る。)」と明記していることは、総務省はファクタリング会社が業務として債権を買い取ることができると認めていることです。
これらの理由からファクタリ
違法なファクタリングの事例
中小企業の経営者や個人事業主にファクタリング契約を持ち掛けるが、実質的にはファクタリングではなく貸付であったという事例も少なくはありません。このようなケースの対応策として、金融庁も注意喚起しています。
ここでは、「ファクタリングを装った貸付(偽装ファクタリング)」「貸付と同様の機能を有しているファクタリング」の事例について、解説します。
ファクタリングを装った貸付
貸金業登録を受けていない業者が、ファクタリングを装った貸付(債権担保貸付)を行っている事例があります。いわゆる、偽装ファクタリングと呼ばれる取引です。
以下のようなケースは、偽装ファクタリングの疑いがあるので注意が必要です。
- 契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが定められていない場合
- ファクタリング会社から受け取る売掛債権の買取代金が、債権額に比べて著しく低額である場合
このようなケースでは、ファクタリングを装い、実際は売掛債権を担保にして、法定金利を超える法外な利息を徴収し貸付を行っている可能性があるのです。貸付と判断された場合は、貸金業法や利息制限法などの違反になります。
契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」の記載があるか、買取代金が低額すぎないか必ず確認するようにしましょう。
貸付と同様の機能を有しているファクタリング
ファクタリングであっても、貸付と同じような機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。貸金業にあたるかどうかは、契約書の文言や経済的側面、実態によって判断されます。
貸付と同様の機能を有していると思われるファクタリングには、次のようなものがあります。
- 償還請求権・買戻請求権がある
- 債権の一部のみ買い取る
- 分割返済が可能
- 担保・保証人を要求する
償還請求権・買戻請求権がある
償還請求権(リコース)とは、利用者が譲渡した売掛金を回収できなくなった場合、利用者がファクタリング会社に売掛金の代金を支払う義務のことです。買戻請求権とは、利用者が売却した売掛金を回収できなくなった場合、ファクタリング会社から売掛金を買い戻さなければならない義務のことをいいます。
償還請求権と買戻請求権の実質的な意味は同じで、売却した売掛債権(売掛金)が実際に支払われるまで、売掛先企業の貸倒れのリスク(デフォルトリスク)を利用者が負うということです。
一般的にファクタリングは、償還請求権のない「ノンリコース契約」で、買戻請求権もありません。ファクタリング会社は、デフォルトリスクを負う代わりに、貸付の法定金利より割高な手数料を設定することができるのです。
ファクタリングであっても償還請求権や買戻請求権が付いている契約の場合、金銭消費貸借契約になる可能性があります。ファクタリング会社が、デフォルトリスクを負わずに一般的なファクタリングと同等の手数料を設定しているとみなされ、妥当性がないと判断されることがあるためです。
償還請求権や買戻請求権が付いている契約は、しないほうが無難です。ノンリコース契約のファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
債権の一部のみ買い取る
ファクタリングは、利用者が保有する売掛債権をすべてファクタリング会社が買い取るサービスです。そもそも、売掛債権は、分割で買い取ることはできません。
ファクタリング会社が利用者に売掛債権の代金を何回かに分割して支払う契約は、ファクタリングではなく売掛債権を担保とした貸付とみなされます。この場合は、貸金業法が適用されるのです。
ファクタリング会社が貸金業登録を行っていない場合は、出資法・貸金業法違反になります。
このようなケースも偽装ファクタリングのひとつなので、契約しないようにしましょう。
分割返済が可能
3社間ファクタリングでは、売掛金の支払期日に売掛先企業がファクタリング会社に直接、売掛金を全額支払います。2社間ファクタリングでは、売掛先企業が利用者に支払った売掛金を一括でファクタリング会社に支払わなければなりません。
利用者が回収した売掛金を分割でファクタリング会社に支払うことは、できないのです。ファクタリングでは分割払いが認められておらず、分割返済が可能としている場合は、貸付になります。
分割返済が可能としている業者は、ヤミ金の可能性が高いので利用しないようにしましょう。
担保・保証人を要求する
ファクタリングは売掛債権の売買で貸付ではないので、担保・保証人は不要です。担保・保証人を要求するのは債権の保全のためで、ファクタリングではなく金銭消費貸借契約とみなされます。
そのため、担保・保証人を要求する業者が貸金業登録を行っていない場合は、貸金業法・利息制限法違反になるのです。
ファクタリングといって担保・保証人を要求するのは悪質な業者なので、利用してはいけません。
金融庁のファクタリングに対する見解
金融庁のファクタリングに対する見解は基本的には債権譲渡契約に該当するものであり「合法」というものです。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
引用:金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起
「法的には債権売買」と明記しているため、債権売買に該当するものであれば合法というのが基本的なスタンスです。
しかし、金融庁は「ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されています」「ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。」とも述べており、高金利の闇金は、実態としては貸付をおこなうものには違法であるとしています。
ファクタリング業者から受け取る金銭(債権の買取代金)が、債権額に比べて著しく低額である
といったケースは、偽装ファクタリングの疑いがありますので、ヤミ金融を利用しないよう、十分注意してください。
引用:金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起
手数料が高額であるがゆえに、手元に残る金額が少額になるファクタリングは闇金だとしています。
また、実質的な貸付に関しても次のように述べています。
ファクタリングとして行われ、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが定められた取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。
例えば、譲渡した債権の回収(集金)がファクタリング業者から売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に、
○ 売主が債権を買い戻すこととされている
○ 売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている
などといったようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。
引用:金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起
もしも売掛債権が回収不能になった場合に、ファクタリング利用者が代金の補填をしなければならないような契約は実質的な貸付で、貸金業者登録なしで実質的な貸付をおこなう業者は闇金です。
これらのことから、合法なファクタリングを利用するには最低限次の2つの条件を満たしている業者を選択してください。
- 手数料が相場の範囲内(20%以下)
- 償還請求権なし(ノンリコース)
これら、どちらか1つでも条件を満たしていない業者は違法の可能性が高いので、取引を避けた方がよいでしょう。
給料ファクタリングは違法
ファクタリングは違法ではありませんが、給料ファクタリングは違法です。
実際に逮捕された事例もあるので、給料ファクタリングを取り扱う業者は闇金であると判断し、給料ファクタリングは絶対に利用しないでください。
給料ファクタリングの概要や違法性の根拠について詳しく解説していきます。
給料ファクタリングとは
給料ファクタリングとは、給与所得者個人が勤務先からまだ受け取っていない給料日前の給料を「給料債権」とみなして業者へ売却する行為です。
これによって給料日前でも給料相当額を受け取ることができます。
ファクタリングのように債権を売却して入金期日前に入金を前倒しにできることから給料ファクタリングと呼ばれます。
給料ファクタリングでも、主な審査の対象となるのは債務者である勤務先企業です。
そのため給料ファクタリングは利用者の信用情報がブラックでも審査に通過できる点が特徴です。
しかし給料ファクタリングは違法行為で、取り扱っている業者は闇金であると認識し、絶対に取引をしないようにしてください。
給料は本人以外に払えない
給料は本人以外には支払うことができないと労働基準法で定められています。
(賃金の支払)
第二十四条賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
引用:e-Gov法令検索|労働基準法
給料には「直接払いの原則」というものがあるので、たとえファクタリングと称する業者へ売却したとしても、勤務先は業者へ支払うことはありません。
つまり、給料債権なるものは最初から売買できない債権なのです。
給料ファクタリングは実質的な貸付
給料ファクタリングは、最初から売買できない給料債権を売買したことにして、給料日後に利用者から給料相当額の支払いを求める行為です。
取引の前提となっている給料債権の売買は「直接払いの原則」によってそもそも売買できないことがわかっているのですから、給料ファクタリングは利用者本人からの返済を充てにした実質的な貸付であると判断されます。
「給与ファクタリング」などと称して、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。
引用:金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起
給料ファクタリングは、ファクタリングの体はとっているものの、実際には貸付行為であると認識しておきましょう。
貸金業者登録なしで貸付業務をおこなう業者は闇金
給料ファクタリングが実質的な貸付であるのであれば、給料ファクタリングを取り扱う業者には貸金業者登録が必要です。
しかし給料ファクタリング業者は貸金業者登録をおこなっていないので貸金業法違反です。
また、業として貸付をおこなうのであれば利息制限法を遵守する必要もあります。
給料ファクタリングの手数料は20%〜40%程度で、年利に換算すると240%〜480%もの超高金利です。
利息制限法の上限金利(15%または18%または20%)も出資法の上限金利(109.5%)も超えていることから、給料ファクタリングは利息制限法と出資法違反です。
給料ファクタリングは違法貸付をおこなう闇金であると理解しておきましょう。
給料ファクタリングで逮捕された事例
給料ファクタリングでは、実際に逮捕された事例もいくつかあります。
給料を受け取る権利を客から買い取り、現金を貸し付ける「給料ファクタリング」を無登録で営んだうえ、法外な利息を得たとして、警視庁は、給料ファクタリング大手「ZERUTA(ゼルタ)」の社長、足立慎吾容疑者(34)ら男女7人を貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の容疑で逮捕した。
参考:朝日新聞|給料ファクタリング、全国2例目の摘発 容疑の7人逮捕
「給料を支給日前に受け取れる」などとうたい無登録で金を貸し付けたとして、大阪府警生活経済課は29日、コンサルタント会社「SONマネジメント」の社員、岩田俊一容疑者(29)ら男女4人を貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕した。
参考:朝日新聞|給料ファクタリング、全国2例目の摘発 容疑の7人逮捕
給料ファクタリングについては、実際に業者が貸金業法違反と出資法違反で逮捕された事例がいくつかあります。
事業活動で生じた請求書を買い取るファクタリングが一定の条件を満たせば合法ですが、給料ファクタリングは違法であることを認識し、絶対に利用しないようにしてください。
領収書ファクタリングも闇金
給料ファクタリングと同じスキームで領収書ファクタリングという方法があります。
領収書ファクタリングとは、給与所得者個人が前払いで支払い精算前の経費をファクタリング会社が買い取って、経費精算前に資金化する方法です。
基本的にはこの方法も会社から経費が精算された従業員が個人的にファクタリング会社へ支払うことを前提としたスキームになっています。
つまり、領収書ファクタリングも実質的には貸付です。
そして領収書ファクタリングを取り扱う業者も貸金業者登録をおこなっていないので、無登録で貸金業行為をおこなう闇金であると認識しておきましょう。
ファクタリングが貸付と判断された裁判例
ファクタリング会社が訴えられるケースのほとんどは、利用者が「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約なので利息制限法が適用される」と主張するものです。
大阪地方裁判所平成29年3月3日判決では、次の事情等を考慮して、金銭の授受が金銭消費貸借契約に準じるものと判断されました。
- ファクタリング会社が債権回収のリスクをほとんど負っていない
- ファクタリング会社は、売掛債権の一部のみを買い取るなど、対象債権の額面と無関係に資金の供与を行っていた
- ファクタリング利用者は、債権譲渡通知が発送されるのを避けるため対象債権の買戻しを行わざるを得ない立場にあり、資金の返還合意があったものとみることができる
- 売掛債権が回収不能となった場合には買取代金を減額されるなど、債権の回収リスクが利用者の信用リスクと同じになっている
このように、ファクタリングが実質的に金銭消費貸借契約であると判断されると、無登録貸金業として違法になり、過払い金返還請求も可能になります。
裁判所は、当該ファクタリング契約がどれだけ貸付と同様の機能を有しているかという点で、判断しているものと思われます。
違法性なし!安全に利用できるファクタリング会社5選
ファクタリングそのものには違法性はありません。
しかしファクタリング業者の中には、違法行為をおこなう業者が存在するのも事実です。
そのため利用する際には安全に利用できる業者を選択することが最も重要です。
違法行為の報告がなく、運営業者の安全性も高いファクタリング会社は次の5社です。
- ベストファクター
- ラボル
- GMO BtoB 早払い
- OLTA
- アクセルファクター
それぞれのファクタリング会社の特徴やスペックを詳しく解説していきます。
ベストファクター
取り扱いファクタリング | 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング |
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買取可能額 | 下限上限なし |
手数料 | 2%〜 |
契約方法 | 対面 |
ベストファクターは利用者と対面し、利用者の財務状況を詳細に審査したうえで、利用者にとって最適な資金調達方法を提案する業者です。
ファクタリングありきで手続きをすすめるようなことをせず、融資によって資金調達した方がよい企業に対しては融資による資金調達をすすめます。
また、審査の際には財務コンサルティングを実施し、利用者の資金繰りが長期的に円滑化できるような提案をおこなってくれます。
このことから違法性の心配がない安全な業者であると判断できるでしょう。
契約時には面談が必要になるので、原則としてファクタリング会社への訪問が必要です。
しかし距離的時間的な理由からファクタリング会社への訪問が難しい方に対しては、ベストファクターの担当者が出張してくれるので、気軽に相談してみましょう。
ラボル
取り扱いファクタリング | 2社間ファクタリング |
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買取可能額 | 1万円〜上限なし |
手数料 | 10% |
契約方法 | オンライン |
ラボルはオンライン完結型のファクタリング会社です。
運営企業の株式会社ラボルは東証プライム上場企業である株式会社セレスの100%子会社です。
上場企業が運営してるサービスですので、違法性の心配なく安心して利用できます。
最大の特徴は24時間365日最短60分入金に対応している点です。
数あるファクタリング会社の中でも完全オンラインで24時間365日入金に対応しているのはラボルだけですので、緊急で資金が必要になった際の資金調達手段として活用できるでしょう。
手数料は10%固定ですので、あらかじめ資金調達コストがわかっている点は非常に安心です。
運営業者がしっかりとした対応力に優れた優良ファクタリング会社だといえます。
GMO BtoB 早払い
取り扱いファクタリング | 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング 注文書ファクタリング |
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買取可能額 | 100万円〜1億円 |
手数料 | ・請求書ファクタリング スポットタイプ:1.5%〜10.0% 継続タイプ:1.0%〜10.0% ・注文書ファクタリング スポットタイプ:2.5%〜12.0% 継続タイプ:2.0%〜12.0% |
契約方法 | 対面・オンライン |
GMO BtoB 早払いは、GMOグループで東証プライム上場企業のGMOペイメントゲートウェイ株式会社が運営するサービスです。
運営会社の大きさという点でいえば、数あるファクタリング会社の中でも業界No1です。
申し込みをおこなうと専任の担当者がつくので、いつでも同じ人に相談できる安心感があります。
請求書ファクタリングであれば上限10%の低い手数料で利用できますし、継続利用を前提といて「継続タイプ」であればさらに手数料は安くなります。
業者の安全性と手数料の低さを重視したい方におすすめです。
ただし、GMO BtoB 早払いは申込から入金までに最短2営業日で初回は5営業日必要になり、資金調達までに時間がかかる点に注意してください。
OLTA
取り扱いファクタリング | 2社間ファクタリング |
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買取可能額 | 下限上限なし |
手数料 | 2%〜9% |
契約方法 | オンライン |
OLTAはオンライン完結型のファクタリングの中ではパイオニア的な存在で、日本で最初にオンライン完結型のファクタリングを広めた会社です。
OLTAが登場してから、他のファクタリング会社もオンライン完結に対応し、手数料も20%程度から10%程度へ下がったと言っても過言ではありません。
注目のスタートアップとしてフォーカスされベンチャーキャピタルや大手企業などから出資を受けています。
今や資本金130億円を超える大企業です。
日本各地の銀行や信用金庫などの金融機関と提携し、銀行などの顧客に対してファクタリングを販売しています。
信用を売りにしている金融機関が提携するほどの企業ですので、業者としての信頼性が非常に高いことがわかります。
手数料の上限は9%と業界最低水準ですし、請求書のアップロードから24時間以内に審査結果が届き即日入金も可能です。
業者の安全性と手数料の低さや手続きの利便性などが揃った優良ファクタリング会社です。
アクセルファクター
取り扱いファクタリング | 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング |
---|---|
買取可能額 | 下限上限なし |
手数料 | 2社間ファクタリング:3%〜10% 3社間ファクタリング:1%〜8% |
契約方法 | 対面・オンライン |
アクセルファクターは認定経営革新等支援機関という点が信頼できるポイントです。
認定経営革新等支援機関とは、国が中小企業支援に関する専門知識と経験があると認めた業者だけが認定されてる制度です。
アクセルファクターは国から専門性や実績を認められた業者ということですので、違法性がないのはもちろん、専門家としても国からお墨付きを受けている安全な業者だといえます。
手数料の上限10%は店舗型のファクタリング会社としては非常に低い水準です。
さらにホームページには取り扱うファクタリングの半数が即日入金と明記されているので、入金スピードにも優れています。
国が認定した安全な業者から低コストで資金調達したい方にはアクセルファクターがおすすめです。
違法な業者を避けてファクタリングを有効活用しよう
ファクタリングは、法律上は債権の売買(債権譲渡)契約で、違法ではありません。しかし、ファクタリングを装った貸付(偽装ファクタリング)、貸付と同様の機能を持つファクタリングなどを行う違法な業者も存在します。
ファクタリングを利用する際には、法的根拠や違法の可能性がある事例などを考慮に入れ優良な業者を選ぶことが大切です。
優良なファクタリング会社を利用することによって、中小企業や個人事業主の資金調達の円滑化を図ることが可能になるでしょう。